眺めが良く、小上がり風の畳敷きスペースもある10Fラウンジ

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「ハァイ! 元気?」「もうご飯食べた?」。友達同士のような挨拶が、スタッフとゲストの間で行き交う。そんなシーンを目にしなければ、カジュアルな”普通のホテル”にも見える異色のゲストハウス「THE STAY SAPPORO」。2015年4月にオープンし、収容人数は最大160人。ゲストハウスとしては北海道最大級、札幌市内では最大規模だ。

地下1階・地上10階のビルを改装し、立体駐車場を併設

10階建てのオフィスビルを改装した館内には、共用シャワールームとトイレはもちろん、コインランドリーや自炊キッチン、有料バスルーム、貸し会議室などがそろい、ゲストハウスには珍しく立体駐車場まで併設されている。さらにセキュリティに配慮し、宿泊フロアには暗証番号で解錠するロックが設けられている上、すすきのから徒歩10分以内という立地も魅力だ。

しかし、利用客に愛される理由は設備やアクセスの良さよりも、フレンドリーな接客のよう。旅行客の口コミサイトでも「スタッフが気さくで親切」「スタッフのいい感じで放っておいてくれる距離感が居心地いい」と評価が高い。

マネージャーの石山皓大さんによると、接客は基本的に「ゆるーい友達感覚のフランクなお付き合い」だそう。「うちは宿泊予約サイトで知って来てくれるゲストが多いんですが、個人の旅行ブログで『スタッフがよかった』と書いてあるのを見て、興味を持ってくれた人もいます」と石山さんは笑顔で語る。

ゲストがオフタイムのスタッフと一緒に観光や食事に出かけ、帰国後も友達付き合いが続いたり、次に来日した時は住み込みスタッフとして滞在することもある。韓国出身のスタッフ、イ・ホヨンさんは2年前、旅行客としてここに泊まった時、スタッフとすっかり親しくなり、韓国での仕事をやめて札幌へ移住。旅人を迎える側の立場になって、人なつこい笑顔でファンを増やしている。オランダやアメリカから訪れるリピーターが、ホヨンさんの結婚式に出席するだけのために来日したほどゲストと仲がいい。

今12人いるスタッフは全員20歳代で、出身地は札幌、道北の美深町に神戸、香港、韓国、ブラジルとさまざま。ホヨンさんのように、最初はゲストだった人もいれば、海外から帰って来て英語を使える仕事を探していて、求人情報を見つけた日本人もいる。彼らに接客の面で大切にしていること、いつも心がけていることは何か聞いてみると、こんな答えが返ってきた。「うーん…笑顔…かな」「ナチュラルな接客というか…壁を作らないこと?」。首を傾げて一生懸命考える姿を見ていて、マニュアルも計算もない素朴なおもてなしの心が、ゲストを引き付けているのだと実感した。

フロントにスタッフ行きつけの飲食店の宿泊者限定クーポンを置いたり、みんなでサイクリングツアーや、はしご酒に出かける企画を主催したり。学校祭のような感覚で、和気あいあいと楽しめるサービスやイベントも、手作り感があって面白い。館内のラウンジでスタッフが作る各国料理や鍋、たこ焼きなどを囲んでおしゃべりする「Chit Chat Stay」は、参加費がワンコインで飲み物の持ち込みは自由。宿泊客だけでなく地元の人も参加でき、日本人か日本語を話せるスタッフが毎回いて、英語は苦手だけど国際交流してみたいという人も歓迎している。

ゲストハウスは海外から訪れたバックパッカーが泊まる所というイメージがあるが、この宿は北海道内から来る家族連れのリピーターや、出張客の利用も少なくない。5、6人向けの客室にファミリーで泊まれ、ラウンジにパソコンを持ち込んで仕事もできる。ラウンジが3階と10階の2か所あり、3階で音楽ライブなどのイベントを開催する日は、静かに過ごしたい人は10階でくつろぐなど、一軒の宿の中でニーズに合った住み分けができるのは、規模が大きい施設ならではのメリットだろう。宿泊客同士のコミュニケーションを積極的に求める人も、マイペースで過ごしたい人も、滞在の仕方を選択する自由がある。

客室がバスやトイレのない相部屋で、宿泊者同士が交流できるラウンジがあることを除けば、ビジネスホテル同様の設備を備え、アイロンの貸し出しやバスタオルの有料レンタル、アメニティセットの販売もある。ゲストハウスを利用したことがない人も、気軽に泊まってみては。

THE STAY SAPPORO ■住所:札幌市中央区南5西9-1008-10 ■電話:011・252・7401 ■時間:IN15:00〜22:00/OUT10:00 ■宿泊料:1人1泊2,300円〜 ※料金はシーズンにより変動あり(北海道ウォーカー)