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このところネット上で物議を醸している「恋愛工学」というものをご存知でしょうか。月間100万PVの人気ブログ『金融日記』の管理人で、有料メルマガ「週刊金融日記」を発行する藤沢数希さんが、科学や金融工学の知見をもとに提唱する男性向けの恋愛ノウハウ。藤沢さんはメルマガを通じて、恋に悩む恋愛工学受講生(メルマガ購読者)らにどうすれば女性にモテるかを指南しています。

藤沢氏の提唱する「恋愛工学」とは?

では実際に、恋愛工学ではどのようなことを教えているのでしょうか。具体的なテクニックについては有料メルマガで受講生のみに公開されているため全体像をここで紹介することは難しいのですが、どんな内容が批判の対象になっているのか見ていきましょう。

「基本的に、褒めれば褒めるほど、セックスは遠のく、というのが現代恋愛工学のひとつの結論です。むしろ、効果的にディスった方がいいです」(「週刊金融日記」第40号)

「『お前、意外と頭悪いな』こうやって、自信満々で相手をディスれると、それだけで高学歴女の胸がキュンとしちゃって簡単に落とせる場合があります。そういう時って、もう、次の餌を待ってる時のわんこのような顔でこっちを見つめてきたりしますよ」(「週刊金融日記第40号」)

「男という生き物は基本的にセックスしたいだけ、と考えておけばほとんど間違いありません」(「週刊金融日記」第42号)

Q:「セックスにトラウマがあると言われました」「下半身の方に手を伸ばそうとしたら、かなりの力で手を抑えられて拒否」「セックスのトラウマある(と言ってる)人への崩し方は普段と同じでよろしいでしょうか」

A:「僕はこの『トラウマ』という言葉はいつもうさんくさいものだと思っています」「次回にアポとれたら、いつもどおりのプレイで大丈夫ですよ」(「週刊金融日記」第152号)

テクニック指南書の多くが対象者をパターン化するものかもしれませんが、確かに「週刊金融日記」で紹介されている「型」は少し極端にも感じます。

「Aフェーズ」「グダ」「トモダチンコ」……受講生が使う謎の専門用語

恋愛工学には、「Aフェーズ」「Cフェーズ」「Sフェーズ」や、「グダ」「愛情ワクチン」「トモダチンコ」「聖帝十字撃」などの独特の専門用語があり、恋愛工学を実践した受講生らが、メルマガやツイッター上で結果報告をする際、以下のように使用されています。

・その日は結局Cフェーズのまま終わってしまいましたが、後日セックストリガーを引くことができました。

Cフェーズでの雰囲気を意識しながら軽くキス。ほぼノーグダ、反応があまりない。食いつきがイマイチ足らないのは、Aフェーズ、Cフェーズ、愛情ワクチン(又はそれ以外?)なんの不足なのでしょうか?

昨夜のアポは、焼き肉→BAR→家連れ出しまでいくものの、 とにかく固かった…ベッドで背後からの裏聖帝十字撃+イチモツを擦り付けるトモダチンコを5回ほどトライするも崩せず。 完全敗北。分かりづらいIOIの見逃しと、愛情ワクチン不足が直接の敗因かな。

うーん、専門用語を知らない者にとっては、分かるような、分からないような、分かりたくないような……。ちなみにAフェーズは「Attract(引き付ける、魅惑する)」、Cフェーズは「Comfort(安心させる、快適さ)」、Sフェーズは「Seduce(性的に誘惑する、だましてものにするなどの意)」の略なのだとか。

強引なテクニックにツイッター上で批判殺到!

恋愛工学が人気を集めるにつれ、女性たちからは疑問の声も。ツイッター上では、恋愛工学に対するこんな批判も噴出しています。

・恋愛工学のメンタリティは性暴力の加害者のメンタリティとかなり似ている
・恋愛工学なるもんは敬意のかけらもない点がヤバい。端的にいって人の尊厳のなんたるかを踏みにじってる。そういう行為は必ずハラスメントにつながる。
・あの界隈の「グダ(相手の女性が誘いを嫌がること)」とかそういう造語センスは、キモ面白いどころじゃなく、非人間的で不愉快きわまりなかった
・恋愛工学の語る「女性」には主体性が認められず、彼らの理論の中に収まるようにしか描かれず、しかもその理論は都合のいい「生物学的な」性欲しかベースにおかない。
・女性を攻略対象コンテンツ扱いし、容易にデートレイプ等の性暴力に繋がる酷いミソジニーの産物としか思えない。

行き着く先はうつ病? テクニックに溺れては誰も幸せになれない

現在はこの一連の騒動もある程度沈静化しているようですが、ここで改めて、自身のブログで恋愛工学への疑問を呈したライターの青柳美帆子さんに、恋愛工学の問題点について聞いてみました。

「恋愛工学の一番の問題点は、デートレイプを推奨していることです。例えば、恋愛工学でもナンパ師界隈でも使われる用語の『グダ』。これは女性がセックスを一旦嫌だと拒否することを意味する単語です。彼らはグダに出会うと『女性はOKであっても一度は拒否するスタンスを取るものだから』という理屈で、グダを無視してセックスしようとします。そこには『相手は本当はどんなことを思っているんだろう』と考える思いやりや尊重がありません。ありえないですよ。『嫌だ』と思っている女性と無理矢理セックスするのはレイプです。しかもグダを崩すテクニックとして紹介されている『トモダチンコ』は、『男性器を露出して女に見せたり押し付けたりする技』なんですよ。男性器を押し付けると、結局女は好きになっちゃうし本能が目覚めちゃうって理屈だそうです」

青柳さんの書いたブログには、恋愛工学の読者から反論もあったといいます。

「『ブスで非モテのアラサー乙』が一番多かったです(笑)。印象に残っているのは、『僕は過去に好きな人に必死になりすぎて振られてしまった。もう恋愛で失敗しないために恋愛工学を使っている』という反論です。彼にとって、恋愛の失敗=最愛の人に振られること。でも恋愛工学を使って他の女性と同時並行で関係を持つ、つまり浮気していることで、最愛の人に振られたらどうするんでしょう? 聞いてみたら、答えは『その経験を糧にして次の女性を探す』。それって本末転倒。一人の人に夢中になって見捨てられるのが怖いからって、相手や自分をないがしろにするのはバカみたいだなあと思いました」

恋愛工学だけでなく、ナンパ師の動向についても日々ウォッチしているという青柳さんによると、「恋愛工学のメソッド自体はまったく目新しいものではなく、『ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル』『モテる技術』といったアメリカなど海外で流行したナンパハウツー本をそのまま流用している部分がほとんどです」とのこと。

「ただ、本家の『ザ・ゲーム』では、テクニックに溺れたナンパ師が相手の女性を人と思えなくなり、最終的にうつ病になったり、ナンパ師界隈のホモソーシャルでしか盛り上がれなくなったり、ナンパをビジネスとしてしか捉えられなくなったり……と破滅していく様子が描かれています。主人公は結局、テクニックが通用しない女性を好きになり、テクニックを捨てて彼女と付き合います。ナンパ師のブログを定点観測していると、まさにみんなそのどれかに進んでいく。恋愛工学はそういった『都合の悪い』部分、本質的な部分は省略して教えない。恋愛工学やナンパのテクニックは相手も本人も幸せにしません。その手法やアプローチには、やはり異議を唱えたいです」

と青柳さん。

ネット上でちょっとした議論を巻き起こしている恋愛工学。あなたはどう思いますか?

(東本由紀子) 編集協力プレスラボ