『犯罪者』豪華キャストの中でも光った、25歳俳優“嫌われ役の才能”。「憎たらしさに全振りした演技」が忘れられない
内野聖陽やユースケ・サンタマリアなど、主役級の役者たちが脇を固める豪華なキャスティングだった本作。しかし、個人的に一番印象に残ったのは、高知クイーンズホテルで働く末沢瞬を演じた井上瑞稀(KEY TO LIT)だ。
※本記事は作品の重要なネタバレを含みます。
◆盗品を恋人にプレゼント
瞬は高知のホテルで働く非正規雇用の客室係。ある重大な問題を隠蔽する大手食品メーカー・タイタスフーズに一泡吹かせるために奔走する真崎省吾(内野)が宿泊する客室に入り、上着をまさぐり財布の中身を物色するなど、びっくりするくらい非常識なムーブを披露。
さらには、真崎が中迫武(ユースケ)から「息子さんへのプレゼント」としてもらった手袋を盗み、恋人の小川奈津(光嶌なづな)にプレゼントする。盗品をプレゼントしたことに加え、子ども、それも男の子向けの手袋を成人女性にプレゼントするセンスにもドン引きした。
1話冒頭、謎の男・滝川(チョン・イル)が無慈悲に次々と人を刺殺するシーンが映し出される。何人もの命を奪うことの罪はあまりにも重い。犯罪行為を順位付けすることはできないが、それでも、殺人事件が霞むほど瞬の犯罪行為のほうが衝撃がすごかった。
◆自己責任論を炙り出していく
瞬の“魅力”は窃盗事件だけではない。瞬は真崎の計画を期せずして妨害することで、滝川から報酬を受け取る約束を取りつける。大金が入ることを期待し、ホテルを自ら辞職したり、奈津にウェディングドレスを着させたりなど、その行動は衝動的かつ短絡的。
地方在住ゆえの就職先の少なさなど、瞬がうだつが上がらない生活を送っている背景はいろいろあるのだろう。しかし、その憎たらしい性格が、現状に甘んじさせている主要因であることがうかがえる。
瞬の言動には痛々しさがあり、共感性羞恥が発動し、目を背けたくなる瞬間は多い。加えて、瞬を見ていると、自分の中に潜む自己責任論を炙り出されていく感じもある。自分自身、自己責任論を忌み嫌ってはいるが、瞬が現状を憂いている瞬間には「自業自得では?」という考えが消えてくれない。
