日本からは9名の国会議員が参加! 議員同士が連携するIPACに注目すべき理由
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「IPAC(アイパック)」です。
国家とは別の議員同士の連携。今後も注目を!
IPACとは「Inter‐Parliamentary Alliance on China(対中政策に関する列国議会連盟)」のこと。中国の人権弾圧や、暴力による一方的な現状変更に対抗する政策を考える、国際的な超党派の議員連盟です。中国が香港に対して、自治や言論の自由を制限し始めたことを機に、2020年に設立されました。国家同士では内政干渉にあたり、身動きがとりづらい状況があります。その点IPACは、各国の有権者に選ばれた代議士たちが独立したかたちで発信することができます。
当初は欧米諸国や日本、ウガンダなど19か国の議員で構成されていましたが、年々広がり、現在は40の国と地域から250名の議員が参加。アルバニアやオーストラリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カナダ、コロンビア、インド、イラク、ソロモン諸島などの議員も加わりました。
近年の最大の目玉は、台湾の議員が加わったことです。7月末のIPACの年次総会は台北で開かれ、頼総統がスピーチを行い、民主主義国と連携し中国の脅威に対抗すると宣言しました。また、国連安保理で中国が常任理事国になっていますが、そもそも中国として欧米諸国と交渉し関係を持ったのは国民党の蒋介石、つまり台湾だったはず。それが中国共産党の側になってしまったことはプロセスが不透明でおかしいのではないかと声をあげていました。日本は尖閣諸島をはじめとする、中国の海洋進出による主権侵害に声をあげ続けることを確認しました。
今のところは、中国政府に対し直接対話をするのではなく、世界に発信して仲間を広げることを目指しています。これに対して中国は対抗措置を打ちだし、新たにIPACに参加しようとする国々に対して、圧力をかけています。
世界中で独裁的な権威主義が広がっています。政治面でも経済面でも、こうした議員たちが呼び掛け合い、連帯して働きかけを広げていくのは大変有効だと思います。日本からは9名の国会議員が参加、各国の政治家と意見交換をし、極東の民主国家としての存在感を世界にアピールしています。あまり報道されませんが、こうした動きに注目していただきたいなと思います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める新報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月〜金曜18:00〜19:00)がスタート!
※『anan』2024年10月9日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)