堅実女子のお悩みに弁護士・柳原桑子先生がアンサーする本企画。今回は前田彩子さん(36歳・無職)のお悩み。

「3年間務めた広告代理店を、先月退職しました。その原因になったのは、ある女性上司です。半年間、彼女の部下として働きました。

彼女は、自分と同じ手順で仕事をしないと相手を無能扱いする女性でした。美人だし、笑顔がステキで面倒見がいいので、上司からのウケは抜群です。しかし、自分の部下に対してはその真逆。仕事のやり方からプライベートまで支配するタイプで、多くの人が彼女のパワハラによって会社を辞めています。

発端はあるプレゼン資料を作るとき。それまで、私はチームで話し合いをしながら内容を固めていたので、資料とメモだけ持って打ち合わせに挑みました。すると、彼女は“はあ? たたき台資料作ってないの? あなた手抜きしているの?”と激怒して席を立ってしまいました。

その後も資料の手配やデータの整理の指示をするメールが来たのですが、“あなたは無能なんだから、気を利かせてください”とか“手を抜く自分を戒めながら仕事をしてください”“会社はあなたのような人を雇って後悔しているはず”“今まで何をしてきたのですか?”などの文章を必ず入れていました。

その後も、私が何かミスをしないか行動をチェック。私が気を利かせて先回りして作業をすれば“余計なことをして”と怒り、作業をしないと“丁寧さと周到さが足りない”と言ってきます。言葉でいうだけでなく、メールで来て、しかもメールは5分以内に返信をしないと“無能なんですからメールの返信くらい早くしなさい”と書いて来るのです。

何をやってもマイナス評価されてしまい、結局、うつ病になって自主退職をしましたが、事実上の解雇だったと思います。よく覚えていないのですが、人事部長と役員に詰め寄られて退職した記憶があります。というのも、最後のほうは、頭がボーっとして、彼女が座っている左側の耳が聞こえなくなってしまったので、これはヤバいと思って。

明らかに、私がこうなったのは、その女性上司のせいなのです。仕事を辞めて1か月、今は実家で静養しています。心に余裕ができ、私は辞める必要がなかったかもという気持ちが湧いてきました。明らかに不当だよな……とも思っています。この場合、どうすればいいですか」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは!?

あなたが解雇されることを納得していない場合には、退職を前提とした行動を取らないことが大切でした。

現在はその会社を辞めてしまっているので、あまり時間を空けずに労働事件を取り扱う弁護士等に相談をするべきです。

うつ病などの精神疾患だけを理由に解雇はできません。あなたがうつ病になったことにより、業務に具体的にどのような支障が生じたのでしょうか。

もし業務に支障があったと考えられ、その原因がパワハラであるとするならば、あなたはその主張や相談を会社にするべきだったでしょう。そして問題になるのは、それに対する会社の対応の状況です。

あなたの解雇は、業務上の支障の程度、パワハラの相談に対する会社の対応だったり、病状を踏まえた業務の軽減措置など、会社として適切な措置をとったかどうか等、総合考慮の上、その有効性を検討することになります。

これらの事実関係につき,証拠として示せるものがあるかどうか,特にパワハラを示す証拠が残っていないかどうかを確認しておくとよいでしょう。

相談者・彩子さんは女性上司からメールで責められ続けたために、PCやスマホでメールチェックをしようとすると、動悸が激しくなるとか。



■賢人のまとめ
パワハラだと感じたら、辞める前に会社の人事部ほか相談窓口に相談し、解決策を見つけて。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/