ヨーロッパの年間行事の中で1番盛り上がるのは、やはりクリスマス*。スイスにも、またその時期が訪れています。広場や商店や会社には大小のクリスマスツリーが飾られたり、街頭には多数の電飾が吊り下げられたりと、街はすっかり華やかな雰囲気に包まれています。
*クリスマスを質素に祝う、または祝わない国・宗派の人たち・家族もあるため、ヨーロッパといっても、すべての地域においてではありません。

スイス各地で開催される屋外のクリスマスマーケットも気分を盛り上げます。日本でも開催されていて、知っている人も多いはず。小屋の形をした屋根付きの屋台でクリスマスグッズが売られています。

チューリヒ市内のクリスマスマーケット。平日の昼間は人が少なく、ゆっくり見て回れます。

早まるクリスマス商戦

お店に一歩足を踏み入れれば、ツリー用の飾り、ロウソク、クリスマスらしい置物、クッキーを焼くための道具や保管する箱、プレゼント用のラッピング用品と、色とりどりのあらゆる商品が並んでいます。もちろんプレゼントもクリスマス向けで、香水、バス用品、おもちゃ、商品券、食べ物と、特別なデザインや風味などが考案されています。

こんなクリスマス商品が10月の終わりごろから一斉に出回ります。商品はシーズン先取りで早めに店頭に並ぶものですが、クリスマスはこのころから、みんな少しずつ準備を進めます。

数年前からは時期が早まって、10月に入るともうクリスマス商品がお目見え。私の周囲のスイス人からは「ちょっと早すぎる気がする」という声もポツポツ。そして今年は9月から、大手スーパーが、クリスマス用のクッキーの販売を開始。ある新聞では記事に取り上げ「さすがに、それは早すぎる」と商売魂にクギを指していました。

グリューワイン(Glühwein)はスイスでも人気! 屋台はこの人だかりです。

チューリヒの老舗チョコレート店も華やかに。

準備で疲れる

日本から見ると、ヨーロッパのクリスマスは幻想的で素敵な印象を受けますね。でも、実際はそうでない面もあります。

「クリスマスは確かに街が普段とは違って見えます。でも、みんな、準備が結構ストレスのようですね。それに、楽しい、嬉しいと幸せムードにひたれない人もいます。一緒に祝う友だちや恋人や家族がいない人にとっては、寂しさがつのって、かなり感傷的な気分になってしまう時期ですよね」(40代・スイス人女性)

「子どもがいると、クリスマス前はやることが盛りだくさんです。楽しい反面、少しストレスには感じますね。スイスでは、クリスマス前は孤独感に陥って自殺する人が多いと聞いていますから、いいことばかりでもないですね」(30代・スイス在住の日本人女性)

「私の家では、親戚一同にカードを送ったりプレセントを準備したりします。カード書きとプレゼントの包装に時間が取られます。宿題もテストもあるのに……」(10代・スイス人女性)

「妻と娘たちはクリスマスが大好きで、毎年、プレゼント(ジャムとか、デコレーションとか年によって違う)を手作りしています。親戚を招いてパーティーも開くので、その準備もすごいですよ。私はあまり手伝いませんが、こちらまでストレスを感じますね」(50代・スイス人男性)

聞いてみるとクリスママスやその準備にストレスを抱えている人は少なくないようです。

私のスイス人の義姉も毎年クリスマス前は少しピリピリモードに。仕事の合間をぬって、玄関や居間にお手製のリースを飾り、ツリーも飾り、プレゼントを買い込み、クッキーを数百個も焼き、親戚が集まったときの食事のことに頭を悩ませます。

日本のお正月を迎えるようなもの、と言えますが、家庭でのクリスマスの準備はやはり女性が主導権をもっています。この時期、上の男性と同じく、私の知っている男性たちは「恋人や家族は準備にハッスルしているが、自分としては派手には祝うのは嫌だ」と口にします。

男性がクリスマス前で疲れるとしたら、休暇前で仕事の調整をしなくてはいけない、会社で仕事が終わったあとにクリスマスパーティーがある、会社の上司や同僚たちとのクリスマスの食事会が企画される(家族同伴)、ボランティア活動に参加するといったことがあるためでしょう。

では、もう少し具体的に、準備で何が大変かを挙げてみます。 

このほかにも、電飾を玄関や窓際やベランダに飾ったり、アドベントのためにロウソクを4本飾り、子どもたちにはアドベントカレンダーを用意したりと、やろうとすると、まだまだあります。

私のクリスマス前の過ごし方

私はここ数年、クリスマスの準備はあまりしません。夫も息子も華美にしなくていいと言うのと、ストレスを抱えたくないからです。以前のようにカードを手書きで何十枚も書いたり、家を飾り付けたり、息子とクッキーを焼いたりしません。息子をのぞいて、夫や親戚へのプレゼントも「お互いの健康が1番のプレゼント」と言い合って、小さな贈り物で済ませるようになりました。

とはいえ、そんな私でも、何かしらクリスマスに関連したことは生活の中に入ってきます。下は、つい先日の1週間の様子です。ストレスとまではいきませんが、これが数週間続くとどうしてもソワソワします。

2016年12月 私のある1週間

私にとっては、今年の山場はツリーの飾り付けです。わが家では、クリスマスツリーは12月24日直前に用意します。11月や12月初めからでないというのは夫の田舎の恒例で、それにならっています。本物の木を買ってきて特別の花瓶に入れ、夫が子どものころに使っていた飾りや、親戚から譲り受けたアンティークの飾り、そして本物のロウソクでお化粧です。家庭でも商店や会社でも、ツリーは1月初旬まで飾っておきます。

飾り付けが済んだら、もうゴールは間近です、のんびりと過ごします!

(岩澤里美)