歌手として40年のキャリアをもつ長山洋子さん。プライベートでは、2009年に結婚し、翌年に出産。大きなライフイベントが40代前半に一挙に押し寄せた当時はどんな心境だったのでしょう。現在14歳になるお子さんとアメリカ人の夫との日々の様子も伺いました。(全4回中の3回)

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41歳で結婚、42歳で妊娠・出産「無我夢中だった」

アメリカ人のご主人とは結婚15年の今も仲良し!

── 40代は、歌手活動に加え、結婚、出産、子育てと、プライベートでも大きな転機を経験されました。ご自身にとって、40代はどんな時期だったでしょうか。

長山さん:とにかく無我夢中でした。結婚したのが41歳と遅めだったので、42歳までに子どもができなかったらと諦めようと思って妊活したのですが、娘を授かることができて、本当に嬉しかったですね。ただ、自分から望んで結婚と出産をしたのだから、絶対に仕事に支障が出てはいけない、迷惑はかけられないという思いが常にありました。「女性としての幸せをとった」と、思われるのは絶対にイヤだったので、意地でも両方頑張るという気持ちが強かったです。それがモチベーションにもなりましたが、ちょっと無理して頑張りすぎたかなと思っています。

── 現在、娘さんは14歳になるそうですね。どんなお子さんですか?

長山さん:とにかく明るくて天真爛漫な性格ですね。動物が好きで、以前飼っていたペットのカエルをラッキー君と名づけてすごく可愛がっていたり、カメも3匹いるのですが、リードをつけて近所を散歩させたり(笑)。今でも少しあどけなさが残っていて可愛いです。わが家は、夫もすごく明るいので、家のなかはいつも賑やかで笑い声が飛び交っていますね。

ご主人のご両親との一枚。笑顔が素敵です

── カメにリードをつけてお散歩している光景を想像すると、なんだかなごみますね(笑)。お子さんと接するときに、意識してきたことはありますか?

長山さん:嘘をついたり、隠しごとをせずに、なんでもオープンに話せる家族でいたいなと思っているんです。親に内緒でいろんなことをやりがたる年代ですが、隠れてコソコソされるのはイヤだから、「やりたいことがあるなら、いったんママたちに言ってね」と伝えています。そのうえで、それを許可するかしないかを考える。もしも認められない場合は、頭ごなしにダメと言うのではなく、なぜ許可しないのかをきちんとわかるまで説明します。そこには、時間をかけて向き合うようにしてきました。

── ダメな理由と思いをしっかり伝えることで、子どもの納得感も高まりますね。

長山さん:わが家では、それをしていいかどうかを決めるときに、「世間の常識だから」という考え方はしないんです。逆に、友達のお父さんお母さんがみんなダメと言っているけれど、わが家の考え方としてはやってもいいよということもあります。実際に、それで娘が私たちの信頼を失うようなことをしたことは1回もないんです。

誰より早くわが子に携帯電話「うちはうちだから」

── たとえば、どんなことでしょう?

長山さん:携帯電話は、わりと早い時期から持たせていました。周りの友達は誰も持っていなかったけれど、「ママたちがいいと判断したから気にしなくて大丈夫だよ」と。もしかしたらほかの親御さんからは「スミスさんちは、ちょっと早すぎるわよね」と言われていたかもしれないけれど、「うちはうちだから」と思っていました。

小学生のころの長山さんとお父さま。当時から民謡を習っていたそう

── 日本では、周囲に同調をして行動を決めるというケースも多いです。自分たちの意思を貫くスタイルは、ご主人が外国の方というのも影響しているのでしょうか。

長山さん:娘はインターナショナルスクールに通っていて、周囲にも外国の方が多いのですが、皆さんがそういうわけではないので、あまりそれは関係ないかもしれません。ただ、周りに振り回されずに、自分たちがどうしたいかを決めるには、夫婦でしっかり考え、とことん話すことが大事だと思っています。「なぜ?」の理由が明確じゃないとブレてしまって、子どもに納得してもらえませんし。

── 娘さんが「携帯を持ちたい」と相談してきたときは、どんなふうにお話しされたのですか?

長山さん:いろいろと話す前に、夫が「はい」って普通に渡していましたね。それだけ子どものことを信用しているんだなと思います。しかも、子ども用の携帯じゃなくて、いきなりiPhoneでしたし。

── ネットのトラブルやいじめの問題など、早い時期から携帯を持たせることを不安視する親も多いですが、そのあたりはいかがでしたか?

長山さん:不安はなかったですね。子どもとの信頼関係ができていましたし、携帯の中身に関しても、夫が細かく関与していて、「これはどうしたの?」などと、その都度いろいろ確認しているようです。娘も嫌がることもなく、オープンに話していますね。親が最初から疑っていたら、子どもだって隠すようになると思うんですよね。だけど、その一方で、「うちの子に限って」という考えは危ないので、盲目的にならないように、私自身も気をつけてはいます。

娘には「あなたのそういうところが好き」と毎日伝える

── 基本的には子どもを信用するけれど、「親フィルター」はかけすぎない、と。

長山さん:そう思っていますが、子どもには、それを悟られないようにしたいなと。「ママは私のことを信用していないの?」と思われたら悲しいじゃないですか。だから、「あなたを全面的に信用しているからね」と振る舞うことも大事だと思っているんです。

成人式のときの長山さん

── たしかに、全幅の信頼を置かれると相手を裏切れないですよね。お子さんには、どんなふうにその気持ちを表現されるのですか?

長山さん:「信頼してるからね」と直接的な言葉で表現するよりも、娘が自分の気持ちや出来事をありのままに話してくれたときに、「それがあなたのいいところだよね」とか「そういうところがママは大好きなんだよね」と、その都度伝えます。いいことも悪いことも、隠しごとをせずに話してくれたその「正直さ」を褒めるんです。すると、娘もすごく嬉しそうな表情になり、そのあとで、いくつか自分の新情報を話してくれるんですよ(笑)。

── 引き出し方が上手でいらっしゃる(笑)。

長山さん:子どもって、エンジンがかかるまでが結構、大変だったりするけれど、いったんノッてくるとずーっとおしゃべりするじゃないですか。そういうときに、普段聞けないような話をしたり。夫もそういうコミュニケーションをしているので、わが家では子どもとの間に隠しごとがないんです。

── たとえば、ネガティブなことであっても否定せずに耳を傾ける感じなのですか?

長山さん:あまり娘の口からネガティブなことは聞いたことがないのですが、たまに「あの子とはちょっと気が合わないかも…」という話になったときには、理由をよく聞きながら、「そっか。それなら私も合わないな」とか、友達みたいに話してますね。

だいたい晩ご飯を食べ終わった後はバルコニーに出て、家族で1時間くらいおしゃべりをするのが、わが家の恒例。最初に夫が出て、娘が続いて、最後に片づけを終えて私が参加。外だと解放感があって、余計におしゃべりがはずみます。そこで話す内容がいちばん濃いですね。私にとって、ものすごく幸せな時間です。

「なんでそんなに綺麗なの?」と言う夫に「からかってんな(笑)」

── ご主人とはバラエティ番組での共演がきっかけで出会ったそうですね。国際結婚のカップルですが、習慣や価値観の違いを感じることはありますか?

長山さん:夫は家族との時間をすごく大切に考えますね。うちの両親の誕生日なども、必ずお祝いをして、一緒にディナーを食べたりします。夫は人を喜ばせるのが大好きなので、プレゼントを贈って終わり、という儀式的なものではなく、いろいろと楽しみながら準備をしてくれるので嬉しいですね。

── 外国人のパートナーは、相手を褒めるとよく聞きます。以前、あるメディアで「毎日『綺麗だね』と褒めてくれる」とおっしゃっているのを聞き、とても素敵だなと感じました。

長山さん:「なんでそんなに綺麗なの?」とか言ってくるから、最近は「からかってんな、コイツ」って思ってます(笑)。きっと彼のなかで「毎日褒めよう」って決めているんじゃないですかね。でも、夫婦としての愛情を大事にするというのは、外国人あるあるなのかも。普段は子ども優先のスケジュールですが、月1回くらいのペースで2人だけでドレスアップして出かけたりします。娘からすれば、夫が私を褒めたり、2人が仲良くしているのは当たり前の光景になっていると思います。

PROFILE 長山洋子さん

ながやま・ようこ。1968年、東京都生まれ。1984年に『春はSA-RA SA-RA』でアイドル・ポップスシンガーとしてデビュー。86年にユーロビートの代表曲『ヴィーナス』をカバーし、大ヒット。88年、映画『恋子の毎日』に主演し、女優としても活躍。93年に25歳で演歌歌手に転身し、以後、演歌界で活躍。2009年にアメリカ人実業家と結婚し、翌年に長女を出産。

取材・文/西尾英子 写真提供/長山洋子