全62ルック。ファーストルックのモデルが着用していた、インナーのゼブラ模様シャツがいきなり目を引いたが、それと同じものを44ルック目に登場した冨永も身に付けていた。

 シャツのボタンはぎりぎりまで開けられ、はだけた胸元にはジュエリーがきらり。

 この胸元から放つ、西海岸の夜の官能がオリエンタルなムードをまといながら、世界をたちまち虜にする。

◆「キャスティング10個」受けても通過するのは針の穴を通すようなもの

 2026年6月23日のInstagram投稿には、「パリ! キャスティング10個」というキャプションを書いている。キャスティングとは、各ブランドがショー開催2週間ほど前に行うオーディションである。

 モデルはキャスティング事務所に所属し、キャスティングを受けに行く。

 冨永のように1日10つ以上受けるのはざらで、なかには15ものキャスティング会場を回るモデルもいる。

 数を受けたからといって決まるとは限らない。むしろ受からないことのほうが多い。ここに日本人モデルが海外ランウェイを歩くための大きなハードルがある。

 Snow Man・ラウールが単身ミラノに渡り、ファッションウィークのランウェイを歩くまでを追ったドキュメンタリー『ラウール On The Runway』(Prime Video 2025年)では、日本のトップアイドルでさえ、1日5つものキャスティングをこなしてもなかなかフィッティング(衣装合わせ)まで進めない様子が克明に記録されていた。

 冨永のように、「キャスティング10個」受けても通過するのは針の穴を通すようなものだ。にもかかわらず、彼は世界を目指し始めた2025年6月にさっそくミラノで初海外ランウェイを経験し、何とプラダのランウェイを歩いた。

 規格外過ぎる……。ミラノ・コルティナ冬季オリンピック開催中の2026年1月にも2シーズン連続でプラダのランウェイを歩くという、記録の保持者でもある。キャスティングを潜り抜ける苦労はこちらの想像を超えるものがあると思うが、毎年の飛躍が楽しみで仕方ない。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
X:@1895cu