神田明神の近くにある「明神男坂」。ラブライブ!の劇中でも登場したことで知られる

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2013年と2014年にテレビアニメ化、2015年に劇場版の映画が公開されるなど日本のみならず世界的に人気を博した「ラブライブ!」。物語の舞台となった秋葉原周辺にある実在の店舗や名所が劇中に登場することは、ファンの方なら言わずもがなのことだろう。その中で登場人物の一人、東條 希の実家のモデルとして描かれている「神田明神」は、今でもファンが訪れる場所だ。

【写真を見る】神田明神の階段の踊り場から頂上を見上げたところ

ファンの間で特に有名なのが、本殿向かって右側にある「明神男坂」だろう。「明神男坂」は、1830年頃、神田の消防士達が神田明神に石坂を奉納したことが由来とされる階段。作品中、アイドルを目指すメンバー達が、この階段を何度も上り下りするシーンが頻出する。そして頂上付近で語り合うなど、重要な場面としても登場してくる。まさにファンにとっては外すことができない聖地だ。

本郷通りに面した大鳥居をくぐり、そして赤い随神門(ずいじんもん)をくぐらずに右折、そして駐車場を左手に見ながら左折し直進すると、右手に「明神男坂」が見える。その石段はかなり急で、いくらアニメの中のこととはいえ「この石段を彼女たちは何回も上り下りしたのか」と驚くことだろう。駆けての上り下りは、かなり危険なので気を付けた方がよいことは言うまでもないが、筆者は一回、歩いて上がっただけで息切れを起こしてしまった。いっぽうで、ここを上り下りすれば、確実に体力がつくことだろう。そして頂上からは、インスタ映えする外神田の街並みが一望できる。きっと主人公たちも、何度もこの後継を見ていたことだろう。

■ 江戸時代から根を下ろすイチョウの木

「明神男坂」にある「神田明神男坂門」をくぐると、イチョウの切り株が見える。この木は江戸時代より、この土地に育った由緒ある樹木だ。灯台など無い時代、千葉から東京に向けて船で向かう時の目印にもなったというこのイチョウは、関東大震災や東京大空襲でも生き残るものの、親木は枯れてしまい、安全のため上部を伐採。今では「ひこばえ」と呼ぶ木が育ち、この地に根付いている。劇中でもこのイチョウは描かれており、主人公達を優しく見守ってきた。

その足元には、国家「君が代」にて、長い年月の例えとして登場する「さざれ石」が置かれている。さざれ石は、小さな石が固まり、岩となったもの。それはラブライブ!に登場するメンバーの個人が、次第に固い絆が結ばれ、大きなムーブメントとなった物語にも似ている。

さて「明神男坂があるのなら、明神女坂はあるのか?」という疑問が頭をもたげることだろう。正式名称ではないものの、明神女坂は、この男坂と並行する形で存在する。行き方は、「神田明神男坂門」を背にして直進。突き当りを左折し、道なりに進んだ先だ。

「明神男坂」もかなり急な階段であるが、「明神女坂」はさらに急で、かつ段数も多く、狭い。本来の女坂は現在廃道で、この階段は千代田区が便宜的に名づけたものだという。

2015年の劇場公開後も、ラブライブのファンが訪れ、スマートフォンやデジタルカメラで、写真にその姿を収めている「明神男坂」。たたずむイチョウの木は、その姿を優しく見守っているように見えた。(東京ウォーカー(全国版))