今週のテーマは「気合を入れた、たった一度のデートで玉砕した理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:デートしても3回目がない34歳女。食事中、無意識に女が男を幻滅させているポイントとは




花音(かのん)のこと、最初はいいなと思っていた。

初めて会った食事会で雰囲気も良かったし、合いそうだなとも思った。

彼女と別れてもうすぐ半年、そろそろ真剣に彼女も欲しいと思っていたし、タイミングまで良かった。

しかし二人きりで食事をした後、急に冷静になってしまった。

なぜ僕がたった1回のデートで気持ちが変わってしまったのか?

それはもしかしたら、花音の“空回り”っぷりにあったのかもしれない…。


A1:明るくて、話しやすくていい子だなと思ったから。


花音と出会ったのは、友人が開催した食事会だった。

食事会とはいえ、僕は期待して参加したわけではない。これまでだって、どんなに気合を入れて臨んでも、次に発展するような出会いはなかったから…。

しかし今回は少し違った。『中國菜 李白』で友達と話していると、綺麗な子がやって来た。




しかも席に着いて目が合うと、ニコっとしてくれた花音。それが不意打ちで可愛くて、思わずこちらも笑顔になる。

「初めまして、洸平です。都内で歯医者やってます」
「初めまして、花音です」

さらに花音は話しながら、僕の顔をじっと見つめてくる。しっかり目を合わせながら笑顔を向けられると、思わず勘違いしてしまう。

― この子、きっと性格もいいんだろうな…!!

その直感は正しかったようで、気がついた時には、自然と花音と二人で話し込んでいた。

「花音さんは、お仕事は何をされているんですか?」
「私はメーカーで広報をしています。この商品、知っていますか…?」

そう言いながら、花音は関わっている商品を見せてくれたのだが、さすがの大手日系メーカー。男の僕でも、見たことのある有名な商品だ。

「もちろん知ってますよ!CMもよく見ますし。すごいですね」
「私は何も。ただ会社が大きいだけです」
「でもそこで広報されているとか、花形じゃないですか」
「私より、歯医者さんのほうがすごいです!今歯列矯正に興味があって…」
「そうなんですか?歯並び綺麗ですけど…でもたしかに、少しだけすればもっと変わるかもですね」

「筆に見立てた季節のパイ」など食事もエンタメ要素が強いのも相まってか、この食事の間中、花音との会話は途切れることなかった。




「花音さんって、話し上手だし聞き上手ですよね?つい僕も、気分がよくなってペラペラと話しちゃいます」
「本当ですか?嬉しいです。でもそれは、洸平さんの話が面白いからですよ!」

花音の明るい雰囲気が素敵だなと思ったし、本心だった。

しかしそんな話をしていると、急に花音が店員さんにそっとオーダーをし始めた。

「すみません、同じものを彼女に」

ふと前を見ると、花音を連れてきた女友達のグラスが空いている。

― すごい気が利くじゃんこの子…。

「花音さんって、すごい気が利きますね。会話を邪魔しないように頼んだんですか?」
「そうですけど…それに気がついてくれる、洸平さんがさすがです」
「ありがとうございます…って、なんですかこの褒め合う時間は」

思わず、お互い顔を見合わせて笑ってしまう。

そんなこんなで彼女のことがすっかり気に入った僕は、当然のごとく帰り際に花音をデートに誘った。

「来週か再来週あたりで、二人でご飯とかどうですか?」
「も、もちろんです!!」

― 次のデート、楽しみだな。

そう思っていた。しかしデートに来た花音は、僕の期待していた感じとは違っていたのだ…。


A2:二人きりになると静かで、大人数の時と違っていた。


出会ってからすぐに、僕たちは二人きりで食事をすることになった。

僕は楽しみにしていたし、「付き合ってもいいかな」とも思っていた。

ただ、このデートで僕は色々と考えることになる。

まず店へ向かうと、花音はもう席に着いていた。




女性は基本的に遅刻してくる生き物だと思っていたので、正直これには驚いた。慌てて時刻を確認すると、僕も約束の時間より少し前に着いている。

― そんなに楽しみにしてくれていたってこと…!?

「ごめん、待たせちゃった?」
「ううん、全然。ちょっと仕事が早く終わって、時間が中途半端だったから早く着いただけで」

― あ。そういうことか。

先ほどまで、自分とのデートが楽しみで早く来てくれたかと思っていたので少し恥ずかしくなる。

とりあえず気を取り直し、初デートに臨む。

しかしデートが始まってからも、妙な引っ掛かりを覚えることがいくつかあった。

「花音さんは、普段お酒は?」
「好きですが…ほどほどって感じかな。洸平さんは?」

前回の食事会の時に、花音は酒を飲んでいたのに顔色ひとつ変わっていなかったので、勝手に強いのかと思っていた。けれどもそれは僕の勘違いだったようだ。

「僕は弱いけど、飲むのが好きで。だから彼女とかできたら、一緒に飲める人がいいなと思って」
「そうなんだ…」

― ん…?なんだこの感じ。

テンションが低いように見える花音。前回みんなでいた時は、積極的に話も振ってきてくれたし盛り上がったのに、今日の花音は大人しい。

だから僕のほうから、積極的に話を振ってみる。

「花音さんの好きなタイプとか聞いてもいいのかな?」
「もちろん!私の好きなタイプは、優しくて誠実な人かな」

前回の前のめりに話してくれた感じから、僕のことを多少はいいなと思ってくれていると勝手に解釈していた。

でもこれも僕の勘違いだったのか、花音は、好きなタイプを言うときに僕の目を見てくれない。

― あれ?これって、僕が勝手に舞い上がっていただけ…?

「見た目とかは?」
「濃い顔より薄い顔のほうが好きかも…洸平さんは?」
「僕は明るくて笑顔が可愛い子が好きかな」

そう、僕のタイプは初対面の時の花音だ。

明るくて、笑顔が可愛かった花音。しかし二人きりになると笑顔も少ないし、妙に俯きがちだ。それに加えて、静かで話も盛り上がらない。

さらに花音の手元を見ると、先ほどから食事も酒も進んでいない。




食事がテーブルに残っている景色は違和感を覚えると同時に、残念な気持ちにもなる。作ってくれた人や店に対する敬意が感じられないし、花音はそういうところに気を使える子だと思っていたから。

「花音さんって、食べ物だと何が好き?今日のお店、大丈夫だったかなと思って」
「イタリアンでもなんでも!今日のお店も、最高です」

― 気に入らなかったのかな…。

そんな不安にも駆られた。

初対面の時は周りに友達がいたから、無理をしていた可能性もある。本当の花音は、今日のように物静かなのかもしれない。

それはそれで、決して悪いことではない。

ただ僕は、一緒にいる人…彼女や結婚相手となると、明るくて一緒に何か盛り上がれる人がいい。

一度目と二度目で、印象が違いすぎた花音。

でもこのデートで本当の花音を見た気がして、「この先の関係に進むことはないんだろうな」と判断した。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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