恋とは、どうしてこうも難しいのだろうか。

せっかく素敵な出会いをしても、相手に「また会いたい」と思わせない限り、デートにも交際にも発展しない。

仮に、順調に駒を進められても、ある日突然別れを突き付けられることもある。

しかし一見複雑に絡み合った恋愛でも、そこには法則があり、理由がある。

どうしたら、恋のチャンスを次のステップへ持っていけるのか、一緒に学んでいこう。

今回は彼女と将来の約束もしていたハイスぺ男が、いきなり振られた理由は?という宿題を出していた。

あなたはこの宿題が、解けただろうか?




直樹と出会ったのは、約1年前のことだった。体格が良くて、かっこよくて、仕事もできる。

最初はあまりにも完璧だったので少し引いていたが、直樹は積極的に私にアプローチをしてきてくれた。

大手弁護士事務所勤務の弁護士で、年収だって悪くない。結婚相手にするならば、非常に良い条件だと思う。

けれども、私は直樹との結婚生活は考えられなかったのだ。

彼氏としてならまだ良いけれど、結婚をしたいとは思えなかった。

だから友人の裕美から、“直樹くんから、聡子の左手の薬指のサイズを聞かれたよ”と言われた時、別れる決心をした。

一体何がダメだったのか?

それはきっと、女性ならば分かるはずだ。


男性の皆様、うっかりやっていたらご注意を


解説1:“お前”と呼んだり、古い価値観を押しつけるのはやめてほしい。


彼の熱心なアプローチもあり、すぐに交際を開始した私たち。最初は、上手くいっていた。

私も直樹のことが好きだったし、彼からの愛情も感じていた。

デートはいつも彼なりに一生懸命考えてくれて、トレンドのお店へ行くことが好きな私のツボを、直樹はよく抑えていた。

例えば、代官山にある隠れ家レストラン『代官山 RINGRAZIARE koji morita』でご飯を食べていた時のことだ。

今日も素敵なデートになりそうで、胸を高鳴らせる。

しかし「トリュフパスタ」を食べながらうっとりしていた私は、思わず“ん?”と思ってしまったのだ。




「ここって、恵比寿にあった『リストランテ モリタ ダ バッボ』のオーナーさんが新たに手掛けた店らしいよ」

恵比寿にあった『リストランテ モリタ ダ バッボ』。まるで宝石箱を空けたような一皿があったり、ちょっと暗めの内装が私はとても好きだった。

それを彼は覚えてくれていたようで嬉しくなる。けれども、そんな気分をかき消すような一言に違和感を覚えた。

「“お前”、好きだったよな?あのお店」

-人のことを“お前”って呼ばないでよ・・・

心の中でそう叫ぶ。直樹はたまに、私のことを“お前”と呼ぶことがあった。親にさえ“お前”なんて呼ばれたことないのに、失礼にもほどがある。

けれども本人に悪気はなく、そして毎回言うわけでもないので注意するタイミングが掴めない。

「そうそう!あのお店も隠れ家風で好きだったんだよねぇ。どおりでこのお店も素敵なはずだ・・・♡」

とりあえず、せっかくの美味しいお料理に集中しよう。そう思っていると、直樹から嬉しい話題が出てきた。

「聡子は、どういう家庭を築きたいの?」
「そうだなぁ。温かくて、優しい家庭かな」
「だいぶザックリだな(笑)」
「あと子供は欲しいな。直樹は?」

この時の私は、気がついていなかった。ほのぼのとした、結婚後の家族の理想像なんて話しているうちは、全く見えていなかった。

「うん、子供は欲しいなぁ。うちの母親はさ、帰るといつも家にいてくれて。寂しい思いをしなかったから、親が与えてくれたような暮らしを子供にも与えてあげたいと思う」
「そうだね。それは分かる!男の子がいいなぁ」
「えー女の子がいいかも。まぁどっちでも可愛いと思うけど」

いたって平凡な会話だった。

けれども別れる際に、私はこの時の彼の発言を突然思い出したのだ。


何気ない日常の中で垣間見られた、男のNG行動とは


解説2:亭主関白。


交際して半年くらい経った頃から、私の彼に対する“違和感”は徐々に大きくなっていた。

決して、目に見えるような明確なことではない。だから一見分かりづらいのだが、週末など一緒に過ごす日が増えるにつれ、私は彼との将来がハッキリ見えてきたのだ。

最初は外食も多かったものの、段々と直樹の家でご飯を作る機会が増えていった。最初は一生懸命私の方も尽くしていたけれど、ある日ふと気がついたことがある。

彼が全く“動かない”ことに。




この日も、彼はいつものようにテレビの前に座り、ボケっとビールを飲んでいる。こちらがキッチンに立って夜ご飯の料理をしていても、彼は手伝う素振りすら見せない。

「ご飯できたよ〜」

そう呼ぶと、直樹はのそのそとダイニングテーブルの方へ来て、目を輝かせている。

「聡子って、本当にいい女だよね。家事も完璧だし・・・」

直樹は家事が全くできない。どうやって今まで一人暮らしをしてきたのか疑問に思うほど、掃除も料理も何もできない。

しかし別にできないことを責める気はない。問題は、改善する気がない点だった。

「そういえば直樹。今日もさ、洗濯機の前に靴下が散乱していたけど、その靴下をせめて脱衣所のカゴの中に入れればいいのに(笑)あとちょっとなんだから」

そんなことすらできないのだろうか。あと少しだけ腕を伸ばせばカゴに届くのに、脱いだ物は脱ぎっぱなし。何もしない。

「それができたら苦労はしないんだけどねぇ〜。ま、食べようか」

ダイニングチェアに座り、“いただきます”も言わずに食べ始める直樹を見て、思わずため息が出る。

せっかく苦労して作ったご飯を“当然”のように食べている姿に、腹が立ってきた。

「直樹、ビールもう1杯飲む?私も貰おうかな〜」

直樹を促してみるが、もちろんこんな事は全く彼に通用しない。

「いいね。冷蔵庫に、まだまだ沢山ビールがあったはず」

-いやいや、それすら動かないの!?

地蔵のように動かぬ直樹を横目に、私が冷蔵庫までビールを取りに行く。

「しかし今週も疲れたなぁ・・・」
「お疲れ様。仕事忙しいの?」
「お陰様で。新規案件も結構立て込んでいてさ。聡子は?」
「私も今週は忙しかったな〜」

こっちだって、忙しい。私だって働いている。家事は分担すべきだし、仕事終わりでこんな日々が続くのかと思うと、げんなりしてきた。

「あー美味しかった!」

そう言って、またソファーへ戻ってテレビを見始めた直樹。

普通に考えて、食事を私が作ったならば、洗い物は彼がすべきだ。

「これ、片付けても平気?」
「うん、大丈夫」

-“大丈夫”じゃなくて、“ありがとう”でしょ!?

交際中からこんな感じである以上、結婚したら彼の亭主関白っぷりが悪化するのは目に見えていた。

私が面倒を見るのが好きなタイプの女ならば良いが、残念ながら真逆のタイプである。

家事はもちろんするけれども、男性にだって公平に分担してほしい。“女性が家事をするのが当たり前”なんていう古い考えは、どこかに葬ってほしいと切に願う。

-うちの母親はさ、帰るといつも家にいてくれて。

不意に、以前直樹が言っていた言葉を思い出した。

きっと彼は母親に甘やかされて育ってきたのだろう。そして専業主婦のお母様は、家事も育児も全部一人でやってきたのだろう。

そんな“女性が家事をするのが当たり前”だと思っている直樹と結婚したら、大変なことになりそうだ。

そう思い、私は潔く別れを決意した。

だって私は、家政婦ではないから。

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一度ダメだったのに復活劇を遂げた男