今週のテーマは「帰り際に付き合ってもいない女から急にハグをしてきた。この意味は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:付き合ってないのに、帰り際「楽しかった♡」と言って女性からハグをしてきた。この意味は?




秀明との初デートで訪れた麻布十番のバーを出た後、私は思わず秀明に抱きついた。

「秀明くん、今日は本当に楽しかった♡」

秀明もそっと私の肩に手を回してきたので、私はもう一度彼を強く抱きしめる。

「ありがとう。またね」

ちょうどそのタイミングで空車のタクシーが通ったので、私はタクシーを止めてその場を立ち去った。

振り返ると、秀明はまだその場に突っ立っていた。


A1:顔がタイプだったし、一緒にいて楽しかったから


秀明とは、知り合いの誕生日会で出会った。その日、私は別の約束があり、誕生日会には23時ごろに顔を出した。

男女15人くらいいたが、パラパラと帰り始める人もいるなかで、顔も体型も私のタイプな人を見つける。それが秀明だった。

女友達と2人で参加したのだけれど、ちょうど彼も男性2人でいる。「これはチャンス」と思い、友達と2人で秀明の近くに行き、自然と4人で話すことになった。




「秀明くん、お家恵比寿なの?徒歩で帰れるじゃん」
「亜美さんは?」
「私も恵比寿だよ!…もう1軒行っちゃう?」
「いいですね!行きましょう」

私たちはすぐに打ち解け、4人でバーへと移動することになった。

そこで、秀明が2つ年下だと判明する。

「秀明くん、今31歳なの?」
「そうです!聞いても良いなら亜美さんは…?」

パーソナルトレーニングのジムを自分で経営しながら、他の事業もしているという。

ゴリゴリではないけれど、Tシャツから見え隠れしている腕の筋肉が美しい。「ジムを経営している」と聞いて、「どうりでこの体型なわけだ…」と、ひとりで納得する。

秀明は、カッコイイのに意外にも腰が低くてそのギャップが好印象だった。




「私が33歳だから…って、年齢の話やめない?(笑)」
「ですよね」
「敬語もやめようよ。ちょっと距離遠く感じる」
「わかった、やめる」

こうして秀明が敬語じゃなくなり、私たちは距離が近くなった。そして秀明は、やたらと私のことを褒めてくれる。

「亜美ちゃんってさ、すごい華やかだよね」
「そう?今日ちょっとアイメイク濃いからかな」
「そういうことじゃなくて。亜美ちゃん、絶対にモテるでしょ?」

モテるかモテないかでいうと、前者かもしれない。でもそれを自慢するなんてダサいことはしない。それより、秀明のほうが絶対に人気がありそうだ。

「どうだろうね〜。それを言うなら秀明くんこそ。カッコイイけど話しやすいし、すごくモテそう」

気がつけば夜もふけていき、誕生日会があったことを忘れるくらい盛り上がっていた。

そして翌日、秀明は、すぐにデートに誘ってきた。

― 秀明:昨日はありがとう!楽しかったね。良ければ、今度は二人でご飯行かない?

もちろん断る理由もないし、私はすぐに「行きたい」と返信を打つ。こうして、私たちの初デートはトントン拍子に決まった。


A2:特に深い意味はないけれど、可能性はある


友達を含めて会っているときは、楽しかったけど、二人で食事へ行ってみるとつまらなかった…ということもある。

だから初デートに向かう道中、「今日のデート、楽しければいいな」と思っていた。

秀明が予約してくれたのは、麻布十番にある人気焼き鳥店『瀬尾』。




私の願いがかなったのか、秀明との食事はとても楽しかった。

「亜美ちゃん、何飲む?」
「私はとりあえずビールにして、その後ワインにしようかな。秀明くんは?」
「まったく同じです」
「本当に?無理しなくてもいいけど、一緒なのはちょっと嬉しいな」

食の趣味が同じというのは、付き合う上で大事だと思う。秀明とは、その点相性が良さそうなので、私は安堵すると同時に嬉しくなる。

乾杯を終えたあと、私は気になっていることをズバッと聞いてみた。

「秀明くん、今付き合ってる人はいないの?」

すると、首を大きく横に振って否定してきてくれた秀明。その反応を見る限り、今は本当にフリーのようだ。

「今!?いないよ。亜美ちゃんは?」
「私もいない。この前、彼氏と別れたばかりなんだよね」
「そうなの?いつ別れたの?」
「2週間前、かな」
「めちゃ最近じゃん」

実は最近になって、ようやく別れられた彼氏がいる。ズルズルと続いていたけれど、心を鬼にしてようやく断ち切れた。

そして、秀明と話しながら、彼が頼んでくれたワインと共に「地鶏の炭火焼き」に舌鼓を打っていると、どんどん楽しくなってきた。




「亜美ちゃん出身は?」
「私は東京だよ。秀明くんは?」

食事も中盤に差し掛かるころ、聞き上手な秀明のおかげで、私は自分のことをたくさん話していた。

「僕は千葉。ずっと東京なの?」
「小さい頃、少しだけ海外にいたけど、それからはずっと東京」
「そうなの!?カッコイイね」
「そんなことないよ〜。いたのは小学校の時だし、全然」

小学校の時、父の仕事の都合でアメリカにいた。でもだいぶ昔のことで、私は生粋の日本人だ。

ただ、海外生活経験のせいなのかどうかはわからないけれど、男女問わず「距離感が近い」とはよく言われる。

「亜美ちゃんって、聞き上手だよね」

特に話を聞くときは、つい体が話している人のほうへと傾きがちだ。

だから気がついた時には、私は秀明とカウンターの下で、膝と膝がぶつかるくらいの距離感になっていた。

「秀明くんのほうこそ。で、最後の彼女とはいつ別れたの?」
「僕は半年くらい前かなぁ」
「なんで別れたの?」
「付き合ってわかったんだけど、結構メンタル弱めだったんだよね…。だから次は、精神が安定している子がいいなと思ってる。亜美ちゃんみたいに」

急に、秀明がギアを上げてきた。

「精神が不安定なのは一緒にいて辛いよね…」
「亜美ちゃんは?どういう人がタイプなの?」
「私は、優しくて一緒にいると楽しい人かな。あと、こうやって美味しい物を食べて、一緒に感動できる人。今日の秀明くんみたいな感じで」

秀明がなんとなく私に好意を持っていることは伝わってきた。

だからお店を出てもう一軒いった後、秀明にもう少し近づきたくなり…そして「可能性はあるよ」という意味も込めて、私はハグをしながらお礼を言った。

「秀明くん、今日は本当に楽しかった♡。ありがとう。またね」

生理的に無理な人とハグはしないし、「またね」と言った言葉に嘘はない。

だがこのハグに、特別深い意味はない。お酒も入っていたし、ハグなんてただの挨拶だから。

もちろん、彼と発展する可能性はあるけれど、今すぐどうこうしたいわけではない。

今はこの感じでいい。この距離感をもう少し保ったまま、相手のことを知っていきたい…。そんな気分だった。

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