タイ映画界から新たな鬼才! 斬新発想で歴史を斬る、映画『ユースフル・ゴースト』
映画ライター杉谷伸子と謎の美女B子によるお気楽映画評論ユニット・お杉とB子が今注目の映画について語る連載「お杉とB子のMOVIE TALK」。今回のお題は、7月10日から全国公開の映画『ユースフル・ゴースト』です。
妻の霊が宿った掃除機のお役目は?
お杉
亡くなった愛妻が掃除機になって帰ってくる!? ぶっ飛んだ設定からてっきりハートフルコメディだと思っていたら、ときに哲学的な趣すら漂わせながら、タイの歴史まで振り返る。めっちゃ野心的な作品で衝撃を受けまくりよ。
B子
主人公は呼吸器疾患で他界した妻ナットと、彼女を失って悲しみに暮れる工場の御曹司マーチ。ナットの魂が掃除機に宿る形で再会し、愛を確かめ合うの。マーチの家族は最初幽霊に驚くけれど、工場に巣食う邪悪な霊と闘うためにナットの助けが必要になり、存在を受け入れる。
お杉
ユースフルな存在であることが大切なわけね。確かに、受け入れられる前のナットの幽霊とマーチが狂おしく求め合う姿は、はた目には異様でしかないもの。
B子
マーチの実家を助けたナットはあることで議員と親しくなり、彼に取り憑いた幽霊とも闘うことになる。この幽霊には議員に取り憑く理由があって、タイの民主化運動の歴史に思いを馳せちゃったよ。
お杉
どんだけ幽霊がおるんじゃ! ってツッコみたくなるけど、現実世界も見えてないだけで霊だらけよ。それだけ、世界には悲しみや無念が溢れているということなの。ああ、とってもアジアっぽい。語り口も面白いよね。ゲイの青年が、ある人物からナットとマーチの物語を聞かされるっていうスタイルなの。

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B子
マーチの兄もゲイ設定だし、BL風味も入っている。
お杉
ええっ? BLかあ?
B子
ボーイじゃないけどね。私が気に入ったのは、誰かが覚えている限りは幽霊として存在し続けるという設定。ナットは果たして?
お杉
テイストどころか展開も、最後の最後まで、こちらの予想を裏切り続ける。ブンバンチャーチョーク監督って、とんでもない鬼才!?
information
『ユースフル・ゴースト』監督・脚本/ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク
出演/ダビカ・ホーン、ウィットサルート・ヒンマラートほか
7月10日より新宿武蔵野館ほか全国公開。
お杉とB子正統派ホラー『ブリング・ハー・バック』(7月10日公開)。映画初出演で難役挑戦のジョナ・レン・フィリップスに釘付け。(お杉)
実際に起きた事件を描いた犯罪ドラマ『デッドマンズ・ワイヤー』(7月17日公開)。誰も幸せにしない行動が悲しい。(B子)
イラスト・いいあい
anan 2503号(2026年7月8日発売)より


