産後のカラダはどう変わる?

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執筆:青井 梨花(助産師 看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

出産が終わると、ホッとするのもつかの間、赤ちゃんとの新しい生活は、授乳にオムツ替えに寝かしつけと待ったなし。

なかなかママ自身、出産後のカラダの回復に目が向きにくい傾向にあるかもしれません。

しかし、ここで無理は禁物!

身体へのダメージがのちの健康に大きく影響することもあるのです。

今回は「産後のカラダ」について詳しくご紹介していきます。

産後の養生はなぜ必要?〜医学的にみた産後のカラダの変化〜

出産後、ママのカラダとココロは劇的に変化をしながら、妊娠前のカラダの状態に戻っていきます。

医学的には出産後から6〜8週間の変化を「産褥期(さんじょくき)」といい、多くの病院では産後1ヶ月〜1ヶ月半くらいに健診をおこなって、カラダが戻っていく過程が順調か確認をしています。

では、この期間にカラダにはどんな変化がおこっているのでしょうか?

子宮の戻りと悪露(オロ)


子宮は徐々に妊娠前の大きさに戻ります。悪露は、一般的に赤色のものから徐々に茶色〜黄色と、量の減りにともない変化し、1ヶ月ほどで茶色っぽくなり、それ以降ほとんどみられなくなります。

出産後、活動量が極端に少ない、あるいは急に活動量が増えて疲労が蓄積すると悪露の排泄が滞ってしまい、結果、子宮の回復も遅れてしまうことがあります。また急に活動が増えたとき、子宮内に溜まっていた悪露が一時的に多く出る場合がありますが、すぐ落ち着いてくるのがふつうです。

会陰部や膣、帝王切開後の創(キズ)


出産後すぐには、創部の痛みを感じることもあります。

赤ちゃんのお世話や日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合は、主治医と相談の上、痛み止めを使用する場合もあります。多くは退院後は痛み止めを使用しなくても良いほど、徐々に回復してきます。

とくに会陰切開部や膣の創は、悪露により感染のリスクがあるので清潔を心がけます。

その他


出産後、出血が多いと、産後に貧血となる場合があります。貧血の程度が強いと、疲れがなかなか改善されなかったり、創の治りが遅かったりなど影響します。

また、この時期までリラキシンというホルモンが分泌されている影響で、骨盤まわりやじん帯がゆるんでいるのでスムーズに動きづらいものです。

そして注目すべき変化として、膀胱や子宮、直腸などを支える骨盤底筋も出産時のダメージにより緩んでいます。

産後、無理して動いてしまいさらに負担がかかってしまうと、子宮・膀胱・直腸などの臓器が下がって尿もれしやすくなったり、悪化すると臓器が膣から出てきてしまう骨盤臓器脱、また腰痛など、この先もずっとこのような不調を引きずることがあります。

今も昔も「床上げは3週間目」が重要なワケ

昔から、出産後から3週間ほどは布団を引きっぱなしにして、赤ちゃんのお世話とママ自身の身の回りのことだけをし、あとはすぐ横になってカラダを休め、養生するようにといわれてきました。

そして3週目くらいから「床上げ(とこあげ)」して、少しずつ家事をおこなうことで、妊娠前の生活に戻していくのがカラダに良いという風習です。

これは医学的な面からいえば、産後のカラダにはさまざまな変化が起きており、無理をせず、休息をとることが、スムーズな回復へのカギであることと一致します。

加えて、のちのトラブルを予防することにもつながるのです。

ママは自分自身のカラダをいたわること

産後のカラダは子宮や出産時のキズだけでなく、全身さまざまなところに影響が及んでいるものなのです。

ですから、とくに産後早期にどれだけ回復がスムーズにいくかは、この先もずっとあなたを支えるカラダの健康にかかわってくるのです。

のちになにかトラブルが起こらないよう自分のカラダをしっかり休め、その後の不調を予防することも赤ちゃんのお世話同様、ママの大きな役割です。

そのためにはひとりでがんばり過ぎず、家族はもちろん周りに頼ることは大切なことです。また周りの人も積極的なフォローを心がけて欲しいものです。


<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母。

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供