株式会社サンリオはクリエイター支援のための新規事業として、公式(IP=知的財産ホルダー)とファンがつながる創作プラットフォーム「Charaforio(キャラフォリオ)」を2024年8月7日に公開した。どのようにクリエイター支援を行い、公式とファンがつながるのか?担当者に話を聞いてみた。

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創作プラットフォーム「Charaforio」


――「Charaforio」の開設について、意図や狙い、⽬的、ターゲットなどについて詳しく教えてください。

サンリオは「みんななかよく」の企業理念のもと、60年以上にわたりキャラクター・IPビジネスをグローバルで展開しており、版権管理やグッズ化・ライセンスビジネスのノウハウを持っています。「Charaforio」はSNSをはじめとするテクノロジーの進展に伴い、個⼈クリエイターの存在感が増すなか、個⼈クリエイターが今後グローバルに活躍していくために、サンリオが持つノウハウを活かし貢献していくことで、新しい価値を創出することを⽬的としています。

なかでも、特に⼆次創作・ファンアートについては、クリエイターやファンが公式の権利許諾のもとで安⼼して楽しめる「場」が欲しいというニーズがユーザー調査で⾒えてきました。サンリオとしても、そういった「場」を提供することが、クリエイター層からのサンリオに対するレピュテーション(評判)の向上や、クリエイター同⼠のリレーション構築につながると考えています。ターゲットは、推し活などを楽しむ10〜20代を中⼼としつつ、そこから幅広くクリエイター・ファンにリーチしていきたいと考えており、当⾯はアニメやVTuberなどのファン層をメインとしつつも、徐々にファンシーキャラクターのファンなど、ジャンル、国内、国外問わず広く獲得していきたいです。

――「Charaforio」の中でイチオシ、⽬⽟となるものを教えてください。

3点あります。1点目は、IPホルダーが⼆次創作のガイドラインを設定し、許諾された作品のみが投稿・閲覧できる点。2点目は、ファン創作作品が⼀覧で⾒ることができる点。3点目は「公認コラボ機能」や「いつかコラボしたいボタン」等を通じてIPホルダーとクリエイター・ファンが⼀緒に作品を盛り上げられる点です。

――「クリエイターの露出や仕事獲得の⽀援を⾏い、共にまだ⾒ぬエンターテインメントを創出していきたい」という思いやアイデアはどのようにして⽣まれましたか?また、その実現に向けて苦労した点があれば教えてください。

前述のとおり、昨今、個⼈クリエイターが活躍する機会が⾮常に増えてきました。サンリオは、いちIPホルダーとして、それらと競合するのでなく共創する未来を描いています。サンリオには「みんななかよく」の企業理念があり、すでに多くのクリエイターの⽅とコラボレーションをさせていただいております。

また、創業当初、読者投稿の詩にイラストレーターが挿絵を⼊れた⽂芸誌の刊⾏などの事業を⾏っていた過去もあり、クリエイターやアーティストを志す⼈たちが活躍する機会を提供してきました。2021年に「第⼆の創業」として新たにスタートを切り、グローバルエンターテインメント企業を⽬指すなかで、そうした過去を踏まえ社内外問わず「⼈」にあらためて着⽬し、新たな才能による挑戦を⽀援したいという考えにいたりました。

クリエイターの⽅々にとって、⾃分の「好き」を知ってもらうことの難しさや、貫くこと、創り続けることの⼤変さがあるなかで、我々のような企業が応援、発信することで、彼らの新しい未来が開け、活躍の機会が増える。そしてクリエイターと共に新しいエンターテインメントを切り開き世界中に届けていくことで、「みんななかよく」を体現しながら、グローバルエンターテインメント企業を⽬指していければと思っています。

こうした新たな才能とエンターテインメントに貢献できることに⼤きく期待し、時代に合わせて、デジタルで実現するプロジェクトとして「Charaforio」は誕⽣しました。苦労した点は、クリエイターに「使いたい!」と思っていただけるよう、実際に何に悩んでいるのか、どういったときに課題を感じているかなどを把握することと、安⼼安全なサービスを提供するための開発です。現在は、社外の多数のクリエイターの⽅々にヒアリングを⾏い、クリエイター視点に立ったサービス開発やイベント企画を⾏っています。また、安⼼安全なサービスをIPホルダー・クリエイター・ファンの皆様に提供するために、特に投稿された作品の権利関係や、グローバル向けにサービスを展開する際の個⼈情報保護に配慮してサービス開発を進めてきました。

――「Charaforio」は現在、⽇本語と英語で運営されていると思いますが、今後参画するIPが増加するなかで、さらに⾔語を増やして運営する可能性はありますか?

現在、「Charaforio」は⽇本語と英語のサイトページを⽤意していますが、サービスの利⽤については⼀部地域を除きグローバルを対象としています。サイトページにおける⾔語拡張は、今後展開国のユーザー数を指標に検討していきたいと考えています。

――「Charaforio」が開設されてから1週間が(※取材は8月に実施)しますが、反響はいかがでしょうか?

ありがたいことに、会員数2000⼈、IP登録数150に達し、多くのクリエイターの⽅々に利⽤していただいている状況です(取材当時)。SNSなどでも、「Charaforio」で実現したい未来に共感いただいている内容の投稿が⾮常に多く、ご期待に応えられるよう着実に機能のアップデートを進めていきたいです。

――読者へのメッセージをお願いします。

「Charaforio」は⽴ち上がったばかりのプロジェクトですが、クリエイターやファンの皆様が使いやすいサービスを⽬指して、⽇々アップデートを⾏う予定ですので今後の展開にご期待いただけますと幸いです。

■「Charaforio」の主な機能

1. “ファン創作作品”やIP情報が集約される「IPページ」

IPホルダーは、企業/個人に関わらず、創作活動を認めるIPについて、IPごとにIPページを作成できる。IPページには、IPの世界観等の設定の詳細や、“ファン創作活動”のガイドラインを掲載することができ、そのガイドラインに則って投稿された“ファン創作作品”がこのページに集約される。

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2. ポートフォリオ代わりになる「ユーザーページ」

作品を投稿するクリエイターは、ユーザーページにプロフィールや投稿作品、作品の制作請負条件などを集約できる。また、各IPのガイドラインに則った作品が一覧として表示されるため、自身のポートフォリオとしても活用することができる。

ポートフォリオとしても使用できるユーザーページ


3. コラボレーションのハードルを下げる「いつかコラボしたいボタン」

気軽なコラボレーション機会の創出を目的としたボタン。IPホルダーがクリエイターとコラボレーションしたい場合や、作品を投稿するクリエイター同士でコラボレーションしたい場合に、ボタンを押すことで相手に意思表示ができる。

いつかコラボしたいボタン


4. コラボレーションや案件依頼の連絡に使用できる「メッセージ機能」

コラボレーションや案件依頼の連絡に使用できる。IPホルダーからクリエイターに連絡する場合と、3.の「いつかコラボしたいボタン」を相互に押し合っている場合のみ連絡可能。2024年12月には、「Charaforio」上で金銭の授受が完結する受発注機能も追加実装予定。

メッセージ機能で連絡を取り合える


5. クリエイターの創作作品が公式に採用されるチャンス!「公認コラボ機能」

クリエイターが「公認コラボを許可する」にフラグを立てて“ファン創作作品”を投稿した場合、IPホルダーは、「公認コラボボタン」を押すことで、投稿作品をYouTubeでのサムネイル利用など、無償利用の範囲で面倒な確認なく使用することができる。公認コラボボタンが押された作品には、公認コラボマークがつく。

公認コラボボタン


6.ファンと一緒にIPを盛り上げる「イベント」

「Charaforio」では、クリエイターとファンが一緒になって創作活動を楽しむ場を提供し、投票型、コンテスト型、達成型の3種類のイベントを実施可能。投票型イベントは、作品とコメント投稿によって投票先を応援することができ、それらについたファンからの「いいね」の数がイベント結果に影響を与える。

プラットフォーム上でイベントを実施可能


今まで、二次的な創作活動はグレーゾーンとされることも多くあった。公式の場での二次的な創作活動が整備された「Charaforio」が開設したことは、創作活動界の革命といっても過言ではない。今後さらにアップデートされていく「Charaforio」の発展に注目したい。

文=岸遥南