男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:彼が後輩女子と2人で食事に行くのはアリ?「やましいことは何もない…」というが…




洸平と出会った瞬間、一瞬息が止まりそうになった。それほど、私のタイプだったから。

洸平は3歳年下の歯医者で、つるんとした綺麗な肌と、身長が高くて塩顔でと…、何もかもが私の好みで、理想の人だった。

― ここまでタイプの人に出会えるのって、もはや奇跡だよね…。

そう思った。しかもそんなタイプの人と二人でデートへ行くところまでは漕ぎ着けることができた。

しかしそのデート後、洸平からは特に連絡もない。

「あぁ。このまま何も進展なしで終わるんだろうな…」と、今年34歳になる私は、悲しいけれど簡単に想像できてしまった。

― 洸平と関係性を深めて、付き合いたかったのに…。

私は、初デートで何を間違えたのだろうか。

どうして、チャンスを無駄にしてしまったのだろうか…。


Q1:男が食事会から、二人きりのデートに誘った理由は?


洸平と出会ったのは、友人の美穂が誘ってくれた食事会だった。

食事会には、これまで何度となく参加してきたが、良い出会いには恵まれなかった。だから、最近は特に期待もしていない。

― 美穂からの誘いは嬉しいし、とりあえず行ってみよう。

そんなノリだったが、『中國菜 李白』に到着した瞬間、洸平に目を奪われた。




― え、待って…やばい、すごいタイプ…。

先に席に着いていた洸平を見た瞬間言葉にならない感情に襲われる。

「初めまして、洸平です。都内で歯医者やってます」

サラッとした雰囲気といい、顔といい、話した感じさえもいいうえに、歯医者とキタ。

― 完璧すぎるんだけど…。どうしよう。

「初めまして、花音(かのん)です」

そうなったら、今日私のすべきことは決まっている。とにかく場を明るく盛り上げ、気を使い、そして洸平が話すときには思いっきり笑顔で頷く。

「花音さんは、お仕事は何をされているんですか?」
「私はメーカーで広報をしています。この商品、知っていますか…?」

一応日系の大手化粧品メーカーなので、たぶん知っているであろう、現在担当しているコスメのプロダクトを見せると、洸平の顔が輝いた。

「もちろん知ってますよ!CMもよく見ますし。すごいですね」
「私は何も。ただ会社が大きいだけです」
「でもそこで広報されているとか、花形じゃないですか」
「私より、歯医者さんのほうがすごいです!今歯列矯正に興味があって…」
「そうなんですか?歯並び綺麗ですけど…でもたしかに、少しだけすればもっと変わるかもですね」

そこからしばらく、お互いの仕事の話で盛り上がる。

しかも食事も美味しくて、すべてが二人の出会いを祝福してくれているかのようにも思える。




「花音さんって、話し上手だし聞き上手ですよね?つい僕も、気分がよくなってペラペラと話しちゃいます」
「本当ですか?嬉しいです。でもそれは、洸平さんの話が面白いからですよ!」

好みの男性の話ならば、100時間でも聞ける。

全然好きでもない男性の話は、5秒で飽きるのに…不思議なものだ。

そんなことを考えながらふと前を見ると、美穂も楽しそうにしている。ただ、彼女のグラスが空になっていることに気がついた。

「すみません、同じものを彼女に」

美穂はいつもハイボールを飲んでいるし、お酒もかなり強い。だから会話の邪魔をしないようにそっと同じ物を頼んでみた。

それを見ていた洸平が、ハッとした顔で私を見つめてきた。

「花音さんって、すごい気が利きますね。会話を邪魔しないように頼んだんですか?」
「そうですけど…それに気がついてくれる、洸平さんがさすがです」
「ありがとうございます…って、なんですかこの褒め合う時間は」

お互いにハハっと笑い合う。

― やばい、この人本当に好き。

そう思っていると、洸平が帰り際にデートに誘ってきてくれたのだ。

「来週か再来週あたりで、二人でご飯とかどうですか?」
「も、もちろんです!!」

洸平とのデートまで、私の気持ちが四六時中フワフワとしていたのはいうまでもない。


Q2:一度目のデートで、男が興味を失った理由は?


あっというまに、洸平とのデートはやってきた。

その日は朝からソワソワと落ち着かず、オフィスでコーヒーを二杯も飲んでしまった。

― 今日のデート、絶対に失敗したくない…!

そう思いながら、私はデートに挑んだ。気合が入りすぎて、10分前にお店に着いてしまったくらいだ。




「ごめん、待たせちゃった?」

オンタイムにやって来た洸平は、今日も眩しいくらいにカッコイイ。

「ううん、全然。ちょっと仕事が早く終わって、時間が中途半端だったから早く着いただけで」

ここで食い気味に、「楽しみにし過ぎて早く着いた」など言ったら引かれそうなので控えめに答える。

「そうなんだ。ごめんね」

優しく笑う洸平の笑顔を、まっすぐ見つめることなどできない。

― なんとかして気に入られたい…!

だからこの初デート、私なりに結構頑張ったと思う。

「花音さんは、普段お酒は?」
「好きですが…ほどほどって感じかな」

本当はすごく飲むし、強いのであまり酔わない。でもそれを言うと可愛げゼロだし、言わないほうが吉だろう。

実際、好きな人が目の前にいるとお腹も気持ちもいっぱいになってしまい、いつものように飲めないし食べれなくなる。

今日も大好きなワインとパスタが目の前にあるのに、胸がいっぱいで全然進まない。

「洸平さんは?」
「僕は弱いけど、飲むのが好きで。だから彼女とかできたら、一緒に飲める人がいいなと思って」
「そうなんだ…」

お酒は飲める。第一関門はクリアしたようだ。




「花音さんの好きなタイプとか聞いてもいいのかな?」
「もちろん!私の好きなタイプは、優しくて誠実な人かな」

本当は、「目の前にいるあなたです」と言いたい。けれどもドン引きされそうなので、言えない。

「へぇ。見た目とかは?」
「濃い顔より薄い顔のほうが好きかも…洸平さんは?」
「僕は明るくて笑顔が可愛い子が好きかな」

明るいとよく言われるし、よく笑う。

― あれ?意外に私、結構洸平のタイプに当てはまってるのでは…!?

そう思うと、目の前に明るい兆しが見えてきた。あとはここから、どう関係性を発展させていくかが問題だ。

でも洸平のことが今の段階で好きすぎて、上手く話せない。どうでもいい人だったら適当にグイグイ行けるのに、距離を急に縮めて、引かれたり嫌われるのだけは避けたい。

「花音さんって、食べ物だと何が好き?今日のお店、大丈夫だったかなと思って」
「イタリアンでもなんでも!今日のお店も、最高です」

洸平は店選びのセンスまでいい。それもかなりツボだった。

結局何を話したのかよく覚えていないまま、あっというまに時間が過ぎて解散となった。

「今日も楽しかったね〜ありがとう!」
「こちらこそ。またね、洸平くん」

こうして笑顔で手を振り合って解散した。そして帰り際、すぐにお礼のLINEを入れておく。

― 花音:今日はありがとうございました!本当に、すごく楽しかったです♡

最後にハートマークを入れるかどうかで10分くらい悩んだけれど、一応入れておいた。

するとすぐに返信が来た。

― Kohei:こちらこそ、ありがとう!またね。

しかしこの後、洸平から一切連絡が来なくなった。

デートも楽しかったし、何より最初は洸平から誘ってくれた。それなのに、どうして洸平はこちらを振り向いてくれなかったのだろうか…。

もし時間を巻き戻せるなら、もう一度デートをやり直したい。

▶前回:彼が後輩女子と2人で食事に行くのはアリ?「やましいことは何もない…」というが…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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男が一度のデートで判断したことは?