堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生がお答えする本連載。今回の相談者は、派遣社員をしている本田真希絵さん(仮名・34歳)です。

「地方に住む65歳の父親が、事業の借金で自己破産を考えていると言ってきました。父はギャンブルが好きで借金癖があります。母もハデ好きな超タカり体質で、生活費がないと言うので、月3万円も仕送りしています。私の月給は手取りで22万円なので、ホントにギリギリです。

父は先日私に借金の申し込みに来て、お金が本当にないと知ると怒鳴り散らして帰っていきました。親子の縁を切りたいのですがなかなかそうもいかず……。

例えば、親が自己破産した場合、私に借金の取り立てが来ることはありますか?そもそも自己破産はどのような手順で行なわれるのでしょうか。そして、自己破産したら親が住むところはどうなるのでしょうか。実家は祖父の代からの家に住んでおり、住宅ローンはありません」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

さて、個人の自己破産を簡単に説明すると、「全ての債務(借金・買掛金等)を完済ができなくなったとき、裁判所の監督のもと、生活に必要なものを残し、あるだけの資産を換価(お金に変え)して、債権者に対する支払に充て、不足した額は債権者にあきらめてもらい、経済的に再出発を図る制度」のことです。

自己破産の手順は、債務内容、資産、事情等必要事項を記載した所定の破産の申立書一式と、添付資料を地方裁判所に提出。

次に、裁判所が全ての債務を完済できない状況にあるのかを確認し、破産手続開始決定を出します。このとき、破産の要件はあるが、換価できる財産がなく免責不許可事由もないという場合は,開始決定と同時に手続は終了。

ただ、あなたのお父さんの場合、換金できる家という不動産など財産があります。

この場合、裁判所が破産管財人を選任して破産手続がスタートします。破産管財人となった人(弁護士)がお父さん(破産者)と面談し、事情を詳しく聞き、財産等調査を行ないます。

破産管財人が管理することになるのは、破産手続開始決定前に蓄えた財産です。手続開始後に得た収入は取られません。

それに、破産者宛ての郵便物は,全て破産管財人に転送されます。財産があれば,破産管財人が換価し、破産手続のために開設した口座で管理します。

全ての調査と換価が終わり、債権者に配当できるほどに貯まれば配当しますし、貯まらなければ終了します。これを「異時廃止」と言います。

裁判所で少なくとも1回は、債権者集会が開かれます。ここで破産管財人から、配当ができるかできないかなどを報告します。債権者の出頭は自由ですが、破産者は必ず出頭しなければなりません。

貯金、家や土地などの不動産、市場価値のある車両や宝飾品はもちろん、解約返戻金の出る保険も財産とみなされます。これらの全てを裁判所のルールに基づいて破産管財人によって売却や解約して現金化し、債権者への配当されるお金にあてられます。

自己破産後の話としては、金融機関からお金を借りるときの審査で、自己破産した事情がしばらくの間(5〜10年ほど)ひっかかります。信用情報に傷がつくのはデメリットといえます。ただ、自己破産した人は、事情は様々とはいえ、借金で少なからず失敗したわけなので、手続終了後、再度借金しようと思うことは少ないかもしれません。 

最後に、あなたのお父さんのようにマイホームに住んでいた人が自己破産した場合には,マイホームは手放すことになります。そうすると、借家に引越するなどしなければならなくなります。ただ、もともと借家に住んでいて、家賃を支払っているならそのまま住むことができます。

親にお金を渡さないと、父親は「死んでやる」などと暴言を吐くとか……。



■賢人のまとめ
自己破産は本人の問題。家族に直接デメリットが及ぶことはありません。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/