「健診」と「検診」は別のもの? 会社と自治体での違いは?

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執筆:井上 愛子(保健師、看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

自分の健康状態を知るため、年に1回はぜひ受けておきたい健康診断。

会社や地方自治体から健康診断のお知らせの中に、「健診」もしくは「検診」という表記を目にしたことはありませんか?また、どのような違いがあるのか、気になったことはありませんか?

そこで今回は、「健診」と「検診」の違い、そして会社と自治体で実施する健康診断の違いについて、ご紹介したいと思います。

「健診」と「検診」の違いは?

「健診」は、とくに何か身体の不調があるかないかに関わらず、今の健康状態を知るために行うものです。健診結果から、これからも健康を保持したり、さらに増進することを目的としています。これを「一次予防」といいます。

「健康診断」とはこの「健診」を指し、例として会社や学校、自治体で行われる定期健診が挙げられます。


一方、健康に異常がないかを知り、早期に適切な対処につなげる「二次予防」の目的で行われるのが「検診」です。

検診は、病気を早期に見つけ、なるべく早い段階で治療するために行われます。検診の代表例に、胃がん検診や乳がん検診などの「がん検診」があります。

会社と自治体で実施する健康診断に違いはあるの?

健康診断(健診)は、会社でも自治体でも受けることができます。しかし、会社で受けるものと自治体で受けるものでは、受けられる項目が異なる場合があります。

会社で受ける健康診断


従業員が健康な状態で仕事に従事することを目的に行われます(法定健診)。40歳未満の場合、「身長・体重、診察、視力、聴力、尿検査、胸部レントゲン検査、血圧」の検査が必須となります。

40歳以上は、上記の項目のほか、「腹囲、貧血、肝機能、脂質、血糖、心電図」があります。家族であっても、扶養に入っていれば同様の検診を受けることができます。


費用は、会社側が負担することが実際です。そのほか、希望のオプションで、乳がんや子宮頸がん、胃・大腸などのがん検診を受けることもできます。この検診については、健康保険組合によって、補助が出るか否かに違いがあり、別途自己負担でオプション費用がかかることもあります。

自治体で行われる健康診断


一方、自治体で行われる健診は、おもにメタボリックシンドロームの予防を目的としています(特定健康診査)。

メタボリックシンドロームは、生活習慣病の予防を目的としていることから、40歳以上と対象年齢に制限があります。「身長・体重、診察、腹囲、尿検査、血圧、肝機能、脂質、血糖」の検査を受けることができます。会社で受けるものに比べて、やや項目は少なくなります。

費用は、全額補助がでる、または一部自己負担があるなど、自治体によってさまざまです。各種の検診については、実施している自治体もあれば、実施自体していない場合もあります。

地域の広報誌やホームページなどで確認し、もし受けたい検診や項目がない場合は、別途医療機関に相談をすると良いでしょう。

大切なのは「主体的に受ける」こと

会社や自治体で受けるにせよ、大切なのは「健診・検診は主体的に受ける」ということです。

会社勤めの人の場合、決められた日程で受けることができるため、受け忘れることはあまりないようです。一方、会社に勤めていない主婦や高齢者は、自分で健診を申し込むことが必要なため、受け忘れる人や、がん検診のみを受け、基本の健診を受け忘れる人も少なくありません。

そのため、基本健診をきちんと受けているかどうか、どの内容で実施したのかなどを確認しておくようにしましょう。

また会社や自治体から案内を受け取った場合にも、案内されるままに受けるのではなく、健診の大切さをよく理解した上で、1年に1回は受けるようにしましょう。

さらに、がん家系や体調の変化にも注意し、必要な検診を受けるようにします。「健診・検診の項目の内容を知りたい」もしくは「どの検査を受けて良いか分からない」という場合には、会社や自治体の相談窓口を確認し、医師や保健師に相談することをおすすめします。

一次予防と二次予防の意味をよく考え、これからの健康維持につなげていきましょう。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供