弁護士・柳原桑子先生が、堅実女子のお悩みに答える本連載。今回の相談者は、結婚がどうしてもしたい内野美也子さん(仮名・33歳・アパレル関連会社勤務)。

「私は女性ばかりの職場で働いているので、全く出会いがありません。このままではヤバいと思い、最近マッチングアプリに登録しました。結婚を目的とした無料のアプリで、運営会社も比較的知られている会社です。

何人か会って、なかなかいい人がいなかったのですが、先日、好みの男性に出会い運命を感じました。だから具体的な男女関係まで踏み込んだのですが、その男性が既婚者だったのです。子供の顔を待ち受けにしていたので分かったのですが、それを見なかったら独身男性と疑わなかったと思います。

そのことに対して、運営会社に苦情を言ったら、”登録者ののSNSを見て、確認しました”と言われたのです。確かに彼はFacebook上のステータスでは独身でしたが、マッチングアプリに加入すること自体まちがっていますよね。

本当に時間がない中、切実に婚活をしているのに、この怒りをどこにぶつけていいかわかりません。解決策を教えてください」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?  

インターネットによる異性の紹介事業については、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(出会い系サイト規制法)という法律により、未成年の利用を禁止するために、年齢確認など“18歳未満の児童でないこと”の確認を義務付けています。しかし、アプリに関しては、適用外です。

いずれにしても、同法は独身かどうかの確認までは規制していません。

一般に無料で登録できるサイトは、登録者のモラル意識が低いことが発生しやすく、個人情報を偽っている場合も少なくないと思われます。

このほか,サクラや何らかの業者が通常利用者を装って登録している場合など、サイトやアプリをきっかけに以後直接のやりとりをするようになってから、個人情報の収集、高額な有料サイトへの誘導、悪質サイトへの誘導、情報商材の販売等と、本来の”男女が出会う”という目的ではない、別の目的のための動きを始めるという場合もトラブルの例としてある様子です。

直接の法律による規制については、上記出会い系サイト規制法による児童を守る目的であり、成人については、仮に、犯罪行為をされた場合にはその行為内容により別途規制する法律の適用を検討することになるのは当然として、男女交際上の問題(既婚か独身か、経歴を偽るなど)は、ネット等を利用しない場合と同様、自らの調査判断でもって自衛するほかないと思われます。

もしあなたの相手の男性のように、既婚者であることを隠して出会い、そして交際の末に婚約するに至ったような場合、交際相手が既婚者であることについて、その過失が認められないか、あなたの過失割合が低い場合には、慰謝料請求はできるでしょう。

ネットやアプリ等で出会った相手についてのの個人情報は、当初、本人が語るものしか知る由がないので、交際を発展させたいと思った場合には、特に慎重に、独身であるのかを意識して自ら調査し確認するようにした方がよいかもしれません。例えば、突然に自宅を訪問することを申し出た場合の対応を見るとか、相手の友人らを交えての交流を持って相手の様子を探るなど、自分が裏付けをとれるであろうと実感できる方向性を探ってはいかがでしょうか。

結婚指輪がないか、外した跡が残っていないかなども、既婚か未婚かの判断材料。



■賢人のまとめ
マッチングアプリで出会った相手とは、交際が発展する前に、独身かどうか、周辺状況から判断することが大切かもしれません

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/