【バッグの中身】全部、幸せにつながっている。アート思考の社長を支える仕事グッズ
取材・文:ミクニシオリ
撮影:三浦晃一
編集:照井絵梨奈/マイナビウーマン編集部
いつもおしゃれなあの人は、どうして平日もおしゃれなのだろう。
キラキラしたお洋服に身を包む彼女はアパレル関係の人にも見えるけど……なんと、”アート”思考を使ったイノベーションコンサルティングファームの敏腕社長。
「私は創造性の高い価値を提供します、ということを外見からも伝えたくて。だから、平日こそファッションにこだわっています」
尾和さんは1週間のうち、100時間も仕事に充てているそう。仕事で自己実現を成し遂げている彼女のバックには、働く強い女性としてのヒントがたくさん詰まっていた。
尾和 恵美加さん
株式会社Bulldozer代表取締役。日本IBMでコンサルタントとして入社後、デンマーク留学を経て2018年に起業。アートシンキングで企業のコンサルティングなどを行う。Instagram:@emikest
「仕事の時は荷物が多いので、大容量だけどおしゃれに見えるリュックが欠かせません。自転車で通勤するので、トートよりもリュックが自分のベストになりました」
イタリア製の本革リュックは、使い込んでも味が出る。楽さときちんと感が両方かなうリュックは、忙しく働く尾和さんの日々を助けている。
会社のある表参道まで自転車で通う尾和さんは、現在、渋谷にあるクリエイターズシェアハウスで暮らしている。
「以前、ビジネスとクリエイティブの両軸を武器にするためにデンマークに自費留学をしていました。デンマークって世界一幸せな国とも言われているんですけど、留学中に幸せってなんなんだろうという問いが生まれたんです。いろいろ考えた結果、人や土地、文化……さまざまなものとの”繋がり”が大事なんじゃないか、という答えにたどり着きました。だから、拡張家族を体験できるシェアハウスに住んでみることにしたんです」
クリエイターズシェアハウス……なんだかすごい人たちが暮らしていそうだ。
「仕事に向き合っていると孤独になることもあるけれど、シェアハウスに帰ると人との交流で、自分には無かった気づきが生まれることが多いんですよね。一緒に暮らす人に何かをしてあげたいという気持ちが、自分の次のアクションに繋がる。生活のモチベーションになっているなと感じます」
●バッグの中身
1 CELINEの財布
2 フェラガモの名刺入れ
3 お客さんに納品した思い出のパスケース
4 MacBook Pro
5 星の王子様の化粧ポーチ
6 ノート、クリアファイル
7・12 ムエット
8 フェイラーのハンカチ
9 お守り入れ
10 iPhone12 Pro
11 手帳
13 『エマニュエル・トッドの思考地図』エマニュエル・トッド 著、大野舞 訳(筑摩書房)
14 会員制のジム&マッサージで購入したマッサージグッズ
仕事人な女性経営者のバックの中ってどんな感じなのかな、と気になっていたけれど、女性らしいアイテムも多くて親近感が湧いた。仕事に必要なものは重くても妥協せず持ち歩くけれど、小さくまとまるものはスマート化して、PCを持ち歩かない時は手ぶらで済むように工夫しているのだそう。
まず気になったのはこれ。ブランドのフレグランス売り場で、香りのテスターとしてもらえるムエットがたくさん入っていた。
「ハイブランドのショップには新しい創造のアイデアがあるので、たまに売り場を見に行くんです。これはその時に気になってもらってきたムエットなんですけど、意外とずっと香っていてくれるので、そのままバックに入れているんです。バックの中もずっといい匂いになるし、お渡しする名刺に香りが移っていることも。仕事に疲れた時に香りを吸うと、少しだけ癒やされるような気持ちになります」
忙しく働いているからこそ、ちょっとした部分で自分の機嫌や体調をコントロールしているという尾和さん。何気なくもらったムエットもこんなふうに有効活用できると、なんだかちょっとサステナブル。すてきなアイデアだ。
「仕事時間が長い時は、足の下にこれを置いたり、肩首のツボを刺激したりしています。身体が疲れると集中力が持たなくなるので、私にとってはけっこう重要なアイテム。サイズは大きいけど、軽い素材が使われているので意外と邪魔にならないんですよ」
どんな仕事をするのにも、体が資本だ。仕事時間が長いからこそ、仕事中こそ癒やしグッズを使って時短しているのだという。
かわいいポーチの中からは、お守りがいくつか出てきた。
「神様がケンカしないように、なんとなくラップで包んでいます(笑)。このお守りたちは、尊敬する日本の大起業家たちが、願掛けのために持っていたというものなんです。私は無宗教なのですが、大きな商談や自己決定の前には、こうしてお守りを買ったり神社を参拝したりして、日取りのいい日に決め事をするというマイルールもあります」
引っ越しや転職など、大きな決め事ってなかなか踏ん切りがつかずに、なあなあな時間を過ごすことになってしまう人もいるだろう。そういう時間を過ごさないために、参拝や日取りで自分自身に区切りをつけているのだそう。
仕事用のメモにも使っているというノートは、なんとA4サイズのものが2冊も。
「悩み事に時間をかけすぎないために、思考の棚卸しのために使うノートと、自分のアクションをまとめるノートに分けて使い分けています。ベストなアクションを考えることは、人生においてとても大切。悩みって、自分の悩みの内容がよく分かっていない時が、一番もやもやすると思うんです。考えずに悩むことを目的にしちゃうのはもったいないので、立ち止まらずにアクションを考えたい時の必需品です」
自分の中に生まれた疑問は後回しせず、ノートで棚卸ししながらまとめる。そうすると自分の進むべき道が見えてくるから、あとはそれを決断するだけ。そうやって悩む時間をショートカットして、尾和さんは人より早い回転率や判断力を持って仕事を進めている。
ここまでお話を聞いてきてさまざまな学びがあったけれど、若くして起業家として事業を引っ張る彼女はいったいどんな人生を送ってきたのだろう。
「大学を卒業して、最初は外資系のコンサルティング会社に就職しました。その時ちょうど“AIの発達で人間の仕事がなくなるのではないか”ということが囁かれ始めた時で、人間にしかできないことってなんなのか、自分には何ができるのか、と疑問を持ちました。そこで、0から1を作ることは、人間にしかできないという考えに至ったのです」
「その中でより自分の価値を発揮できるのは、ビジネスとクリエイティブの両軸を武器にすることなのではないかと考え、デンマークに自費留学。海外での起業を考えましたが、この先日本からだからこそ、世界に創出できるものがあると考えて、Bulldozer(ブルドーザー)を日本で立ち上げました」
現在、渋谷のシェアハウスに住むなど、「人との繋がり」を大切にしている尾和さん。表参道にオフィスを借りたのも、空間と人、そしてそこで生まれる文化に可能性を感じているから……という理由があるのだそう。そのくらい、尾和さんは人や文化とのつながりを大切にしている。
「OL時代、会社の仕事って自分以外の人にできる仕事ばかりだなと思っていました。人との繋がりがあるからこそ、自分に何ができるのか、できないのかも見えてくると思います。ビジネスは人の成長の副産物。人と繋がり、その過程で自分が成長することで、自分を介在させることでしか生み出せない価値が生まれ、その先に自分らしさが表現できると幸福感は上がると思います」
幸せとは何か。働くとは何か。とても抽象的なことだけど、尾和さんはもうその答えを見つけているみたいだ。