女性の体は男性に比べて脂肪が多いのが特徴です。ハリのあるお肌も、美しいボディラインも脂肪なしでは成立しません。
「しかし、脂肪は多すぎると、ホルモンバランスを崩すきっかけになってしまうことも。PMSや生理痛、妊活の効果が出ないという悩みも脂肪のつきすぎが原因のひとつといわれています」と警鐘を鳴らすのは、杉山産婦人科理事長・杉山力一先生です。
自粛生活で体型が気になる人が増えているこの時期。ここでは、脂肪と、女性の体の機能との関係性や、おうちでできる簡単な運動法を教えていただきました。

脂肪の役割を知ったうえで、肥満度をチェック!



脂肪とは、タンパク質・炭水化物と並ぶ三大栄養素のひとつで、体内でさまざまな働きを担っています。
エネルギーを貯める、女性ホルモンを正常に活動させる、体温を調節するなど、体にとって重要な役割を持ち、皮下や内臓周辺に貯蔵されています。貯蔵された脂肪は、必要なときに消費され、体の機能を維持しています。

●脂肪は女性の体の機能に影響する

脂肪は体に必要不可欠ですが、増えすぎると消費量より貯蔵量が上回り、体脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)としてどんどん蓄積されていきます。そして体脂肪が増えすぎると、太りすぎや肥満の状態になります。

じつは、皮下脂肪からは女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」が分泌されています。女性ホルモンには。このエストロゲンと、もうひとつ「プロゲステロン」というホルモンがあり、この2つのバランスが生理周期や妊娠・出産に大きく関係しています。

脂肪が多すぎると、エストロゲンが体の中で増えすぎ、ホルモンのバランスが乱れることになってしまいます。これにより、卵巣の機能に影響が出てしまい、生理不順やPMS、妊娠確率の低下などが起こると考えられています。

●私は大丈夫?肥満チェック法


BMIと体脂肪率で隠れ肥満をチェック!(※写真はイメージです。以下同じ)

脂肪が増えすぎた、いわゆる「肥満」という状態に当てはまるか、チェックしてみましょう。

肥満は、体脂肪が過剰に蓄積した状態です。体重が多いだけでは肥満とは言えません。
肥満の判定にはBMI(Body Mass Index)が使われます。

BMIは、[体重(kg)]÷[身長(m)2]で計算できます。このBMIが25以上の場合、肥満と定義されます。

しかし、最近若い女性に増えているのが、BMIは標準でも筋肉や骨と比べて脂肪が多い、「隠れ肥満」です。この隠れ肥満がどうかは、体脂肪率を測ることでチェックできます。体重計の機能で体脂肪が測れる場合は、ぜひ測定して結果を確認してみましょう。

健康的とされる体脂肪率の目安は、女性の場合は20〜29%で、それ以上が肥満ということになります。判定結果は機種によって推定方法や判定基準が異なる場合がありますので、目安として定期的にチェックし、変動を記録してみるのがおすすめです。

脂肪を減らすには運動がマスト!



肥満傾向や隠れ肥満が見つかった方は、この機会にぜひ運動を始めましょう。しかし、運動する時間がない、体力に自信がないという方は少なくないでしょう。そこでおすすめしたいのが、おうちでできる簡単運動法です。

体脂肪を燃やすには「有酸素運動」が、基礎代謝を高めるには「筋肉を増やす運動」が効果的と言われています。これらの運動を、室内で簡単にできる方法を見てみましょう。

●走るだけじゃない!有酸素運動

有酸素運動は、比較的負荷の小さい運動のことで、筋肉を動かすエネルギーとして酸素と一緒に血糖や脂肪が消費されます。ウォーキングやジョギングがよく知られている方法ですね。室内でできる有酸素運動としておすすめなのが、踏み台昇降です。


階段がある場合は階段で、ない場合は専用の踏み台を購入するか、雑誌などをガムテープてひとまとめにしたものを台として準備します。階段や手づくりの台を作る場合は、滑り止めシートをはると滑りにくくなります。

踏み台昇降は、下記の(1)と(2)を繰り返し行います。背筋を伸ばして猫背にならないように注意しましょう。

(1) 右足で昇る→左足も昇る→右足で降りる→左足も降りる
(2) 左足で昇る→右足も昇る→左足で降りる→右足も降りる

最初は無理をせず数分間行い、徐々に運動時間を延ばしていきましょう。20分続けることで、脂肪がよく燃焼されるようになりますよ。

●筋肉を増やすには筋トレ!

筋肉を増やすには、筋肉を鍛える必要があります。ダンベルの上げ下ろしや腹筋・背筋をひたすら行うようなストイックな筋トレは長続きしにくいため、家事をしながらできるスクワットがおすすめです。


スクワットの方法は下記の通りになります。

(1) 肩幅より少し広めに足を広げて立ち、つま先は30度くらい開く

(2) 膝がつま先より前に出ないようにし、膝が足の人差し指の方向に向くようにしながら、おしりを後ろに引くようにして体を沈める

(3) ゆっくり立ち上がる

以上の動作を深呼吸するペースで5〜6回繰り返し、息は止めずに深くゆっくり呼吸することを意識しながら行いましょう。

スクワットは、料理中や洗濯ものを畳むとき、食器を洗うときなどにもできるので、忙しい日も時間を取られることなく筋トレができます。

運動以外の生活習慣の改善も大切!

日頃から運動することで、脂肪が燃焼されやすくなり、基礎代謝も上がって脂肪が過剰に溜まりにくくなります。これにより、生理痛やPMSの改善、妊娠確率のアップなどの効果も期待できます。

ぜひこの機会に生活習慣を見直し、体質を改善していきましょう。

●教えてくれた人
【杉山力一先生】


杉山産婦人科理事長。日本における生み分け法の権威である杉山四郎医師の孫。東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。監修する女性向けアプリ「eggs LAB(エッグスラブ)」
では、高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした情報を発信中。