画像:『1122 いいふうふ』ドラマ公式Instagramより
セックスレスの夫婦は、お互いに公認で不倫をすれば幸せになれるのか?」そんなセンシティブな題材を赤裸々に描いた、渡辺ペコ氏の大ヒット漫画『1122』(講談社「モーニング・ツー」所載)。6月14日からドラマ『1122 いいふうふ』として、Prime Videoにて独占配信されます。

高畑充希×岡田将生が不倫公認のセックスレス夫婦に!

友だちのように何でも話せて仲のいい、ひと組の夫婦が主人公。セックスレスで子どももいない結婚7年目のふたりが“いい夫婦”でいるために選んだのは「婚外恋愛許可制」でした。夫の恋人を公認する、仕事熱心でちょっとズボラなところもある妻・一子(いちこ)を高畑充希が。優しくて穏やかで家庭的な夫・二也(おとや)を岡田将生が演じます。

物語は、二也とセックスをする気になれない一子が、「婚外恋愛許可制」を提案するところから展開します。そして二也は毎月第3木曜日の夜を、恋人・柏木美月(西野七瀬)と過ごすようになるのです。

しかし現在公開されている予告編では「外の恋愛を家に持ち込まない」などルールを設けて“不倫”を公認して、穏やかで幸せそうに生活を送る夫婦の姿――だけでなく、それぞれの葛藤も描かれていました。自分の性欲は“凪”であり、二也とのセックスが“めんどう”に思えてしまった一子が、女性用風俗を利用?! 一方で不倫している二也は、初めて見る一子のレーシィなブラジャーに複雑な表情。

◆夫婦のセックスレスに向き合うということ

昨今はオープンマリッジ(お互いの合意のもとで婚外交渉を認め合う夫婦)を公表する夫婦もいますが、果たして本当にそれは幸せなのか?! と懐疑的な人も多いのではないでしょうか。本作においても「婚外恋愛許可制」を選択した夫婦の葛藤が描かれますが、コトの発端はセックスレスにあるのです。

原作漫画のなかで一子は「不倫の公認は 二人の未来を守るためだった」「はたから見たらどんなにトンチキだろうと 我々は大真面目だったのだ」と語っています。一子と二也は“いい夫婦”でいるために、セックスレスという問題にそれぞれに向き合い、尊重し合った結果、「婚外恋愛許可制」を選んだのです。それでもひずみは生まれ、想いは空回りし、ふたりの気持ちはすれ違う。予告でふたりがユニゾンしたセリフ「なにがどうしてこうなった?!」の通りに展開する、夫婦のリアルからは目が離せないでしょう。

◆このドラマが「不倫もの」になることはない

二也の恋人・柏木美月も結婚しています。つまりいわゆるダブル不倫。子育てと夫との関係に葛藤する美月を演じるのは、3月に山田裕貴との結婚を発表した西野七瀬。そして、妻と息子に正面から向き合えない不器用な美月の夫・志朗を高良健吾が演じます。

もちろん、不倫は褒められたことではありません。しかし原作を読了した筆者が思うに、このドラマがいわゆる「不倫もの」になることはないでしょう。

時間や環境によって人が良くも悪くも変化するように、夫婦の関係だって、それぞれの性の在り方だって変化します。相手や自分の変化に戸惑い傷つけ合うことも、変化を受け入れられずに逃げ出すこともあるのが人間です。たとえ世間的に“正しい”選択ではなかったとしても、それでも“いい夫婦”であろうと、幸せな生活や人生を諦めまいと奮闘する登場人物たちの“生きる力”を、筆者は原作から感じました。このドラマでも描かれる、2組の夫婦の「品行方正ではない 歪んで矛盾した夫婦関係」(本作予告より)は、きっと葛藤しながら日常を大切に守ろうと頑張る人たちの心に響くのではないでしょうか。

◆キレイごとではない、不器用な人間をリアルに

本作の監督を務めるのは、6月2日放送の『情熱大陸』(MBS毎日放送)でも特集された映画監督の今泉力哉氏。映画『からかい上手の高木さん』や『ちひろさん』『アンダーカレント』など、不器用な人たちが過ごす日常や心情を丁寧に描いてきた監督です。『情熱大陸』で「個人的な悩みや人に話せない恥ずかしい話こそ扱いたい」と語った今泉監督が描く“いい夫婦”にも注目です。結婚というゴール・めでたしめでたしの、その先の物語。“いい夫婦”でいようともがく登場人物たちの日常を見守りながら、自分の心にもその答えを問うてみたいと思います。

<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>

【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201