1969年に登場した5000系初代「レッドアロー」

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西武鉄道の新型特急車両「Laview」(ラビュー)が、2019年3月16日から営業運転を開始する。建築家の妹島和世氏がデザイン監修を務め、これまでにない外観が特徴的の同車両。西武鉄道はフラッグシップトレインとして位置付け、大きな期待をのぞかせる。だがその一方で、これまでの西武鉄道の特急の愛称であった「レッドアロー」の名は冠さず、その名の由来である赤色の帯も描かれていない。半世紀に渡り受け継がれてきたこの名称は、平成の終わりとともに姿を消すのか。レッドアローの歴史と、Laviewの命名について西武鉄道に話を聞いた。

【写真】001系「Laview」と、初代レッドアローのデザインを再現した10000系「レッドアロークラシック」

■ レッドアロー50年の歴史を支えた2つの車両

レッドアローの歴史がはじまったのは1969年。西武秩父線の開業に合わせ、西武鉄道初の特急専用車両として開発された5000系電車の登場からだ。アイボリーホワイトの車体の両端と前照灯のラインに赤い帯が入った外観と、矢のように走るスピード感を表現するため名付けられた愛称が「レッドアロー」だった。初代レッドアローはその名にたがわず、池袋から秩父まで約80分台の速達性から、東京と秩父を結ぶメインルートとして確立した。

初代レッドアローの運行開始から20年以上が過ぎ、老朽化した5000系を置き換えるべく登場したのが、現在特急車両として運用されている西武10000系電車だ。1993年に新宿線内に新設された特急「小江戸」用車両としてデビューすると、1994年には池袋線・西武秩父線への導入も開始。翌1995年には全編成が10000系と置き換えられた。

グレーのベースとした車体塗装に赤い帯が入った10000系は、「ニューレッドアロー」と命名された。西武鉄道によると、10000系導入当時の検討過程に関する記録が残っておらず、「レッドアロー」の改名案があったかは不明だという。

「『レッドアロー』の愛称や車体に入った赤いラインのデザイン等を継承していることから、10000系導入の時点で、「レッドアロー」という愛称は当社の特急としての知名度・ブランド力があることを認識していたのではないかと考えます」と、同社広報の曽根氏は話す。

西武鉄道の特急専用ホームの入り口に「特急レッドアロー号のりば」と表記されるように、「レッドアロー」が内外ともに西武特急の代名詞として定着していたのは疑いようがない。2011年からは初代5000系の配色を再現した編成「レッドアロー・クラシック」が運転を開始するなど、2つの列車は一続きの「レッドアロー」として西武鉄道を象徴し続けた。

■ 「いままでに見たことのない新しい車両」のための新愛称

西武鉄道にとって3代目となる特急用車両001系は、Laviewという新たな愛称が与えられた。新型車両の外観と愛称が発表されると、SNSなどでは「レッドアローの名前は消えるのか」ととまどいの声も上がった。西武鉄道も、「レッドアローの愛称は現在、多くの方に親しまれており、西武鉄道の特急の知名度向上に貢献していると考えています」と名称の持つ力を認識している。それにもかかわらず、長く親しまれた名称を一新した理由を曽根氏はこう話す。

「弊社は2015年に営業開始から100周年を迎えました。今回導入される001系は、次の100年に向けた出発点である車両として全く新しい特急車両を目指しています。これからの西武鉄道の未来を担う新たなフラッグシップトレインとして『いままでに見たことのない新しい車両』を目指すために、これまでのレッドアローからデザインだけでなく愛称も刷新することとなりました」

新特急車両の愛称を選定する段階では、レッドアローの名を引き継ぐことも検討候補の中にあったという。だが、挑戦的な新車両の実現のため、あえて定着していた愛称から離れたのだ。アルミ素材の車体に塗装を施したLaviewは、都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込むデザインを目指したもの。こうしたコンセプト1つをとっても、赤い帯からの脱却が必要だったと見ることもできる。

西武鉄道では今後、2019年度末までに現在池袋線・西武秩父線で運行される特急列車を全て10000系から001系Laviewに置き換える予定を発表している。新宿線で運行されている10000系については今のところ引退の予定は決まっておらず、また、レッドアローを冠する列車が消滅するかどうかについても未定だが、東京と秩父を繋ぐ特急としては姿を消すことになる。寂しくもあるが、「Laview」が偉大な先代に代わり西武特急の代名詞となれるか楽しみでもある。(東京ウォーカー(全国版)・国分洋平)