4歳〜9歳で将来が決まる!? 花まる学習会の箕浦健治さんに聞いた「生きる基礎力」とは
子どもの将来を考えると、しつけに学習に、と親の悩みは尽きません。
褒めなくても大丈夫! 子どもの「自己肯定感」を高める簡単な方法
成長するたびに様々な問題が湧いてきますが、10年後、20年後には社会人として自立した人間になっていてほしいもの。
その自立した大人になるために必要な「生きる基礎力」とは何でしょうか?
人生に必要な「生きる力」の育み方についてまとめた『4歳〜9歳で生きる基礎力が決まる! 花まる学習会式 1人でできる子の育て方』。その著者である花まる学習会の箕浦健治さんに、いま親がすべきことについて伺いました。
幼児期から違いが出る! 生き抜くための「基礎力」
――ずばり、「生きる基礎力」とはなんでしょうか。
箕浦:基礎力というとちょっと分かりにくいかもしれませんが、「力強く生きていくためのベース」とも考えていただければと思います。大人になって社会で生き抜いていくためには、「たくましさ」と「思いやり」が必要不可欠です。
「たくましさ」というのは、その子にとって「失敗」という感覚がないこと。
どんなときでも楽しみ、新しいことにも喜びを見出す力、そこにつながる行動力は、いまの世の中だからこそ求められているものです。「逆境こそ楽しむ」ことができる子は、多少の不安があっても「まずはやってみよう!」と飛び込むことができます。
「思いやり」というのは自己中心的でないこと、つまり「他者性」があるということです。相手のことを思い、相手の気持ちを想像しながら行動し、他人と協力することを学んでいく。社会の多様性に対応していくためにも、なくてはならないものです。
――幼児期でも、すでに違いが出ているのでしょうか。
箕浦:そうですね。子どもの世界で慕われるのは、プラス思考の子が多いんです。
たとえば、キャンプで火起こしをしていたときにマッチを使いきってしまった班がありました。普通は「もうなくなっちゃった……最悪だ」となるところを、その班のある1人の子が「俺たちの班って、一番マッチを擦る経験をしたよね」と言ったんです。
そういうことを聞くと、周りの空気も「確かに!ラッキーだね」と変わる。そういう子の周りはみんな幸せになるんです。
いくらテストの点数がとれても、周りを幸せにできない人は社会に出たとき、仲間をつくることに苦労するでしょう。また、テストの点数が良いこと、頭が良いことが大事だと思っている子にとっては、「仲間をつくることこそが大切なんだ……」と思い知るまでにも、大きな壁があるのではないかと思います。
親の考え方を変えれば、子どもも変わる
箕浦:プラス思考の子の親は、やっぱりプラス思考の方が多いんです。
あるときのキャンプは珍しく3日間すごい雨で、毎日屋内で様々なことをして過ごしました。
普通だったら「雨でいつも通りのプログラムができずに残念でした」という方が多いのですが、それをあるご両親に報告すると「これはうちの子たちしか経験していないんですよね。限られた条件の中でも工夫して遊ぶ貴重な経験ができて最高ですね」とおっしゃり、子どもとニコニコで帰っていきました。
プラス思考は伝染するもの、そういう環境が子どもを育てていくのだなと感じました。
――マイナス思考の子どもでも、プラスに変われますか?
箕浦:変わります。ただ、親が変わらないと、子どもも変わらない。
これは厳しい話ですが、現実です。
同じ経験をしているのに、親の考え方によって、子どもの受け取り方は全然違う。雨が降ってもそれすら楽しめるか、外で遊べなくて損をしたと思うか、です。
なかなか難しいけれど、変えようと思ったら変えられる。それをやり始めたら、身の回りにあるすべての事象がプラスに変わりますよ。それによって、心にゆとりができるようになります。
本でも伝えていますが、家庭が大事というのはそういうことで、子どもにとって家庭の影響は大きいのです。
将来を決める、4歳〜9歳までの関わり方
――親として、子どもに「こうなってほしい」というところが多々ありますが…
箕浦:子どもの成長や気持ちは、目に見えるものだけではありません。「確実にこの子は成長してるんだ」と親が信じてあげることが必要です。
9歳までの子どもはオタマジャクシであり、カエルのように振る舞うことはできません。(※花まる学習会では、子どもたちが成長していく過程で特徴が大きく変わる様子を、オタマジャクシとカエルに例えて伝えています)
しかし、この4歳から9歳までのオタマジャクシの頃こそ、様々なことに挑戦し、生きる基礎力が育まれる。
ケンカやいやなことをはねのける経験もその一つです。
この時期に小さなケンカをしてたくさん仲直りをする経験をしておけば、大きくなってからも折り合いをつけることができるのです。
この時期、少しいやなことがあったときに、「やめてよ!」と言うことができたら、大人になってからもいやなことをはねのけ、イジメに発展させない術を身につけることができるのです。
だからこそ、この時期の周りの大人の対応や言葉はとても重要で、特にお父さんお母さんとの関わりが大切です。
私自身の経験ですが、長期休みも土日も花まる学習会の子どもたちを野外体験に連れて行っている関係上、休日は家にいないということがずっと続いていました。その分、休みがとれる日には、近場の公園で娘たちと必ず遊んでいましたが、父親らしいことができていないのではないかという不安がありました。
子どもが中学生になったとき、父の日に手紙をくれました。そこには、「お父さんは、どんなに忙しいときも、たまにしかない休みは必ず遊んでくれたよね。私がいじめられたときも、仕事を休んでよりそってくれてありがとう」という感謝の言葉があったのです。
これは、4歳から9歳のときにどれだけ親が子どもに関われたか、ということへのひとつの結果だったと考えています。目に見えない部分でも、親への感謝、価値観といったものは幼児期の親との関わりのなかで子どもに伝わっているものが確かにあるのです。
子どもの自己肯定感を奪ってしまう叱り方
――子どもの成長を見守りたいとは思いながらも、つい叱ってしまう、そんなときはどうしたらいいものでしょうか。
箕浦:叱り方はとても重要ですよ。叱り方を間違えると、子どもの自己肯定感を奪ってしまいます。
叱るべきときにはしかっていい。命に関わることや、他人に迷惑をかけることについては、しっかり伝えてあげるべきです。
ただ、ダメなところばかり叱るのはNGです。
失敗しようと思ってやっている子はいないんですよ。お手伝いをして子どもが食器を割ってしまったとき、「あなたに頼まなければよかった」と言ってしまう。そんなに強く言うつもりがなくても、つい感情が先走ってしまうんですよね。
でも、そういう一言が、子どもの自己肯定感を奪うのです。
私は「どんなことでもプラスで終わってください」と言っています。
厳しいことを言ってもいい。でも、最後は必ず「よかったね」で終わらせてあげてください。
テストの点にしても50点だとしたら、まずできた50点をほめる。子どもだって、できたら100点をとりたかったはずなんです。その気持ちをどう汲み取って、次につなげてあげるか。
「頑張ったね。残り50点をどうすればいいか、一緒に考えてみよう。今回、間違いに気づけてよかったね」と。
その「よかったね」の一言が、子どもにとって安心と「次は頑張ろう」と前向きな気持ちにつながるのです。
――最後が大切なんですね。
泣く子ほど、伸びる!?
箕浦:あと、勝負事でわざと負けないことも大切です。手加減はなし。親が本気になればなるほど、子どもも本気になる。大人の本気を見せることが大事。
配慮の中では子どもは育たないというのが私の信念です。子どもの世界に、「配慮はない」のです。だから、大人も本気で、そして全力でやるべきだと考えています。
負けて泣くということは、決してマイナスではありません。私たちはあと伸びするバロメーターとして見ています。“将棋で泣く”、“サッカーで泣く”、いいことじゃないですか。
逆に「負けちゃったけどいいや」みたいな子の方が心配です。
勉強ができなくて泣く子もいますが、その一問にそれだけ命をかけているということ。どんなに難しい問題が出ても、答えは聞きたがらず、自分でなんとか解きたいと思う。その気持ちが、社会に出て困難に直面しても、「自分でなんとかしたい」と思って試行錯誤しながらも自分で解決策を見つけることができる力につながっていきます。
そういう子はきっと社会で活躍できる大人へと成長していけるでしょう。
――悔し泣きはその先の成長のバロメーターというわけですね。
箕浦:そうです。そして、親が答えをすぐに言わないことも大切です。
子どもの「困った」には共感だけしてほしい。親が答えを先に言ってしまうと、「考える」ことが子どもの中で抜け落ちてしまいます。
社会に出たら答えを教えてくれる人もいないし、そもそも「これ」と言える答えなんてありません。だからこそ、幼児期でも「どうしたらいいのか」を自分で考えることがとても重要なのです。
お母さんも、できることからでいい
――いざ子どもと対峙すると、なかなか実行できないのですが…
箕浦:できないこともたくさんありますよね。だからこそ、できることだけでいいと思います。
できるだけ思いやりのある言葉をかける。当たり前のことでも「ありがとう」「助かるよ」「えらいね」って言葉にすることです。
ちゃんと相手を思いやる会話ができている家庭であれば子どもは大丈夫なんです。
お母さんは充電器みたいなもので、いやなことがあって帰ってきても、子どもはおうちで、お母さんのそばで安心できる。「自分がここにいていい」「愛されているんだ」という安心感があれば、壁にぶつかっても頑張れるんです。
何かいやなことがあったのだろうなというときも、「お母さんにいってごらん!」と根掘り葉掘り聞かずに、「もしかして、○○だったんじゃない?」その一言でいいんです。
子どもは、自分を心配してくれたこと、自分のことを真剣に考えてくれたことが嬉しい。そこに親からの愛を感じるのです。そして、その愛がその子の自己肯定感につながります。
逆に、それがなければ、子どもは居場所がなくなります。
いつも通りの家庭が大事なんです。特別何かをするわけではなく、どんなときでも「おかえり」「ごはんできてるよ」がふつうに言える家庭であってほしいと思います。
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家庭でできることのひとつに、子どもの「自己肯定感」を育むという役割があります。
育児で余裕がなくなると、どうしても頭ごなしに怒ってしまいがちですが、少し心にゆとりをもって“思いやりのある言葉”をかけていきたいもの。お母さんは子どもにとっての充電器、もしかしたらそれだけでいいのかもしれませんね。
育児は決して平たんな道ではありません。そんなときこそ、プラス思考を身につけ、親子で一緒に乗り越えていけるよう、心がけてみましょう。