ウートピ・ラインラボ所長の浮田がお正月にぴったりのスパークリングワインをお勧めする特別企画。最終回は、イタリアを代表する泡、フランチャコルタから爽やかで溌剌とした気分にしてくれるアイテムをご紹介しましょう。

何でも話せる親友と開けたい一本

シリーズ最後の一本は、サン・クリストーフォロ・フランチャコルタ・ブリュット。

シュポッと栓を抜いた直後はマンゴー、ココナッツミルクといったトロピカルな香りに淡いライムのトーンが加わって清涼感を与えます。軽快でありながらミネラル感もしっかりあって、それが心地よいテンションを保っているようです。極めて繊細な泡のタッチが口腔をくすぐり、爽やかな柑橘の風味が弾けます。後口はサッパリとして清明。新しい年の初め、何でも包み隠さずに話せる仲間との乾杯に、これほど似合うワインはありません。

ミラノのファッションウィークを彩るワイン

少しフランチャコルタについて説明しましょう。

フランチャコルタとは、北イタリア、ロンバルディア州のフランチャコルタ地区でシャンパーニュと同じ製法(泡を生み出す二次発酵を瓶内で行う)で造られる発泡性ワインのこと。ライバルであるシャンパーニュと比べて温暖*であることから、陽光を思わせる明るいキャラクターがあり、より果実味が勝って、親しみやすいのが特徴です。
*シャンパーニュと比べて温暖:北緯50度に位置するシャンパーニュ地方に対し、フランチャコルタは北緯45度くらい。

シャンパーニュが300年以上の歴史を誇るのに対し、フランチャコルタのそれはわずか50年余り。しかし、ミラノというおしゃれな大都市が近いこともあって、「イタリアのモードな高級発泡ワイン」フランチャコルタは短期間のうちに一気にスターダムにのし上がりました。

春と秋にミラノで繰り広げられるファッションウィークの晴れ舞台を彩るのはもちろんフランチャコルタ。ほうらね、このエピソードだけでもみんなの気分がアガるでしょ?

温かな家族愛に包まれたワイナリー

サン・クリストーフォロはブルーノ・ドッティ氏が家族とともに切り盛りする小さなワイナリー。ドッティ氏は収穫したブドウの搾汁率をうんと低くすることで、雑味のないクリアでクリスプなワインに仕立ています。

キリリと引き締まっていながらも微笑のような果実味が絶えない飲み口は批評家を唸らせ、いくつかのアイテムが各種コンテストで最高評価を受けるなど、今まさに注目の存在。夫人のクラウディアさんや娘のチェレステさんも何度か来日したことがあり、みんな日本が大好きです。

所長も一度、彼らのワイナリーを訪ねたことがありますが、親戚のような親密さで迎えてくれました。そして所長がテイスティングを始めると、家族3人で、まるで授業参観の日の親のように、おどおどとして試飲の成り行きを見守っているのです。ワインは造り手を写すもの。こんな真摯で心温かい人たちの造るワインが不味かろうはずがありません。

価格:5500円(税別)
問い合わせ先:メローネ Tel 06・6360・9508

写真:片岡弘道

(浮田泰幸)