「まだ元気なのに、なぜ相続の話?」父の死後にわかった本当の理由。漫画作者を取材<漫画>
いざ自分の身に起きたとき、その複雑さや大変さに戸惑う人は少なくありません。
イラストレーターの益田そよさんも、そんな一人でした。「将軍」と呼ばれるほど厳格だった父から、突然「遺産相続の話をするから」と招集をかけられたことをきっかけに、帰省のたびに家族で相続の勉強会を重ねる日々を送ることになったといいます。
本記事では漫画から5話までを紹介。後半では益田さんに、勉強会が始まったきっかけや、遺産相続を通じて深まった家族の絆について聞きました。
※本記事は益田そよさんご自身の体験に基づく内容です。相続に関する制度・税制は改正されることがあるため、実際の手続きについては税理士等の専門家にご確認ください。
◆「これから遺産相続の話をするからな」
――お父様が、遺産相続についての勉強会を開くようになったのは、いつ頃だったのでしょうか。
益田そよ(以下、益田):父が亡くなる13年前、私たち3人兄弟が30歳前後、父が60歳を過ぎた頃でした。その頃、祖父(父の父)が亡くなり、父自身が遺産相続をすることになったんです。
でも、祖父は終活をほとんどしておらず、相続の手続きにかなり苦労したそうです。その体験をきっかけに、「自分の相続ではしっかりと準備をして最期を迎えよう」と思ったようです。
――最初の勉強会の日、益田さんはどんな気持ちで実家に向かいましたか?
益田:遺産相続の話とは知らず、帰省前に母から「家族揃って、お父さんから話を聞くから」とだけ言われていたので、「なんだか不穏な空気だな……」くらいに受け止めていました。
――勉強会は、どんなふうに開かれたのでしょうか。
益田:初回は、父お手製のファイルが配られました。参考書くらいの厚みがあって、相続の基礎知識から生命保険・相続税の計算方法など、遺産相続に必要な情報がびっしりとまとめられていました。その後の勉強会では、法律や制度、またわが家の相続計画に変更があった部分のレジュメが配られました。
勉強会中、父は私たちの質問に対して嫌な顔せず、根気よく説明してくれました。事前にかなり勉強してくれていたので、だいたいのことはスラスラと答えてくれました。
ただ、ファイルの資料はすべて「裏紙」に印刷されていて、「大事な資料なんだから、こんなときくらい綺麗な紙に印刷してよ」と心の中でつっこんでいました(笑)。でも、倹約家の父らしいところが出ていたとも思います。
――お父様の勉強会を受けて、遺産相続に対するイメージは変わりましたか?
益田:当時の私は、相続といえばドラマで見るような、家族が財産をめぐって争う「揉めごと」のイメージしかありませんでした。
相続税がどれくらいかかるのか、節税という考え方があることも知らず。それに、わが家の資産状況について詳しく聞いたこともなかったので、「遺産相続をする」という想像ができていなかったです。
実際に勉強会を受けて、相続がこんなに複雑な制度だと初めて知りました。節税対策をしなければ、大きな相続税がかかるかもしれないと聞き、「大変なことに巻き込まれてしまったのでは……」と不安になりました。思っていた以上に奥が深く、知らないことばかりでした。

