男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:青学初等部出身、実家は田園調布…。絵に描いた“東京の正解”のお坊ちゃまなのに、モテないワケ




篤人と出会った時、「私はこの人とどうしても結婚したい!」と強くと思った。そして誓った。

「絶対に、この人を捕まえる」と…。

当時の私は33歳で、1ヶ月後に34歳になるタイミングだったこともあり、「とにかく結婚したい」という焦りもあった。

2年ほど前に彼氏と別れて以来、食事会もアプリもやり尽くしたけど、結婚したいと思えるような相手には巡り合わなかった。

彼にかけるしかない…そんな必死な思いが届いたのか、交際半年でプロポーズにまで至った私。

篤人は今年で35歳。一つ年上の大手広告代理店勤務で、年収はたぶん1,200万くらいだろう。顔もいいうえに、駒沢に持ち家もあるし、車も持っている。

そんな好条件の彼と、34歳の婚活女子がどうやって結婚できたのか?

そこには焦っていながらも、ちゃんと練られた私なりの計画があった。


Q1:男がその日のうちにデートに誘った理由は?


篤人とはマッチングアプリを通じて出会った。周りの女友達が続々と結婚し、出産ラッシュ。以前のように食事会に誘われる頻度もガクッと減り、出会いもない…。

そんな状態で、藁にもすがる思いで始めたのがアプリだった。

実はアプリに登録するのは二度目だ。3年ほど前に一度登録したものの、結局数人に会っただけで終わってしまった経験がある。

しかし今回は、私の気合も違う。ちゃんと向き合って真剣にいい人を探し、厳選して“いいね”を押し、“いいね”を返す。

そんな中、マッチした篤人。

篤人とはメッセージのやり取りもスムーズで、すぐに会うことになった。

そして待ち合わせの当日。前日はお酒も飲まず、ちょっと高いパックをして睡眠時間も十分に確保して、肌の調子を整えて向かう。

「篤人さん、ですよね?」
「そうです、初めまして」

待ち合わせの「アニヴェルセル 表参道」に登場した篤人の、写真通りの爽やかな笑顔にほっと胸を撫で下ろす。




「里帆さん、写真と全然変わらないですね」
「そうですか?良かった」
「たまに加工しすぎている人もいると聞いたので…。里帆さんは、お綺麗ですね」

篤人のさりげない褒め言葉に、私は思わずドキッとする。

― この人、女慣れしてるのかな…。

少し小柄だけれど、篤人は肌も綺麗で清潔感がある。遊び人には見えないが、広告代理店に勤務しているので、仕事で女性と関わることも多いだろう。

ただ直感で、私は篤人のことを「いいな」と思った。だからなるべく自然な笑顔を保ち、さりげなく相手のことも褒めた。

あと気をつけたのが、“結婚したいアピール”をしないこと。




「篤人さんは、どうしてアプリを?」
「周りがみんな結婚していって、食事会とかもなくて(笑)。僕ももう35だし、そろそろ誰かいないかな…と思ったんです。で、友達に勧められて」
「そうだったんですね」
「里帆さんは?」
「私もほぼ同じような理由です」

ふふっとお互い笑い合う。

そして助かったのが、アプリのプロフィール欄に篤人の趣味や基本的な性格が書いてあったことだった。そのネタが事前に頭の中に入っているので、会話に困らない。

「そういえば、篤人さんは旅行がお好きなんですか?」
「そうなんです。里帆さんは?」
「私も、旅行大好きで」

お互いの好きな国や好きな場所、最近行った所や次に行きたい場所…。そんな会話をしているうちに、あっという間に時間が過ぎていた。

「この後って、お忙しいですか?」

篤人の言葉に、私は首を横に振る。本当は、この後ピラティスへ行こうかと思っていた。でもそれより優先すべきは今、この瞬間だ。

「忙しくないです」
「もしお時間あれば、このまま飲みに行きませんか?まだ話し足りなくて」
「はい、ぜひ…!」

お茶だけの予定が、私たちはそのままディナーへ行くことになった。

篤人が連れていってくれたのは、行きつけだという小洒落たイタリアンで、ワインを飲んで酔いも回ってきた私たちは、とにかく楽しい時間を過ごした。

「またご飯行こうよ」

帰り際、篤人の笑顔に大きく頷く。

田町の自分のひとり暮らしの家へ帰った後も、しばらく楽しかった余韻に浸っていた。

そして決意した。

「絶対に、篤人と交際してこのまま結婚する!」と。


Q2:男が結婚を申し込もうと思った理由はどこ!?


二度目のデートは、初デートの2週間後となった。

本当は、ガチガチに結婚願望がある私。でもだからこそ、重くならないように、その思いを悟られないようにしないといけない。

また「この子、堅実な子なのかな?=結婚向きかな?」と思われるように、極力目立つブランド物は身につけず、いわゆる“クワイエット・ラグジュアリー”ルックでデートに向かう。

彼が予約してくれた『Pizzeria&Trattoria GONZO目黒店』での待ち合わせ。篤人は入ってきて、私の顔を見るなり笑顔になった。




「篤人くん、この前はありがとう」
「こちらこそ。楽しかったね」

今日も会話はぽんぽんと弾む。会う前に、もう一度彼のプロフィール欄はチェック済み。兵庫県出身だったので、その話も挟んでみる。

「篤人くんは、兵庫のどこ出身なの?」
「僕は神戸だよ」
「そうなんだ!神戸っていい所だよね」
「行ったことある?」
「うん。大学時代の女友達で、ひとり神戸出身の子がいて。学生時代だけど、一度みんなで遊びに行ったことがあるよ」
「そうなんだ。嬉しいな〜」
「私は横浜だから、少し雰囲気が似てるなって思った。中華街とかもあるよね?」

お互いの地元の話でひとしきり盛り上がる。地元の話をされて嫌な人は、少ないと思う。鉄板で盛り上がるネタのうちの一つだ。

「里帆ちゃんのお仕事は、土日休み?普段休みの日は何をしているの?」
「特に何も…。友達と会ったり、家でのんびりしたり。あとは散歩したり?」

本当は、たまに深夜まで飲むこともある。でもそれを言っても私のメリットには何もならないので、一応言うのは控えた。

「そうなんだ。偉いね。僕なんて、結局週末も飲んじゃうからな…」
「友達が多いってことでいいじゃん」

そして時間はあっという間に過ぎ、お店を出た時のこと。篤人が笑顔で私の顔を覗き込んできた。




「里帆ちゃんって、今彼氏いないんだよね?僕たち、付き合わない?」
「え…」

嬉しくて、心臓が止まりそうになる。本当は、すぐにでもYESと大声で言いたい。けれども、以前既婚者の友達に聞いたアドバイスをふと思い出した。

「嬉しい!ありがとう篤人くん」

そしてこの言葉を、しっかりと付け加えた。

「でも私、もうすぐ34歳だし…。結婚を考えられる人がいいんだ」

すると篤人はしばらく無言になった後、私のほうを真剣に向いてきた。

「わかった。それは真剣に考えた上で、交際してほしい」
「本当に??ありがとう…すごい嬉しい」

こうして、無事真剣交際へと駒を進めた私たち。しかも篤人は宣言通り、交際半年でプロポーズをしてきてくれた。

未婚、彼氏なし。絶望的な30代前半の婚活女子から、見事に婚約女子へと進めた私。

しかし私は顔もスタイルも悪くないほうかもしれないけれど、いわゆる一般的なOLで、年収もそこそこ。インスタだってキラキラしている感じではないし、篤人の周りにはもっと綺麗な子はたくさんいるはず。

どうして私を選んでくれて、そしてすぐにプロポーズをしてきてくれたのだろうか…?

▶前回:青学初等部出身、実家は田園調布…。絵に描いた“東京の正解”のお坊ちゃまなのに、モテないワケ

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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女が大逆転で結婚できた理由