今週ニュース番組やワイドショーの話題を独占した「日本大学アメフト部」のタックル問題。この一連の騒動に、部活動という絶対的な上下関係の中で生まれた“パワハラ”の構図を感じた人も多かったのではないでしょうか?力を持つ人間が組織内での優位性を利用し、下の人間を追い詰める。これは部活動だけではなく、職場などさまざまな場所で起こりうることです。

ビジネスパーソンの約7割は何らかのハラスメントを受けた経験あり

「日本労働組合総連合会」では10代から60代の男女871人を対象に「働き方に関するホンネアンケート」を実施。その中で「仕事上でハラスメント(いやがらせ)を受けたことはありますか?」と尋ねたところ、何らかの被害にあったことがある人は608人。割合を計算すると、69.8%が該当することが分かりました。

では、具体的にどんなハラスメントを受けているのでしょうか?気になる結果は次の通りとなっています。

「パタハラ」は、妻の出産や育児をサポートしたい男性社員に対する不当な扱いを意味します。

圧倒的に多いのは「パワハラ」で、871人中437人。被害にあった経験があるのは、ちょうど半分となっています。続いて多いのは「お客様・取引先からの暴言等」(274人)。こちらは同じ組織内の上司などではなく、自分に対して何らかの利益をもたらしてくれる顧客という間柄。自分の優位性を利用して下の人間を追い詰めるという意味では、これもいわゆる「パワハラ」に該当するとも考えられるのはないでしょうか?

そのほか性的嫌がらせをうける「セクハラ」は116人で13.3%、出産や育児をキッカケとした不当な扱いをうける「マタハラ」「パタハラ」は17人で、1.9%となっています。どれもパワハラよりは少数ですが、決して見逃せない数字です。

職場の悩みを「相談しない」人は全体の約2割に

では何らかのハラスメントの被害にあった時など、職場で悩みがある人は誰に相談しているのでしょうか?同調査で調べたところ、以下の結果となっています。

やはり頼りになるのは同じ職場に身を置く「同僚」という結果に。

一番多いのは「同僚」(345人)。続いて「恋人・友人」(293人)、「家族」(251人)、「上司」(228人)と続きますが、圧倒的に少ないのは同調査を行なっている「労働組合」(45人)。労働組合は本来、賃上げなどの目標を達成することを含めた労働環境の改善を目的とする団体です。しかし実際のところ、社員が抱える労働環境の悩みを相談する受け皿としては、あまり機能してないことが分かります。さらにそれよりも深刻なのは、167人が該当する「ない」という回答。割合を計算すると、19.1%が誰も職場の悩みを相談する人がいないことになるのです。

人間なら誰でもつい感情的になることはありますが、明らかに立場の弱い人間が相手だと、ブレーキが利かないのでしょうか。

また同調査では「給料や雇用形態が原因で諦めていること、不安なこと」についても調査。その結果は以下の通りです。

給料や雇用形態が原因で諦めていること、不安なこと

1位 自分の老後……341人(39.1%)

2位 クビ切り・雇止め……214人(24.5%)

3位 結婚……191人(21.9%)

4位 医療・介護……148人(16.9%)

5位 不安はない・給料に満足……145人(16.6%)

6位 育児……124人(14.2%)

同調査の対象となった871人のうち、全体の63%が「正社員・正職員」であり、79%が30代以下の若い世代となっています。にもかかわらず、一番の不安は「老後」。つまり正社員であっても今の若い世代は、老後までまかなえる安定した終身雇用を信頼していない傾向にあるようです。それでいて上司などからのパワハラに苦しめられたら、誰だって嫌になるのは当たり前。やはり、日本は働き方改革待ったなしといえそうです。

【調査概要】
調査主体…日本労働組合総連合会
有効回答数…871名
データ集計期間…2018年4月28日〜4月29日
男女比…男性:566人(65%)、女性:305人(35%)
年齢…10代:91人(11%)、20代:364人(42%)、30代:226人(26%)、40代:124人(14%)50代:47人(14%)、60代(1%)