毎年、猛暑の時期には疲れが増大しますが、オフィスや街で周囲の人の話を聞くと、男性より女性のほうが夏バテを訴える人が多いように思います。

そこで、女性の不調に詳しい、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に夏に女性に多い不調について、詳しいお話を聞いてみました。

めまい、貧血、むくみ、冷え、イライラ

はじめに正木医師は、女性に多い夏バテの症状についてこう説明します。

「全身の疲労感、体がだるい、食欲不振、足がつるのは男女に共通する症状ですが、特に女性に見られるのは、めまいや立ちくらみ、貧血、手足のむくみ、頭が重い、胃が重い、下痢をする、肩こりや腰痛がある、足もとが冷える、また、体だけではなく、精神的な不調のイライラする、ウツウツすることも増えます。

これらは一年を通して女性に多い症状ですが、夏は次の理由で特に顕著だと言えます。少しでも早く改善するために、自分はどの不調が表れやすいかに気づき、対策をとりましょう」

どの症状にも思い当たります。その理由や原因について、正木医師は次のことを挙げます。

(1)自律神経のバランスが乱れている

体温や汗、脈拍、心拍、血圧、消化など、生きるために必要な活動をコントロールしているのは、自律神経です。自律神経は、体温が上がり過ぎるのを防ぐために汗を出し、下げるように調節しています。気温が高い夏はほかの季節よりその調節に多くのエネルギーが必要になるため、特に暑い日はより疲れが出やすくなります。

つまり、猛暑という過酷な環境になじもうとして、自律神経が頑張り過ぎて疲れている状態です。自律神経の回復には良質な睡眠が必要になります。ですが、夏は熱帯夜が続いて寝苦しく、睡眠も不足になりがちです。夏バテからの回復に時間がかかるのは、ほかの季節より良質な睡眠がとりにくいからとも言えます。

(2)体液が不足して、「隠れ脱水」が起こっている

夏は(1)の自律神経による体温調節の働きで発汗が多量になり、食欲がないため栄養素もとりにくくなります。すると、「体液」が不足します。体液は水分とミネラル、タンパク質などからなりますが、水分とミネラルの一種のナトリウム(塩)やカルシウム、鉄が不足した場合、だるさや足のつり、吐き気などさまざまな不調が表れます。これが脱水症状です。

「熱中症」はこの脱水症状が原因のひとつとなって起こりますが、脱水症状まではいかなくても、それに近い状態にあること、また本人がそれに気づいていない状態を「隠れ脱水」と呼ぶことがあります。

のどがやたらと渇く、足のむくみがひどい、めまいがする、頭がぼーっとして考えごとがしにくいなどの症状があれば、「隠れ脱水かも」と自覚して、すぐにスポーツドリンクを飲む、涼しいところで休息をする、保冷剤などを利用して体温を下げるなど、注意をしてください。

「隠れ脱水」は熱中症同様に、炎天下だけで起こるのではなく、実は屋内でクーラーをつけずに過ごした場合や、睡眠中に起こりやすいことが分かっています。隠れ脱水は熱中症のサインでもあるということを覚えておきましょう。

(3)内臓の冷え

冷たいドリンクや食べものは、口にしたとたんに味覚を通じて脳に伝わり、血管が収縮して血流が低下します。やがて、消化機能、代謝、免疫力とも低下して夏バテの悪循環が起こります。

自律神経を休ませ、水分補給をして冷えを避ける

では夏バテを改善するにはどうすればいいのでしょうか。

「ご紹介した原因の(1)〜(3)をできるだけ起こさないようにしましょう。日々の習慣を見直してみてください」と、正木医師は具体的に次の方法を紹介します。

□気温が高い場所で長時間活動することを避ける。

□クーラーで体を冷やし過ぎず、夏用のカーデガンなどで冷気から体を守る。

□睡眠時は、薄い布団やタオルケットをかぶってクーラーを28度ぐらいに設定してつけておく。できるだけ寝苦しくない状態を保つ。

□スポーツドリンクのカロリーが低いタイプを飲み、水分とミネラル分を補う。のどの渇きを覚える前に飲む、寝る前に水を飲むなど、常に水分をこまめにとるようにする。

□冷たいドリンクは避けて、常温やぬるい温度にして飲む。

□消化によくて温かい食事をとる。

□ぬるめのお風呂につかる。

□仕事もレジャーも無理をしないで休息する。

□できるだけ夜更かしせず、規則正しい生活を心がける。

さらに正木医師は、夏バテがひどいと思ったときの対処についてこうアドバイスを加えます。

「免疫力が落ちるので、夏風邪をひくことがあります。冬の風邪とは違ってせきやタンはあまり出ず、のどの痛みが強い、微熱がだらだら続くといったことがあります。また、胃痛がひどい場合や倦怠感が長く続くなどであれば、何かの病気の可能性もあります。

こういった体のサインを見逃さず、いつもと違うと感じたときには、早めにかかりつけ医など医療機関を受診してください」

まずは、女性に多いという夏バテの症状が自分に当てはまらないかを自問自答しましょう。そして毎年のことだからとあきらめず、症状や原因にひとつでも思い当たれば、生活習慣を見直す機会だと考えてこれらの方法を実践したいものです。

(取材・文  藤井空/ユンブル)