背が低い女性の場合、「少しでも身長があるように見せたいからヒール靴が手放せない」と思っている人は少なくないようです。

しかし、「小柄で足のサイズが小さい人ほど、ヒールの高さに注意が必要です」
と話すのは、足と靴専門の理学療法士で、馬喰快歩堂(ばくろかいほどう。東京都中央区)所長の三浦賢一さん。さっそく詳しいお話を聞いてみました。

ハイヒールは足の傾斜がきつくてつま先に負担がかかる

三浦さんはまず、「身長と足のサイズ(足の長さ)はほぼ比例するので、身長が低いと足のサイズも小さめになります」と言い、こう説明します。

「足のサイズが小さい人の問題は、ヒールを履いたときに靴の中での足の傾斜がきつくなることです。

例えば、10センチメートル(以下、センチ)の高さのコップに、長さが10センチと5センチの定規を立てかけると、コップとの間にできる角度がそれぞれ違ってきます。短いほうが急になりますが、ハイヒールを履いたときの足の角度も同じことが言えます。

足のサイズが小さい人と大きい人が同じ高さのヒールを履くと、サイズが小さい人の足のほうが、つま先からかかとまでの傾斜がきつくなるわけです」

その場合は、つま先への負担が強くなりそうです。

「その通りです。また、靴の中で足の傾斜がきつくなると、足首がぐらついて膝(ひざ)が曲がり、骨盤が下がって猫背になります。

そして、足の指の靴ずれや割れ爪、巻き爪、おや指の付け根の骨が外側に飛び出す外反母趾(がいはんぼし)、小指がくすり指側に曲がって変形する内反小趾(ないはんしょうし)など足のトラブルをまねきます。そうなると、ヒールが履けなくなることもあります」と三浦さん。

それらのトラブルには思い当たります。ただ、ヒールの高い靴はおしゃれアイテムとしての必需品です。どうすればいいのでしょうか。

ヒールは太めで、高さ3〜5センチを選ぶ

ここで三浦さんは、「小柄な女性が靴を選ぶときには、ヒールの太さに注目し、安定性を求めることが重要です」とアドバイスをし、次の3つのタイプを紹介します。

(1)ピンヒールは避けて、ストラップがあるタイプを選ぶ

まず、足元が不安定になるピンヒールは避けましょう。ヒールは先端のゴム幅が2センチ以上と太めで、高さは3〜5センチが適切です。さらに、足の甲や足首にストラップの付いたタイプは、ないものに比べて足と靴の一体感を高めて歩きやすくなります。このタイプなら少し高めのヒールでも足元が安定するため、膝、腰、背中が伸びてきれいな脚と美しい立ち姿が望めます。

(2)ウェッジソールを選ぶ

ウェッジソールは、靴底の土踏まずにくぼみがないこと、かかと部分に比べてつま先部分の厚みが薄いことが特徴です。地面に接する面積が多いため、高さがあっても足元は安定しやすいでしょう。ウェッジソールでストラップが付いたタイプは、さらに歩きやすくなります。

(3)前底厚プラットフォームソールを選ぶ

   
プラットフォームとは、つま先部分の底に厚み(ストームと呼びます)があるタイプと、かかと部分のソールがともに高い靴を言います。特に、ストームに厚みがあるのが特徴で、かかと部分は厚底やヒールタイプなど種類が多くあります。同じ7センチのハイヒールでも前に2センチの厚みがある場合、実際は5センチのヒールを履いた状態になります。

靴の中での足の傾斜がゆるくなるので安定性が増し、脚を長く見せることができます。パンツスタイルを美しく見せるタイプと言えます。

最後に三浦さんは、小柄女子の靴選びの目的について、こうアドバイスを加えます。

「ウェッジソールやプラットフォームソールは若い女性向きという印象があるかもしれませんが、小さなサイズ用では、大人の女性を意識した上品なデザインの靴がたくさんあります。足元の安定を第一に考えて探してみてください」

これまでは細くて高いヒールばかりを選んでいましたが、アドバイスを受けてショップで広く見渡すと、大人向けのプラットフォームを見つけることができました。歩くときに足が楽になり、姿勢が良くなったとも言われます。これからは靴選びの基準を変えることができそうです。

(取材・文 小山田遥/ユンブル、イラスト:カミグチヤヨイ)