トランプ氏かハリス氏か…拮抗するアメリカ大統領選挙、堀潤が現地で取材して感じたこと
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アメリカ大統領選挙2024」です。
NYで聞く生の声。経済政策が鍵になるかも?
11月5日にアメリカ大統領選挙が行われます。僕は7月、トランプ氏が銃撃を受けた直後にニューヨークに取材に行ってました。
2016年、トランプ大統領が誕生した時は、「ラストベルトを救え」と言って、製造業の衰退で取り残されてしまった白人労働者層の不満を引き受けることにより、後押しされ、当選。
あれから8年経ち、ニューヨークの生活者に話を聞くと、「物価が高い」「賃金が上がらない」「燃料費が高騰している」と暮らしに対する不満が高まっていました。世界的には現在のアメリカ経済は株価も上がり、絶好調といわれています。ただ、それを実感するのはごく一部の富裕層で、多くの人は生活苦に直面。有色人種やヒスパニック系の方は今も差別を受けています。
トランプタワーのみやげ物店の店主は、「トランプ政権時には大きな戦争もなく、ロシアや北朝鮮とも対等に渡り合えた。世界の分断を救うのはトランプしかいない」と語っていました。
民主党が経済対策をうまく発信できなければ、生活に不満を抱える人々をトランプ氏が吸収して、再び選挙に勝つ可能性があるなと現地で感じました。
その後、バイデン大統領は撤退を表明し、副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党の候補者に。ハリス氏はカリフォルニア州の司法長官に就任していたこともあり、カリフォルニアのIT関連、シリコンバレーのベンチャーやスタートアップ企業との関係が深く、多額の献金が集まっています。バイデン氏よりも環境問題に対して前向きで、父がジャマイカ、母がインド出身というルーツもあり、多様性を重んじるという点でも、トランプ氏とは対立軸が鮮明です。ただ、民主党の選挙によって選ばれたわけではなく、バイデン氏からの指名による土壇場での交代劇、プロセスが曖昧という問題はあります。
ハリス氏が経済や安全保障、外交分野でどういう政策を打ち出すのか。中国やロシア、ウクライナ、またイスラエルとの関係について、どういうスタンスをとるのか、今後の発信に注目したいですね。トランプ氏かハリス氏か、本当に拮抗しているので、結果は全く読めない状態です。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月〜金曜7:00〜8:30)が放送中。
※『anan』2024年9月25日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)