女と欲

5kg痩せたい、あわよくばモテたい、セリーヌのバッグ欲しい、すべてを投げ出してハワイに行きたい……と、OLの欲は尽きることがありません。諸説あるものの、除夜の鐘が108回撞かれるのも、人間の煩悩の数を表しているからといいます。欲のない人間なんて存在するんでしょうか。なんて考えたところで、とんでもないアイドルの存在を思い出しました。

かつて、モーニング娘。の公式携帯サイトにて、「あなたは、天使です。人のために善いことができます。何をしてあげますか?」というメンバーへの質問がありました。他のメンバーは、「野原をお花畑にする(道重さゆみさん)」「朝寝坊さんを起こしてあげます(飯窪春菜さん)」など、THEアイドル!という回答をする中、ひとりだけただならぬ空気を漂わせていたのが、小田さくらさんのコメントです。

「人から『欲』というものを取り除いてあげたい」by 小田さくら

……恐ろしいです。当時、この達観したコメントにひっくり返りそうになりました。癒しを求めてアイドルに触れようとしたところで、“人間と欲望”という切っても切れないものについて問いかけられてしまいました。思わず「欲」という語を辞書で引いてしまったほどです。しかもこれは加入して間もない、中学生の頃の回答。アイドルとファンの関係性は宗教に例えられることがありますが、モーニング娘。、まさか11期で神を加入させていたとは。

そのキャラクターは当時からMCでも爆発していました。初参加のツアーでの「無人島に何を持っていく?」という質問には、即座に「水」と返します。現実的過ぎるため、先輩から他の回答を促されると「濾紙」と答えました。新人なのに、媚びずに飄々としています。ちなみに、モーニング娘。’16の公式プロフィールで書かれている座右の銘は「続ける」。この達観した感じ、もしかして人生5周目くらいなんでしょうか。

久々の単独加入を果たした逸材DIVA

改めて小田さんを簡単に説明すると「モー娘。のやたら歌が上手い子」です。2012年、応募者約7000人の「モーニング娘。『スッピン歌姫』オーディション」に13歳で合格。その歌唱力が圧倒的すぎたため、モーニング娘。久々の単独加入となりました。(ちなみに、小田さんの前後は各4人加入)初のシングルでいきなりソロパートを長尺で掴みとり、多くの曲でセンターを勤め上げた先輩・鞘師里保さんの卒業後には、グループの要を担っています。

ひとりきり……その環境が女を強くする

小田さんは、顔も声も所作も大変可愛らしいのですが、キャピキャピとアイドルとして媚びたアピールをすることはありません。それでも、小田さんに惹きつけられてしまいます。最初からこのキャラなのかと思いきや、デビュー3周年を迎えた日の彼女のブログには「1人加入だったからこそ、1人で平気な子になるしかなかったし、負けない子になるしかなかったから」と、加入当時の心境が記されています。マイペース・異次元の存在かと思いきや、信念を貫き通す熱さを持った女性だったのです。

本当はもっと凄い小田さくら

その内に秘めた熱さは、マグマのように粘度が高いのです。娘。は一般的なキャラ付けのために、事務所から髪型を指示されるのですが、彼女が任命されたのはデコ出しキャラ。前髪で小顔に見せるという小手先のテクは使えません。そんな不利な制約がある中、腐らずに自分磨きを怠らずにビジュアルを強化した小田さん。今年はついにソロ写真集の出版を果たしました。他のメンバーが「スピリッツ」や「ヤングガンガン」などの少年誌で水着デビューする中、彼女の写真が掲載されたのは「SPA!」……なんとも小田さんらしいのですが、そのグラビアの眼差しからは、不思議な色気とただならぬ野心が感じられたのでした。

孤独ではなく、孤高。そう自覚してから、女の成長が始まるのかもしれません。

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(小沢あや)