世間を騒がせる“虚言者”たちーー。彼らはなぜ嘘を吐いてしまうのでしょうか。嘘を吐いてしまう側の心理と、嘘を吐かれる側の対応策について、心理カウンセラー・作家の五百田達成(いおたたつなり)さんに聞きました。

「キャラ立ちの時代」が虚言を加速させた

「現代は“キャラ立ち”が求められる時代。最近の例でいうと、佐村河内守さんなら“全聾(ぜんろう)”、武田アンリさんなら“武田家の末裔(まつえい)”のように、世間に自分のキャラを印象付けたいという思いが高じて、嘘を吐いてしまったと思われます。とくに有名人がオフィシャルな場で話を盛って嘘を吐いてしまうと、周囲から持ち上げられて引くに引けない形になり、さらには報道されて情報が拡散すると『事件』として取り扱われてしまうのです」

一方で、実は“自分へのキャラ付け”は、普通の人でもしている行為だと五百田さん。「私ってお酒飲めるキャラで〜」「会社では妹キャラで売ってて〜」というように、その人の個性を表す目的で行われることもあります。

キャラ付けは「盛る」といった要素も含んでいます。たとえば、仕事で初めて携わる案件で「〜の経験はありますか」と聞かれた場合。なんとなく、「初めてです」とは言いづらく、「それなりの経験はあります」と「盛って」しまった……なんて経験のある人もいるのでは?

「自分を大きく見せたかったり、素の自分に自信が持てなかったりすると、等身大の自分よりも盛って話してしまうことがあります。上記のビジネスシーンなどでは、ある種の大人のマナーとして自分を盛って話すこともあり得ます」

害のある虚言者とまともに戦おうと思うな

では、虚言癖を持つ人と関わるときには、何に気をつけるとよいのでしょうか。たとえば、「昔モデルと付き合っていた」「1億円の貯金がある」というような、明らかにキャラ立ちのための嘘だとわかるような虚言癖のある人に対しては「へぇ〜」と流しておいて、いちいち取り合わないのが得策だと五百田さん。

一方で、職場などで「××さんに貶められた」「××さんにオトコを奪われた」といった、根も葉もない噂をまき散らすような、人に被害を与える虚言癖のある人に対しては、積極的に自分自身を守る必要があります。

「そういう人は悪意があるわけではなく、実際に『貶められた』『オトコを奪われた』と心から思い込んでいる場合が多いものです。その人にとっては、それこそが真実。ですから、言い争ってもラチがあきません。第三者を味方につけつつ、なるべく関わらないようにするのが鉄則です」

虚言をやめさせるには自己効力感を満たしてあげること

それでは、もし自分の大事な人(彼氏や夫)に虚言癖がある場合は? 治すことはできるのでしょうか。

「アメとムチを使い分ける必要があります。自分に自信がなかったり、認められたい気持ちが強かったりすると話を盛ってしまい、結果的に虚言につながることがあります。まずは“アメ”として、安心させてあげることが大切です。『あなたのことは尊敬している』『(盛らない状態の)そのままのあなたを愛している』など、母親が子どもを認めてあげるように褒めて、自己効力感(筆者注:自己に対する信頼感や有能感を表す心理学用語)を高めてあげましょう」

ただし、“アメ”だけ与え続けていてもダメ。バランスよく“ムチ”を使う必要も出てきます。

「虚言に対し『そんなはずはないでしょう?』と粘り強くつっこみ、言葉を修正させます。エスカレートするようだと『もう別れるよ?』と手厳しく言うのもあり」

必死で“キャラ立ち”するために、盛り癖がエスカレートして、しまいには虚言へと進行してしまう――キャラが立たないと生き残っていけない世界の厳しさを垣間見るような気がしました。

>>>【前編はコチラ】佐村河内守だけじゃない! 世間を騒がせた虚言癖事件を、いま改めて振り返る

(文=池田園子+プレスラボ)

●五百田 達成(いおた・たつなり)
東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て独立。「コミュニケーション心理」「恋愛・結婚・仕事」を主なテーマに執筆を行う。鋭い分析と優しい語り口が人気となり、『解決! ナイナイアンサー』(日本テレビ系)、『私の何がイケないの?』(TBS系)などメディア出演多数。東京・恵比寿にて女性のための人生相談ルーム「恋と仕事のキャリアカフェ」を主宰。“日本一女心のわかる男”として、働く女性や職場で女性との接し方に悩む男性などから多くの支持を集めている。最新刊は『実はあなたもやっている!? ウザい話し方』(PHP研究所)。その他の著書に13万部を超えるベストセラーとなった『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。(オフィシャルサイトTwitterFacebook

画像:Original Update byJay Aremac