就労状況にある女性の57%が非正規雇用という現代。非正規雇用のなかで多くの割合を占める派遣社員という働き方。自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、数か月前まで派遣社員として働いていた後藤紀子さん(仮名・27歳)にお話を伺いました。紀子さんは現在、妊娠6か月。幸せなマタニティーライフのはずですが、「色々予定外だった」と言います。今回は紀子さんに、どうして派遣で働いていたのかを聞いてみました。

紀子さんは、県内で一番学力が高い女子高に進学しています。

「中学の時は英語で学内1位を取ったり。勉強はそこそこできました。高校は女子高だったのですが、卒業生には女子アナになった人もいたり。努力家の人が多いですね」

大学は経済学部に進学します。

「経済学部は食いっぱぐれがないって言われたんですよね。あまり関係なかったですが」

大学時代は特にサークル活動も行わず、真面目に勉強し単位も落とすことなく卒業できたといいます。

「就職活動はマスコミを中心に、何十社か受けました。でも全敗で。就職情報サイトに載っている人って、有名大学の人がほとんどですが、実際に希望通りの企業に就職できる人って、その中でも何割かの人だけなんですよね」

結局、就職先が決まらないまま、卒業を迎えたと言います。

「基本的に勉強は苦ではなかったんですよ。でも普通の学生って、就活では特に必要とされていないんですよね」

紀子さんは、持ち前の向学心の強さをバネに、単発のバイトをしながら留学資金を貯めます。

「実家暮らしだったので、あまり切羽詰まっていなかったと言うか。親は大学まで出したので、どこか一流企業に就職してもらいたかったみたいですが。大学の卒業前にオーストラリアに短期留学したんですよ。そうしたら思ったよりも英語ができなくて。帰ってきてからは、英語を勉強しながら、留学資金を貯めるために派遣で働き始めました」

正社員ではないことを前向きにとらえ、海外での短期滞在や留学を繰り返します。

「1回留学すると癖になるんですよね。派遣って、短期雇用なので海外に行きたくなったら契約を終了すればいいので気が楽でした」

英語圏での留学は、語学力の向上に役立ったと言います。

「イギリス、オーストラリアと1年ずつ滞在していました。オーストラリアはワーホリで行っていたので、免税店で働いたり日本人観光客向けのツアーガイドの手伝いなどしていました」

しかし、帰国後、就職活動を行なったり、翻訳の仕事などを探しますがうまくいかなかったと言います。

「TOEICのスコアは無駄に高くて800くらいあるのですが、留学で自信をつけて帰ってきても、仕事には結びつかなかったんですよね」

紀子さんは複数の派遣会社に、英語力が生かせる仕事を希望し登録します。

「時給が高いので、英語が使える営業事務として働き始めました」

留学経験も豊富でTOEIC高スコアの紀子さん。

派遣先で予想しなかった英語トラブルに遭遇します。

ワーホリで滞在していたオーストラリアでは、シュノーケリングを体験したり語学勉強というよりは、長期リゾートみたいで楽しかったそう。

順調に見えた派遣生活でしたが、雇止めに遭ってしまった原因とは!?

その2に続きます