「写真と動画をあげるだけで月200万?世の中狂ってる」夫より稼ぐ31歳妻に、外コン夫が怒り爆発
◆これまでのあらすじ
数年ぶりに再会した、医師の陸と外資コンサル勤務のミナト、そして弁護士の幸弘。
3夫婦それぞれが、レスで悩んでいることが判明する。
子どもを欲しくない幸弘と、子宮筋腫が見つかり、出産のタイムリミットに焦る妻の琴子。
一方ミナトとカリン夫妻は、ミナトの仕事でのプレッシャーもあり、レス状態が続き…。
▶前回:「ねぇ、どうかな?」結婚5年、外コン夫とすれ違いの日々。31歳妻は、夫を誘ってみるが…
ハイスペ夫を持つ妻たちの悩み
「琴子ちゃーん!遅れてごめんねー!」
小野琴子と辻カリンは、虎ノ門にある『Hungry Tiger』で待ち合わせをしていた。
スラリと伸びた長い手足に、手のひらほどの小さく整った顔のカリンが、店内に入ってくる。
黙っていても目立つのに、大きな声を出すのでさらに注目を集める。
「全然。それより久しぶりだね」
「ホント!今日は両親が娘のことを見てくれているから、久しぶりの息抜きができたの」
2人は、琴子の結婚式で出会った。
その後何度か会う機会があり、カリンが先に琴子に懐き、自然と友達になっていた。
琴子はダニエル、カリンはタリオリーニを頼むと、会っていなかった間を埋めるように、リズム良く会話が進む。
「カリンちゃんのこといつもインスタで見てるから、久しぶりな感じがしないな。気がつけば、登録者数もすごく増えたよね?」
「ふふ、ありがとう。もうちょっとで10万人かな」
「モデルに復帰はしないの?」
「今は娘もいるしね。ミナトも忙しいし」
カリンはアイスティーの氷を、ストローで遊ぶようにかき混ぜながら、考えるように一瞬黙った。
その沈黙を破るように、琴子が言った。
「実はね、私…。この間検診で子宮筋腫っていうのが見つかったんだよね」
「え?キンシュ?何それ、大丈夫なの?」
「うん、今は小さいし問題ないって。でも場所的にも、子どもを産むなら早い方がいいって言われたんだけど…」
今度は琴子が、言葉を探すように口を閉じる。
少し考えたあと、琴子が打ち明けた。
「うちさ、実はセックスレスなの。それももう、2年ほど…」
「え、うそ!うちも!」
間髪入れずにカリンが勢いよく言うので、思わず琴子は笑ってしまった。
「あ、ごめんね。ちょうどね、琴子ちゃんにその話をしようって思ってたから、つい。うちも1年くらいずっとしてないの」
「そうなんだ、カリンちゃんのところも…」
「ね、信じられない!こんないい女2人を目の前にしてお預けだなんて、修行僧なの!?」
深刻な顔をしていた琴子は、カリンの言葉に気持ちがほぐれた。
「ほんとそうよ。何様なのよ。しかも子どもの話をしたら『子どもなんて欲しいと思ったことない』って」
「うっそ、今さら?そんなの詐欺じゃない。それなら結婚前に、『子どもはいらない』って、額にでも刻んでおいてよね!」
ケラケラと笑い合うと、再び元のトーンに戻り、カリンが言った。
「で、琴子ちゃんはどうしたいの?子ども、欲しいの?」
「正直、よくわかんない。私も今仕事が楽しいから、子どもはいらないって思っていたんだけど。でもそもそも、2年もレスだし、夫婦としては破綻してるのかなって」
琴子自身、セックスレスの状態をよくないと思いながらも、夫の本心を知るのが怖くて、この問題と正面から向き合ってこなかった。
しかし、放置しているうちに、状況は深刻になっていた。
「破綻か…。でもそれだけが、夫婦じゃないとは思う…。思うけど、やっぱり辛いよね」
「カリンちゃんは、話し合った?」
「ううん、なんか聞けなくて。ミナト最近ずっと家でもピリピリしてるしさ。仕事が大変なんだろうけど、私には仕事のこと話してくれないし」
琴子とカリンは同じ悩みを共有し、お互いに励まし合って、その日は別れた。
琴子の憂鬱
カリンと別れて午後5時ごろ、琴子が広尾のマンションに帰宅すると、家はいつものように静寂に包まれていた。
― はぁ。仕事なんだろうけど、幸弘は休日もほとんど家にいないな。
琴子がため息をついたその時、スマホが震えた。
表示された名前を見て、琴子はうんざりする。一瞬取るのをためらったが、通話ボタンを恐る恐るタップした。
「あ、琴子さぁん?やだ、元気にしてるの?この間不妊治療のクリニックに行ったでしょう?なのに連絡も何もないから、何かあったのかと思って」
電話口で早口で捲し立てるのは、義母だった。
「また落ち着いたら言おうと思って」
「で、どうだった?すぐできるって?院長に聞いても、守秘義務だからって教えてくれないのよ。最近は厳しいのね、こっちは家族だっていうのに」
「あの、また準備ができたら通おうかと思っています。ただ今は、幸弘さんも私も忙しいので…」
琴子がやんわりと話すと、義母が遮ってくる。
「何を呑気なことを言っているの?仕事なんて、いつでもできるでしょう?でも赤ちゃんは、産める時が限られてるんだからね?私があなたの歳の時なんて、もう幸弘は幼稚園生だったのよ!?」
― また、この話が始まった…。
琴子は、いつものように感情を無にしてただ聞き流す。
そして適当なところで「あ、ちょっと誰か来たみたいなので」と電話を切った。
いつまでも義母から逃げているわけにはいかないが、彼女のことだから、孫ができるまで引かないのは想像がつく。
これまでも、何度も幸弘が制してくれたが、言えば言うほど琴子へのあたりが強くなっていった。
― そもそもレスなんだし、子どもなんてできないんだし。私に一体、どうしろって言うのよ…。
琴子は、何も考えたくなくてNetflixをつけると、お気に入りのドラマに没入することにした。
辻ミナトのいら立ち
「ただいまー」
日曜の午後10時過ぎ。
明日から出張があるので、ミナトが久しぶりに早く帰宅すると、リビングには誰もいない。
奥の部屋から、カリンの声が聞こえてきた。
「あ、夫が帰ってきたみたい!じゃあ今日はここまでにするね。みんな観てくれてありがとう!おやすみ〜」
どうやら、インスタライブをしていたようだ。
撮影用のバッチリメイクに、綺麗にセットされた髪。
疲れて帰ってきた自分とのギャップに、嫌気がさす。
「おかえり!今日は早かったんだね!ご飯ってもう食べた?」
「あぁ、明日から出張って言ってただろう?それより、リビング片付いてないんだけど」
娘のおもちゃが散乱したリビングのソファに、ミナトは疲れた様子でどかりと座ると、大きなため息とともにネクタイを緩めた。
「あ、ごめんね。今日はインライする予定だったから、片付けられなかったの」
「インスタライブ?そんなの、まだやってたの?」
「それがね…」
カリンは嬉しさを隠しきれないように、満面の笑みを見せた。
「実は、今月の売り上げ!なんと…200万円超えたの!すごくない?」
「は?写真と動画あげるだけで200万?世の中狂ってんな。女はちょっと可愛いと、簡単に稼げていいよな」
バカにしたような物言いに、カリンは負けじと言い返した。
「そうよ、いいでしょう?このままいけば、いつかミナトに追いつけるかな?」
カリンの最後の言葉に、今度はミナトがカチンときた。
「はぁ?仕事、馬鹿にしてんの?カリンの稼ぎなんて、今だけだろう?俺とか普通のサラリーマンが、どんなに苦労してると思ってんだよ!」
「馬鹿になんてしてないよ。ただ、嬉しかっただけ…」
「ただのインフルエンサーごときで、外資の俺らを超えられるとか、本気で思ってんの?世間知らず過ぎない?」
「そんな言い方しなくたっていいじゃん…」
泣き出すカリンを見て、ミナトは「めんどくせ、気分悪い…」と吐き捨てる。
そして、ミナトはクローゼットに行き、荷造りを始めた。
終えたかと思うと、トランクを持ってさっさと玄関へ向かう。
「え、何?明日出発するんじゃなかったの?」
「……」
予想外の行動に、焦って声をかけるカリン。
だが、彼女を無視して、ミナトは振り向きもせずに、出て行った。
▶前回:「ねぇ、どうかな?」結婚5年、外コン夫とすれ違いの日々。31歳妻は、夫を誘ってみるが…
▶1話目はこちら:「実は、奥さんとずっとしてない…」33歳男の衝撃告白。エリート夫婦の実態
▶︎NEXT:5月17日 金曜更新予定
家を出て行ったミナト。カリンはミナトの浮気を疑う中、ミナトは、心がぐらつく出来事が起こり…