【インタビュー】松坂桃李「色んな作品を経て、より一層この仕事の楽しさが深まってきました」
世界40カ国語以上で翻訳され、3500万部以上を売り上げるイギリスの児童文学「パディントン」が初めて実写映画化。紳士で愛らしいクマのパディントンの吹き替えを担当したのは、俳優の松坂桃李さん。「本当に僕がクマを!?」と驚きを隠せなかったというオファー時の心境と、パディントンと向き合って見えたこととは。また、様々なキャラクターを演じ続けてきたからこそ感じる、自身の俳優としての現在地、そして素顔。松坂さんの胸の内をじっくりお聞きしました。


『海外ならではのユーモアがあって見ていて本当に飽きない作品です』


――まず最初に、クマの声の役が来た時の率直な感想を聞かせてください。

松坂:「僕じゃないだろう」って思いました(笑)。何度も確認して「本当に僕なんですね」と実感して…(笑)。僕の中で「クマといえば」、(映画「テッド」で吹き替えをした)有吉(弘行)さんのイメージが強かったので(笑)。



――パディントンの世界はご存知でしたか?

松坂:「パディントン」の存在は知っていましたが、内容まで詳しくは知らなかったので今回初めて知ったようなものでしたね。絵本のパディントンを見た時は、「可愛い」印象だったんですけど、実写で見た時は熊々しいなと思いました。本当に野生の熊なんですよね(笑)。そんなパディントンがブラウン一家からダッフルコートを頂き、着ている姿は「家族として認められた証」みたいで素敵だなと思いました。

――原作にはないエピソードも含まれていますが、この世界観はいかがでしたか。

松坂:今回の「パディントン」って一見すると「子供が楽しむ映画なのかな」って思うんですけど、色彩に凝っていて本当に綺麗で大人の方が観ても楽しめる作品になっていると思います。内容も、もの凄く新しいものを観ている気持ちになりますね。ドタバタ劇の中から生まれてくる家族の絆がしっかりと描かれているので、大人も心にグッと刺さるようなセリフやシーンもたくさん入っていて。作り手側の遊び心というか、どこかで「ミッション・インポッシブル」を彷彿させたりとか、海外ならではのユーモアもあって見ていて本当に飽きない。のほほんと終わるだけじゃなくて、動きも緩急がしっかりとしているので僕は楽しめましたし、いい作品だと思いましたね。


『収録時は声を2トーンぐらい高くしていました(笑)』




――吹き替えではどんなことを意識されましたか?

松坂:海外版も観たんですけど、海外の方はわりとフラットにやられているような印象が強かったんです。今回日本版では監督とお話して、ちょっと声のトーンを上げてみようかとなり、いつもより2トーンぐらいは上げていました。

――今お話しされている声より2トーン?

松坂:はい。今より2トーンぐらい高く(笑)。

――この作品をどういうふうに楽しんでもらいたいと思いますか?

松坂:パディントンって、あることがキッカケで自立せざるを得ないんですけど、そんな中で自分でいろいろと行動をして、現状と向き合い、人と向き合っていくんですよね。熊と人間って普通は相対する存在ですけど、彼が真摯に向き合うことによって絆を結んでいく…そういうことって「熊であろうが人間であろうが関係ないんだよ」と思いますし、「何も怖がる必要はない」ということが描かれているので、そこを観ていただけたらと思います。

――ちなみにパディントンのことをいつも気にかけてくれる、ブラウン夫人がとても素敵でしたが松坂さんはどんな女性が魅力的だと感じますか?



松坂:ブラウン夫人の包み込むような包容力は大人の女性じゃないと出せないですよね。パディントンにとって一番最初に味方になってくれるのがブラウン夫人なので、彼女の温かさや、何でも許してくれそうな包容力は素晴らしいと思います(笑)。


『色んな作品を経て、より一層この仕事の楽しさが深まってきた』


――最近は映画「ピースオブケイク」や「MOZU」、ドラマ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」など本当に幅広いキャラクターを演じられて、そして今回は熊(笑)。松坂さんの中で作品を重ねていくことでの変化を感じたりはしますか?

松坂:大きな変化はないと思いますけど、いろんな作品を経て、今まで見ることの出来なかった景色を見ると、より一層この仕事の楽しさというのは深まってきますね。今はその色が物凄く濃くなっている感じはあります。

――本当に作品ごとに違うので、気持ちを保ったりするのが大変なのではと思うのですが。

松坂:それは大丈夫です。僕、作品が終わるともうスパッて切り替わるんですよね。もちろん名残惜しいと思うことはありますが、一日二日経つともうスポーン!と次に行けちゃいます。やっぱり作品や現場が違うと、本当にあっという間に切り替わるんです。今やっている現場は時代劇なので、衣装も髪型も現代劇とは全く違うし、セットもお城だったりするので(笑)。いろんな役を演じたいとは常々思っていますけど、ここ数年で本当にいろんな、違う色の役が来たとは感じますね。




――2015年だけでも6本の映画に出演されました。

松坂:ありがたいです。本当にいろんな挑戦ができました。そのおかげで、自分の中のまだ開けていない扉を開けることもできたし。いろんな作品からプレゼントをもらえたので、2016年はしっかりと自分のものにできるように、バネを縮める作業をしたいなと思っているんです。作品一本一本をより濃厚に深く、えぐるような感じで演っていきたいなと思っています。

――映画というフィールドの面白さはどう感じていますか。

松坂:自分の限界を突破できる場所というか、作品にかける時間も濃厚だったりするので、監督たちとじっくりと作品を作っていける場所ですね。その分、キツイこともありますけど、自分の限界をこじ開けることができるような場所です。


『昨年は現場でロケ弁ばかりだったので、ロケ弁以外を食べたい(笑)』


――最後にPeachyとはごきげん、ハッピーといった意味があるのですが、お仕事が大充実の松坂さんにとって、プライベートではどういった風に過ごしたいと思われていますか?



松坂:美味しいものをたくさん食べたいですね(笑)。2015年はありがたいことに仕事で現場にいることが多くて、ロケ弁ばかりだったので(笑)。具体的にはなんだろう…美味しいラーメンとか、寿司でもいいですし、焼き肉とか。とにかくロケ弁以外を、お弁当以外を食べたい(笑)。

――ずっと作品が続いている中で、癒やしとかリフレッシュとか、松坂さんを支えてきたものはありますか。

松坂:いろいろありますね。音楽を聴いたり、漫画を読んだりとか。動画を見たり。読んだり、聴いたりすることがリフレッシュに繋がりますね。

――BUMP OF CHICKENさんがお好きなんですよね?

松坂:好きですね。もちろん、BUMPさんを聴いたりもしています。音楽を聴くことで一日の自分の体のリズムが保たれたりするというのはありますね。



――演じているからこそ、音楽を聴いたりすることで「自分の生活リズムをちゃんと整えよう」といった意識があるのでしょうか。

松坂:それは本当にありますね。撮影って決まった時間に始まったり終わったりするわけではないので、そういったことを続けてやっていくと体が段々とバカになってきちゃうんですよね(笑)。だから一日の自分の体のリズムを整えるためにも、音楽聴いたりするとすごいフラットになるし。僕にとっては自分を保つために必要なことですね。

『パディントン』は1月15日(金)全国ロードショー。
公式サイト: http://paddington-movie.jp/

撮影:平岩享
取材・文:木村友美
制作・編集:iD inc.