男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:「彼女と週1で会っているのに、進展しない…」男がデート中に無意識に、女を幻滅させているコト




どんより曇った、土曜の昼下がり。外に行くかどうかで悩んでいると、妻の泉がツカツカと歩み寄ってきた。

「雄大、どこか行くの?」
「うーんどうしようかなと思って。泉は?今日は何かするの?」

すると、「ふぅっ」とわかりやすく目の前でため息をつかれた。

「雄大。私たちの結婚生活のこと、ちゃんと話し合わない?」

急な話で、心拍数が上がっていくのを自分でも感じる。

「話ってなに?何かあった?」

― ここ最近、帰りが遅かったから?それともここ数ヶ月の間、会社の女の子と二人で食事へ行っているのがバレたのか…?

いや、バレていないはず。証拠隠滅とアリバイ工作は完璧なはずだから。

頭の中がグルグルしている。

果たして、妻はどうして急にこんなことを言い出したのだろうか…。


Q1:出会った時。女が強く思っていたことは?


泉とは、彼女が34歳で僕が36歳の時、恵比寿で同期が開催した食事会で出会う。

お互い、どうしてその年まで結婚しなかったのかわからないけれど、「そろそろ結婚したいな」と思ったタイミングでの出会いだった。

食事会では、泉は積極的に自分から話さず、どちらかというと聞き役で、“物静かな子だな”という印象を持った。

でもその一歩引いた感じが逆に気になり、二次会で僕は泉の隣に座る。




「泉ちゃん、お仕事は何してるの?」
「私はメーカーで営業してるよ」
「営業なの?」
「そう。意外ってよく言われるけど。雄大さんは?」
「僕は不動産業界で働いてるよ」

最初から“すごい好き”とか“タイプ”だったわけではない。でもなんとなく良いなと思い、食事に誘った。

三度くらいデートした後、泉のほうから、こんなことを言ってくれた。

「私、雄大のこと好きだよ」

女性から告白されるのは高校生以来だったため、正直驚いた。でも同時に、嬉しく思う。

それに僕も、もういい年だしそろそろ落ち着きたい。

「え?本当に?じゃあ…付き合おうか」

しかしいざ付き合うとなると、必然的に結婚のことも考えなければならない。

その点泉は、彼女というより結婚向きだった気がする。

料理も上手で、穏やかで優しい。派手に遊ばないし、ハイブランドを持ちまくっているわけでもなく、堅実そうでもあった。




だから、ごく自然な流れで結婚することになった。

「泉。結婚してほしい」

ホテルの鉄板焼きでプロポーズという、なんともベタな感じになってしまったけれど、あの時の泉の嬉しそうな顔を僕は一生忘れないと思う。

「本当に…?嬉しい…ありがとう。ありがとう、雄大」

結局1年の交際を経て婚約をして、籍を入れた。

僕の住んでいた家に、泉が引っ越してくる形で新婚生活が始まった。1LDKだったためちょっと手狭にはなったけれど、新婚だし別に多少狭くても構わない。

「来年には引っ越そうか」
「そうだね。元々、ここは雄大がひとりで住んでいた家だしね」

こうして同居した結婚後も、平和な日々が続いていた。

「泉、子どもは何人くらい欲しいの?」
「私は二人かな。雄大は?」
「僕も。早く欲しいな。でも二人での時間も、もう少しあってもいいけど」

そんな幸せな会話が続いていた。

しかし、結婚してから日が経つにつれて、微妙に関係も変わっていった。


Q2:妻が苛立っている。原因は女関係…?


結婚して1年半くらい経つと、新婚感も抜けてくる。「毎日がすごい幸せ!」というわけでもない。

結婚は、ただの日常となっていくから。

でもそれは当たり前のことだと思う。不満があったわけでもないし、泉も何の不満もなさそうだった。

強いて言うならば、子どもがまだいないことぐらいだろうか。泉は早く欲しいようで、急かされてはいた。

「雄大、子どものことなんだけど」
「うん」
「そろそろ真剣に考えない?」
「そうだね」

しかし急かされれば急かされるほど、プレッシャーにもなるし、そういう行為もしたくなくなってしまう。

「泉、焦る必要なくない?ゆっくり考えようよ」
「別に焦ってはいないけど…雄大ももっと協力してよね」

このことが、泉を怒らせたのだろうか。でも僕もまったく非協力的だったわけではないし、それなりに努力もしていた。




でも、泉がイライラしている時間が次第に増えていく。

そうなると、男としては家に帰りたくなくなってくる。疲れて家に帰ったのに、小言を言われるなんて最悪だ。

「雄大、今日も遅いの?夕ご飯は?」
「今日は会社の同期と飲んで帰るからちょっと遅くなるかも。夕飯はいらないよ」
「わかった。最近飲み会多いんだね」
「ごめん…忙しくて」

本当は、会社の後輩の女の子とご飯だった。しかしそんなことを素直に言えるはずがない。

のらりくらりとかわしていくうちに、後輩との食事の回数がいつの間にか増えていく。

― 別にやましいことはしてないし…。

体の関係はない。ただよくご飯へ行って、ちょっといいムードになるくらいだ。これは浮気には入らないだろう。

それに険悪な家へ帰るより、彼女といたほうが楽しかった。

しかし泉の苛立ちは、さらに募っていく。




「そういえば。いつ引っ越すの?」
「え?」
「結婚前に言ってたじゃない。1年くらいすれば引っ越すって」
「あぁ、そうだったね。でも、もう少し経ってからで良くない?今普通に暮らせてるし」

当初は二人だと狭いかな?とも思ったけれど、住んでみれば案外いける。それに、僕の会社へのアクセスも良い。赤坂という立地も最高だ。

「今から他を探しても、良い物件あるかどうかもわからないし」
「そうだけど…。そろそろ引っ越しも考えようよ」
「わかった。考えておくね」

そう言いつつ、今の家を引っ越すメリットがない。遅くまで飲んでもすぐに帰れるし、なんの不満もないから。

「泉、最近機嫌悪くない?」

一度、そう尋ねたことがある。するとさらに泉の機嫌は悪くなった。

「誰のせいだと思ってんの?」

― 面倒くせぇ…。

内心そう叫んだけれど、もちろん声に出しては言わない。結局妻のイライラの原因もよくわからないまま、数ヶ月が過ぎようとしている。

そして遂に、泉が何か思いつめた感じで「話がある」と言ってきた。

― 何かバレた?それともまさか離婚の話…?

でも二人きりで食事くらいはセーフなはず(ちょっとキスくらいはしているけれど)。

果たして、妻は何に対して「話がある」と言ってきたのだろうか…。

▶前回:「彼女と週1で会っているのに、進展しない…」男がデート中に無意識に、女を幻滅させているコト

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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妻が機嫌が悪い理由は…