臨床内科専門医に聞く。春、眠くなるのはなぜ?「副交感神経が優位に働く」

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春の陽気がただよい、暖かくなるにつれて日中に眠気を感じることが増えました。季節と睡眠、関係はあるのでしょうか。臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)院長の正木初美医師にお尋ねしました。

■春は副交感神経が優位に働いてリラックスモードになる

春になると眠くなる原因について、正木医師はこう説明します。
「体には、心臓の動き、血圧、食べ物の消化、体温などを調節する自律神経があります。この自律神経には、活動中や緊張度が高いときに働く交感神経と、休息モードを担う副交感神経とがあり、両者がバランスをとりながら働いています。

冬は、寒さの刺激で交感神経が刺激されるため、心身が知らず知らずのうちに活動的になっていて、休みにくい状況が続きます。暖かくなるにつれてそれが一転、副交感神経が優位になって心身がリラックスした状態となり、睡眠が促される傾向にあります」

「自律神経は自分でコントロールすることが出来ない」と話す正木医師は、「ホルモンバランスの変化も影響します」と話を続けます。
「成長ホルモン、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンは、日中の活動モードから夜の睡眠モードへと切り替える働きがあります。このメラトニンの分泌量は、冬から夏にかけて、ピークの時間帯が早くなります。よって、暖かくなるにつれて眠りにつきやすくなると考えられます」

体温も影響しているとか。
「体温は、夜になると徐々に低下して眠りを誘い、明け方に上昇し始めて目覚めを引き起こすことが分かっています。

冬はほかの季節に比べて熱の放出量が少ないため、体の内部の温度は低下しづらく、眠りに入りにくくなります。一方、春になると気温や室温とともに体温も上昇し、皮ふから熱を放散して体温が下がりやすくなるので、寝つきがよくなります」(正木医師)

■20分程度の短時間の昼寝でリフレッシュを

不意の眠気を改善する方法はあるのでしょうか。正木医師は、
「春の眠気は、季節の変化に合わせた体の働きなので、『眠気に負けてはダメだ!』と過敏になるのではなく、可能なら、眠いときには15〜20分程度の仮眠をとりましょう。脳が緊張した状態から一時的に解き放たれ、心身ともにリフレッシュできます」
と、短時間の昼寝を勧めます。

また、目覚めの時間の過ごし方について、
「起きてすぐに明るい光を浴びると、体内時計がリセットされてメラトニンの分泌が止まります。目覚めてから約14〜16時間経過すると、メラトニンが再び脳から分泌されて、自然と眠りを促す、というリズムが、体内には備わっています。

起床後は、まずカーテンを開けて太陽の光を取り入れる、照明をつけるなどしましょう」(正木医師)

続けて、日々の習慣への注意も。
「自律神経の働きが安定していると、堪え難い眠気、不自然な居眠りに襲われるなどということはないでしょう。そのためには、規則正しい食事や睡眠、適度な運動を続けてください。

ただし、十分睡眠をとっているはずなのに、日中強い眠気がある、居眠りを繰り返してしまう、異様に疲れやすい、休日に12時間以上も眠ってしまう方は、過眠症や睡眠時無呼吸症候群など、ほかの病気が隠れていることもあります。

仕事に支障をきたす、日中の強い眠気や居眠りが続く場合は、医師に相談しましょう」(正木医師)

春の眠気は、自律神経やホルモンのリズムが季節とともに変化して起こる自然な現象だということが分かりました。規則正しい生活習慣を意識したいものです。

(岩田なつき/ユンブル)

取材協力・監修
正木初美氏。日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、大阪府女医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。
正木クリニック:大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9
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