恋愛したいけど結婚はしたくなかった……30代半ばで結婚願望が芽生えた彼女の選択
「結婚しなくても幸せになれる」といわれるこの時代。それでも、長い人生、1人で生きていけるかと問われたら考え込んでしまったりもするのでは?
この記事では、30代半ばになってから結婚願望が芽生えた女性が、将来について考え、ひとつの選択をするまでのエピソードをご紹介します。
■結婚なんて面倒くさいと思っていた
私の人生に結婚は必要ない。ずっと、そう思っていた。
仕事に没頭し、校了明けは同僚や友達と飲み明かす。舞台やライブに足を運び、年に一度は海外旅行をする。たまに彼氏と会う。その生活があまりにも楽しかったから。
それに、30代のうちには独立してフリーランスの編集者になりたい。
家族がいたら仕事中心の生活は難しいだろうし、やりたいことをいろいろと諦めなければならないだろう。
そんなのは困る。自由な時間を手放したくない。そう考えていたから、結婚なんて面倒くさいものとしか思っていなかった。
■「1人で生きるのは無理かも」と思い知ったコロナ禍
その価値観が音を立てて崩れたのが、2020年から2021年にかけて。コロナ禍で在宅勤務の日が増え、人に会う機会が激減した影響だ。
実家に帰るのも友達と食事するのも憚られる。月に2回は会っていた彼氏とも、しばらく会うのを控えたら、一気に孤独感が押し寄せてきた。
そのとき、初めて「1人で生きるのは無理かもしれない」と感じた。
今はまだいい。でも、50代、60代になったときにこの状態だったら……耐えられない気がする。
彼氏との結婚を考えたことはないし、将来の話をしたこともない。もともと、結婚願望のない頃に出会い、軽い気持ちで付き合い始めた。
行きつけのバーで顔なじみになった彼のことは、実はそれほどよく知らない。
共通の知り合いはバーのマスターや常連さんだけ。バツイチで元奥さん側に子どもがいると言っていたけど、もしかしたら離婚は嘘で、単身赴任しているだけかもと思っている。
結婚に興味がなかったから、そこはどうでもよかった。会えば楽しい時間を過ごせるし、束縛することも、されることもない関係は私にとって心地よかったのだ。
でも「1人で生きるのは無理かもしれない」と感じてからは、彼との関係を続けていていいのかわからなくなった。
■「理想の結婚のカタチ」を目にして、結婚願望が
友達のミキが起業したのも大きい。会社勤めの傍ら、ネットショップでハンドメイドのアクセサリーを販売していたミキは、いつかはそちらを本業にしたいと言っていた。
結婚してからはその話を聞く機会がなかったので、諦めたのかと思いきや。会社を辞めて、旦那さんの協力のもと、オンライン販売や講座を行う会社を立ち上げたらしい。
家庭があっても好きなことができる。夢を諦めなくていい。理想の結婚のカタチに感じられ、結婚って案外、悪くなさそう、と思うようになった。
彼氏と別れて婚活でもしたほうがいいのか。
悩んでいたときにWEBで見覚えのある占い師の広告を見かけた。シウマさんという沖縄の占い師で、テレビで芸能人の過去や性格をバシバシ言い当てていた人だ。
たまには占いもいいかもって気持ちになり、『【琉球風水志シウマ】最強占い解禁◆琉球秘術』というサイトの「最速で叶う 【シウマの結婚成就占】あなたの生涯伴侶/交際/夫婦生活」を試すことにした。
■“運命の相手”とは、もう出会っているらしいけど……
携帯番号の下4桁の合計数で占う【携帯番号占い】や、名前を基にした【ネームナンバー】といった数字を用いるシウマさんの占い。“結婚運命”を象徴する数字は【マリッジネームナンバー】というそうだ。
◎マリッジネームナンバー
マリッジネームナンバーが「5」の私は、「思い切りの良さを持っているのに、結婚に対しては慎重になりやすい」とのこと。
◎運命の相手の特徴
そして、【運命の相手の特徴】は「あっさりした顔」「ちょっとぽっちゃり」「背が高く、包容力がある」「ゆっくり相づちを打つ」。
今の彼氏は痩せ型で顔が濃いめだし、せっかちなタイプ。全くと言っていいほど特徴に当てはまらない。結婚相手として見ていないから別にいいけど、はっきり「違うよ」といわれたようで、おかしくなった。
◎その人とは既に出会っている?
既に出会っているか? という占いの結果は「YES」。
「出会いを果たし、ある程度お互いのことを知っている」と書かれている。そんな人、身近にいたっけ?
少し考えて「いない」という結論に達した私は、まあ占いだもんね、と思ってスマホを置いた。
■遭遇した、背の高いぽっちゃり男性は……
数日後。タイアップ広告の編集をすることになった私は、取引先の企業に出向いた。ひさしぶりのリアルの打ち合わせ。担当者の1人は少しぽっちゃりした、背の高い男性だった。
名刺交換をすると見覚えのある名前。学生時代の友人・ケイタと同姓同名だ。でも、私の知ってるケイタはガリガリに近いくらい痩せていた。よくある苗字だし別人だろう。
打ち合わせを済ませてエレベーターに乗る。閉ボタンを押し、おじぎすると、ドアが閉まる瞬間に誰かが滑り込んできた。
「アヤ」と名前を呼ばれる。「ナチュラルに無視しないでよ」。見上げると、さっきの男性だった。ずいぶん横に大きくなったけど、マスク越しの目と声は……。
「ケイタ? わかんなかった。変わりすぎ」
「そっちは全然変わらないね」
少し会話して、私たちはその日の夕方、食事をする約束をした。
■気まずくなってしまった男友達
ケイタは大学時代、最初にできた友達だ。語学の授業の席が隣りで話すようになり、ケイタが入りたいという映画研究会の見学に付き添ったことから、私も同じサークルに入った。
卒業後も定期的に会い、仕事の愚痴を言い合ったり、お互いに恋愛相談をしたり。よく「男女の恋愛は成立しない」と言うけど、私たちは成立してるよね、なんて笑っていた。
「35歳くらいになったとき、お互いに独り身だったら結婚しようか」といわれ、「孤独死は怖いから、それもいいかもね」と答えた記憶もある。
そういう関係がずっと続くと思っていたのに、30歳になる直前、終焉は突然やってきた。いつものように外で飲んだ後、ケイタの部屋で飲み直していたとき、ベロベロに酔った彼がいきなりキスしつつ、のしかかってきたのだ。
このままじゃダメだ。私はケイタの腕を振りほどき、部屋を飛び出した。追いかけてこない。少し外を歩いて頭を冷やし、戻ると彼はぐっすり眠っていた。
その日のことを、ケイタがどこまで覚えているかはわからない。でも、なんとなく気まずくなった私は距離を置くようになり、やがて彼からの連絡も途絶えた。
■再会の日は直近で「運気が最も高い日」
「タイ料理とか食べたい」ケイタが言うので、エスニック料理のお店に入った。そういえば、この人とは食べ物の好みが合うんだった、と思い出す。
今の彼氏は辛いものもパクチーも苦手だから、デートでエスニック料理なんか食べたことがない。
一通り近況報告をし合った後、ケイタが切り出した。
「あのとき、俺、たぶん何かしたよね? 本当ごめん」
「大丈夫。気にしてない」
「いや、気にしてよ!」
聞けばケイタは、学生時代から私のことを想っていてくれたらしい。でも、私に「最高の友達」といわれ、関係が壊れるのが怖くて“親友”に徹していたとか。
そして、“あの日”のことは記憶がないけど、散らかった部屋やカギが開いたままのドアから、なんとなく察したそうだ。
「そういや、前にミキからケイタが婚約したって聞いたけど、今は?」
「結婚しようって話はしてた。でも、アヤが忘れられなくて……上手くいかなかった」
結果、今も独身だという。
「私たち35歳を越えちゃったね」
「孤独死しそう?」
「うん。孤独死、一直線」
そんな会話をした帰り道、ふと、あの占いを思い出して見てみると、その日3月17日は、私の直近の14日間の中で「最も運気が高まる日」と書かれていた。
「人から声をかけられたり、誘われたりする」「この時期は良縁にも恵まれる」といった占い結果に、つい笑ってしまう。
ケイタが運命の人なのか、この先、どうなるのか、全く予測がつかない。
でも、今後のことを考えたら、未来がない彼氏との関係はそろそろ終わらせる必要がある。
そう思った私は、家に着くと、さっそく彼氏に電話をかけた。