「このハゲーーーー!」「ちーがーうーだーろーーー!!」

テレビでも抽出された部分が放送され、パワハラか、暴行か、はたまた恫喝か、と騒ぎになった豊田議員の元秘書への怒号音声公開。

この録音された声を聞いて、「わぁ……こんな人、いるんだー」と思える働くアラサー&アラフォーがいたら、その人は、相当な幸せ者だと思います。きっと、穏やかで充実した、まさにキラキラ生活を送ってきたのでしょう。

しかし、たいていの人が「なんて品のない」と感じこそすれ、「珍しい」ではないのでは?むしろ「いるいる」だと思います。
「ヒステリックに怒鳴る中年がいる風景」は、わりと日常です。

流行語大賞にノミネートされるのでは、なんて声もありますが、これはちょっと難しいと思います。

だって、汎用性がないからです。「このハゲーーーー!」も、「ちーがーうーだーろーーー!!」も、あの言い方じゃないとパワハラ感がでないし、議員のマネしてるように見えない。けれども、まんまマネしたら、本気のパワハラと勘違いされかねません。

そのくらい「パワハラ」であり、かつ、「シャレにならないほど日常」なのだともいえます。
私が初めてあの音声を聞いたとき、一番に思ったのは、「こりゃ、そーとー怒ってるなー……(苦笑)」でした。

元秘書は運転中だったという報道から、後部座席にいた彼女が、運転席の背もたれをガンガン叩いているのかと思っていました。それが、ピッタリとハマる音調だったのです。でもネットのニュースによると、元秘書はこめかみに打撲を負い、警察に通報したそうです。だから、これ、助手席からのパンチ攻撃だったのかもしれません。でも、議員が助手席に座るというイメージがなかった。

それにしても、運転中だとしたら相当危ないです。助手席から殴られるって。もしかしたら暴行は信号待ちとか、別のタイミングだったのかもしれませんが、あの言い方に加え、大問題です。

 パワハラをする人は、その相手を動物的本能で見抜くしかも、こーゆー人って、誰にでもこうじゃないんです。怒鳴っても自分にデメリットない人、許される人にだけ怒鳴る。だからパワハラなんですが。
豊田議員も、他の秘書や支援者の方々には、馬鹿丁寧なくらい親切だったとか優しいかったとか。

そして、ヒステリックに怒鳴る人って、自分は間違ったことは言っていない、という自負もある。

「う、運転中なので叩かないでください……」という元秘書に対して、「あんたはわたしの心を叩いている!」「あたしの立場をこれ以上悪くするなー!!!!」と言う怒号も発していました。もし自分がこんなことを言われたら、相当な罵倒をされているのにも関わらず、肩身の狭い思いがしてしまいます。「自分が悪いのか?」と必要以上に恐縮、恐怖してしまう。

そう思わせるから、パワハラなんですが。

社内の法務的な部署で働いている知人から聞いたのですが、パワハラか否かの判断はとても微妙なところにあるそうです。

「上司による業務上の注意と言える範疇なのか」「本人のやる気を鼓舞させるものか否か」はもちろんのこと、「本人に非があるときに、上司が(多少)感情的になった程度」では会社的にはパワハラとは断定できないそうです。当然といえば当然ですが。第三者が“あれはパワハラである”、と認知することも重要なのだそう。

つまり、どういう内容を、どういう状況で、どういう口調で言われたのかを証拠として出さないと、被害を感じている側はかなり不利です。「いや、でもさすがに、あの言い方はないよね」と、思えるのは、あの録音があったからこそです。

しかし、秘書が47人の宛名を間違えて発送してしまったという報道や、機密文書がなぜかライバル事務所に届いたという録音内の議員の発言、さらには、議員が怒鳴ったのは秘書が高速道路を逆走したからという新聞報道。これらの情報をまとめると「ちょっとこの秘書、相当仕事できないんじゃないの?」「それはさすがに怒鳴られてもしかたがないのかもしれない……」と、思ってしまった人も多かったのでは?

秘書本人の非があったとなると、もはやパワハラ論争は、その言い方はさすがにひどくない?っていう一点のみの戦いです。

この人に言われるから嫌だ、この人だからパワハラだ、というのは、「それセクハラ行為です!ただしイケメンは除く」という発想と同じようで違います。大切なのは、「伝え方」と「お互いの人間関係」です。

もはや、多数決でしか判断できないのかもしれません。

結局のところパワハラ被害者は、「怒られるようなことをしたお前が悪いんじゃないの?」っていう意見があるかもしれないという自爆覚悟で、確固たる証拠(録音)を用意してマスに発信(通報)するのが手っ取り早いのかもしれません。そして、みんなに判断してもらうのです。

その言い方には、相手への愛があるのかどうか。

「会議室の中からパワハラの声が聞こえるという事態は日常茶飯事」という働くアラサー証言も少なくない。

「今でも思い出すと背筋が凍る」「怖すぎてむしろ笑いがこみあげてくる」その2では、あずき総研が働くアラサー&アラフォーに聞いた「ヒステリック系パワハラ」の体験談を紹介します。