暮らしを健やかにする知識とヒント[ 賢く備える防災編 ]

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働く女性に役立ち、毎日をアップデートしてくれる情報を月替わりで紹介。今月のテーマは、9月の防災月間に合わせ、日々の備えなどにフォーカス。賢く備えるヒントを届けます。

冨川万美 (NPO法人ママプラグ アクティブ防災事業代表理事)

とみかわ・まみ/東日本大震災の支援を機に、防災事業を中心としたNPO法人ママプラグの設立に携わる。「東京くらし防災」編集・検討委員、防災の著作も多数。

INTERVIEWいまの時代、そして自分に合ったアップデートされた防災知識がある。

東日本大震災から10年以上。私たちのライフスタイルが変わったように、“本当に役立つ”備えのあり方にも変化が。いま、賢く備えるための考え方とは?

東日本大震災をきっかけに、子育て世代の母親目線で防災の普及活動をしている冨川万美さん。被災者への支援活動は、防災事業を主軸とするNPO法人「ママプラグ」設立のきっかけにもなったという。「震災当時、私も含めママプラグのメンバーのほとんどが目まぐるしい日々を送っていて。同じ境遇で被災した女性たちのために何かアクションを起こしたい、という衝動には駆られていたのですが、家をあけて被災地へ支援活動に行くことが難しい状況でした。いたたまれない気持ちのなか、震災から半年経ってようやくスタートできたのが、都内に避難しているお子さん連れの女性や、その家族を対象にした支援活動である『つながる.com』です」 活動をしていくなかで、被災者の体験談を聞く機会が増えた冨川さんは、そのリアルな声を一冊の本にまとめた。それが『被災ママ812人が作った 子連れ防災手帖』だ。「私たちが持っていた防災知識と、実際にあがった要望の声はあまりにもかけ離れていました。これは次に備えて伝えなければと思い、マスコミ業界出身のメンバーも多かったので、チーム総出でアンケート取材をして本を作りあげました」

日常の延長で備える大切さ。出版を機に冨川さんが伝え始めたのは、防災に対して前向きな姿勢で、そして日常の延長として考える「アクティブ防災」というものだった。

「“防災”にはどうしても重くネガティブなイメージがあり、また“自分には縁遠いこと”という、どこか他人事として捉えられている部分があるのではないかと感じました。そう考えると、備えを特別なことではなく、日常生活の延長線上として捉えることで“いつのまにか災害に強くなる”のが理想だなと思ったんです。例えば、“推し活をしていてペンライトをたくさん持っているから、停電になったらそのペンライトを非常灯代わりに役立てることができそうだ”とか。まずは“自分で考えてみて、その上で行動できること”が大切なんです。アクティブ防災では、そのきっかけとなるような企画や課題解決のテーマなどを提案しています」

“普段通り”を目指す備え。防災事業を始めてから10年ちょっと。世の中の防災に対する意識にはさまざまな変化があった、と冨川さんは語る。

「以前は防災セットや非常食など、防災専用のアイテムをとりあえず一式そろえなければ!という声が多かった印象ですが、最近では普段の生活で使っているものをいざというときにも応用しよう、という考えが多くなってきたと思います。例えば、企業が“以前から展開しているこの商品は、実は非常食としても使えるんですよ”といった紹介を積極的に行ったり、防災への高い意識を持った人が、“いつも使ってるこのアイテム、実は被災時にも使えるよ”とSNSで発信したり。暮らしに寄り添った備え方をしよう、という考え方が、身近に広まってきたように思います。これが、まさに私が伝えたかった防災のあり方だと感じています。災害自体は避けて通れないからこそ、命を守るだけでなく被災後もいつも通りの生活を少しでも送れるよう備えることが大切。そのヒントや気づきは、意外にも日常に転がっていて、自然と防災に取り組む環境になってきていることを日々実感しています」

CHECK INSIDE冨川さんの防災ポーチの中身を拝見。

左:生理用品普段から使い慣れていて、ポーチに入る薄いサイズを定期的に入れ替え。怪我の時の止血にも有効。中央:食べ物(チョコレート、あめ、タブレット)あめやタブレットミントのほか、一口サイズのチョコレートも。ちょっとした空腹を満たせる。右:携帯用バッテリー情報収集や連絡手段の一つとして、災害時にこそスマホは必須アイテム。コードも忘れずに。左上:ウェットティッシュ冨川さんは、耐光性、防湿性に優れたパッケージで長期間の保存・使用が可能な防災用をチョイス。左下:マスク感染症対策のほか、道路や建物の崩壊で粉塵が舞う中を歩くなど、非常時に役立つアイテム。右:飲み物ポーチに入らなくても、飲み物はカバンなどに常備しておきたい。350㎖の小さいサイズでOK。左:エマージェンシーシートブランケットのように体に巻きつけて使う、防寒・防水用シート。実際に使って性能を確認して。中央:使い捨てカイロ体を冷やさぬよう、ミニサイズでも貼るタイプ、貼らないタイプをそれぞれ入れておくと便利。右:携帯トイレ被災場所によっては、トイレがない場合も。スムーズに使えるよう、使用方法も確認しておこう。左:スキンケアアイテム乾燥対策として、試供品の化粧水や乳液、オールインワンなど手軽に保湿できるものを。中央:家族の写真、連絡先スマホが使えない時のため、連絡先を書いたメモや家族の顔がわかる写真を入れておくと安心。右:絆創膏怪我や靴擦れした時の応急手当として。濡れないよう密封袋などに入れて3〜4枚ほど常備を。左上:常備薬半日以上身動きが取れない…等を想定し、持病がなくても、鎮痛剤など飲み慣れた薬を用意しよう。中央:ポーチお守りのようにカバンの中に入れて常に持ち歩ければ、サイズや形状は気にせずOK。ポーチに付いたチャーム:デンタルフロス感染症対策の意味でも、口内衛生はとても大切。歯は磨けなくともフロスで最低限の手入れを。左:ライトポーチの中に入れると、いざという時に取り出しづらいので、キーホルダータイプがおすすめ。中央:ふえ自分の居場所やSOSを知らせる救助笛。冨川さんは、少量の息でも音が鳴りやすいものをチョイス。右:ヘアゴム髪をまとめるだけでなく、食べかけのおやつの袋をとめたり、細かい物をまとめたりするのにも便利。

SHOPグッドルッキングな防災グッズを手に入れるなら。

NY発、「未来の日用品店」を掲げるコンセプトショップ〈New Stand Tokyo〉。災害時にも役立つフェイズフリーなアイテムを発見!

「未来の日用品」をキュレーションに合わせてレイアウトできるよう、店内は可変式な空間デザインに。Dotswill「レディーバードゴー」2,268円。明日 わたしは柿の木にのぼる「フェミニンミスト」4,180円。

2020年7月、NYにある本店のスピリットを受け継ぎ、本国外の1号店として東京・六本木にオープンしたコンセプトショップが〈New Stand Tokyo〉だ。伝統工芸の技術を現代のデザインに落とし込んだ品や、プラスチックフリーの保存容器、サステイナブルを意識した洋服…など、“未来に日用品になってほしいものや考え方”を基準に選ばれたアイテムが並ぶ。「防災も、まさに日常のスタンダードになってほしい考え方」だと、〈New Stand Tokyo〉スタッフは話す。デザイン性の高い長期保存食や、最先端のフェムテック商品など、日常にも防災にも役立つスマートなアイテムが充実している。“日常の延長にある備え”のヒントになる、そして持っていてもうれしくなるあなたの味方を見つけてみよう。

New Stand Tokyo   六本木乃木坂駅から徒歩1分、ビル1階の路面にあり。

“毎日をアップデートする”をテーマにした、NY発のコンセプトショップ。2階のラウンジではイベントや展示も企画中。

住所:東京都港区六本木7-2-8 WHEREVER 1F 営業時間:12:00〜19:00 定休日:土日祝休

IDEAS

身近な備えのアイデア。

備えをしようと思ったら、普段の生活を見直すところから。今日から始める人も、まずはこの2つから実践しよう。

「今日なかったら困るもの」は、常にストックを。災害用に買い足す、というよりは日常生活の延長としてローリングストックを習慣にすることがポイント。非常食にこだわらず、自分の嗜好に合わせたものを置いておこう。日用品も忘れずに。

家具の高さを見直してみる。なるべく腰より低い家具やインテリアを意識して。シェルフやラックなど背の高い家具がある場合は、下に重心がくるように物を入れると倒れにくくなる。

KEYWORDS

気になる防災ワード。

防災の基本のあり方も、日々アップデートされる。最近スタンダードになりつつある、2つの考え方とは。

KEY WORD【フェーズフリー】「非常用に新しく備える」ではなく、「日常的に使っているものを非常時にも活用する」という考え方。備えに対するハードルも下がり、垣根をなくすことでQOL向上にも繋がる。

KEY WORD【オーダーメイド防災】全員同じものが必要なのではなく、自分に必要なものを備えようというスタイル。既存の防災セットなども、旅行時のように取捨選択をしながらパッキングして。

GOODS備えを始めるなら、こんなグッズから。

非常時はパニック状態に陥る。そんなときに使いこなせるのは、普段から使い慣れているアイテムだ。いつもの生活の中でも役立つもの、デザインが好きなものを、備えの第一歩に選ぼう。

お湯は不要! ワンプッシュ3分で最適温度に温まる、ホットドリンク。「Self-Heating Beverage 魔法のホット缶」6種6缶セット4,380円底蓋をはずしてプッシュすると、缶がセルフヒートして中のドリンクが温まる仕組み。熱源があるので開封20分後まで飲みごろ温度をキープできる。(エクストレイズ/03-5607-3860)注目の長期保存食ブランドに、人気中華の味が缶詰で登場。「シャンウェイ×IZAMESHI 中華惣菜缶詰」シリーズ左518円、右は各594円災害時のみならず、アウトドアや日常の食卓など“いざ”という時に活躍する長期保存食ブランド。〈家庭料理・鉄板中華 シャンウェイ〉とのコラボ商品。(杉田エース/0120-560-521)大切な人に贈りたい、おしゃれな防災アイテムの提案。「LIFEGIFT -いのちをまもる防災カタログギフト-」14,300円日常生活でも使える、実用的でハイセンスな防災グッズを集めたカタログギフト。離れて暮らす家族や、大切な人へのお祝いなどに贈れば、防災への備えのきっかけに。14,300円(LIFEGIFT/https://lifegift.jp/)植物性乳酸菌由来で地球にも優しい。手軽にできるオーラルケア。「クリーン&モイスチュア マウススプレー&ウォッシュ」シリーズ各1,100円100%天然由来成分で作られ、飲み込んでも安心な低刺激の口腔ケア健康液。口内に直接プッシュしてもよし、水で希釈してマウスウォッシュとしても使用可能。(オーラルピース/https://oralpeace.com/)普段づかいでも、災害時でも活躍。暮らしに寄り添う今治製のタオル。「防災タオル」各1,650円フェイスタオルより少し長めで、両端がメッシュ生地で結びやすい設計。災害時にはマスクや包帯、三角巾の代わりとしても使える。連絡先、疾患などを記入できるポーチ付き。(Abby/0898-35-0204)女性の悩みを解決する必需品。生理ケアの新たな選択肢。「SaniMois -サニモア- 」ブラック2,970円災害時のトイレの問題は深刻。生理用品の不足も考慮すると、サニタリーデイパッドを用意しておくのも安心。5層構造で吸水力や速乾性にも優れ、1枚で一日快適に過ごせる。2,970円(オサレカンパニー/03-5244-4840) photo_Hikari Koki, Wataru Kitao text_Ami Hanashima

No. 1224

No.1224 『京都の味』 2023年08月28日 発売号

今号から、Hanakoがリニューアルします。 Hanakoが創刊時から大事にしてきたDNA・食と旅を軸にして。 領域は、家の食事を楽しむためのインテリアと道具、旅の持ち物、日本各地のカルチャー情報も……。 一時的な情報だけでなく、読者のみなさんにとって、Hanakoの記事が刺激となり、脳内シナプスが多方向につながり、楽しいことがどんどん広がって、新しい世界が開いていく特集を作っていきます。 リニューアル第一号は、京都の味について考えます。 平安時代に始まり、戦国時代を通して、現代へ。古くから、日本人が京都を目指すの …

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