今週のテーマは「初デートで2軒目まで行って盛り上がったのに、女から連絡が来なくなった理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:本命との初デートで、2軒目に誘うのはアリ?22時半に1軒目が終了した後、好印象を残すためには…




金曜24時半。タクシーに乗り込み、スマホで時間を確認した途端に私は思わず「ふぅ」っと声が漏れてしまった。

すると、タクシーのドアが閉まる前に、今日のデート相手である翔が外から覗き込んできた。

「愛莉ちゃん、また会える?」

そう言われたので、私は慌てて笑顔を作る。

「うん、会いたい♡」

パタン、とタクシーのドアが閉まる。それと同時に、私は後部座席で思わずシートに寄りかかる。

今日のデートは、正直言うと、100点満点中38点くらいだ。

男性からすると、悪い点はないように見えるかもしれない。でも女子からすると、翔のデートは減点ばかりだった…。


A1:イケメンで、話も楽しかった点。


翔と出会ったのは、友人に誘われて参加した食事会だった。3対3の席で、隣に座った翔。

「愛莉ちゃん、飲み物足りてる?」
「うん大丈夫です。翔さん、でしたよね?」

翔は身長が高くて、肌が綺麗で顔の造形も良い。いわゆるイケメン枠だった。

「名前覚えてくれた?嬉しい」

そんな会話から始まったけれど、翔はその後もいろいろと話しかけてきてくれる。

「お仕事は何をされているの?」
「私はIT系のスタートアップの会社で働いてます。翔さんは?」
「僕は外資系の保険会社だよ」
「保険屋さんなんですね。オフィスはどちらなんですか?」

顔も良いうえに話しやすくて、この時点で私は今日この食事会に参加してよかったと感じていた。

しかも年齢は私のひとつ上。“30歳・独身イケメン外資系勤務”なんて、無敵だ。




「1歳しか違わないし、敬語やめようよ」
「いいの?」
「もちろん。愛莉ちゃんって絶対にモテるよね?可愛いし、話しやすいし」

素敵な男性から「モテるよね」と言われ、素直に嬉しくなった。

「え〜どうだろう。翔くんもカッコイイからモテそうだけど」
「いやいや、僕は。愛莉ちゃん趣味とかあるの?」
「趣味…最近、ゴルフ始めて!ハマってるよ」
「そうなんだ。僕もゴルフするから、今度行こうよ」

気がつけば、一次会はほとんど翔と話していたかもしれない。二次会へ移動しても、翔は私の隣にいてくれた。

― あれ?これはいい感じかも…。

そう思った。しかもこの二次会の終わり間際、翔はちゃんとデートにも誘ってきた。

「愛莉ちゃん、良ければ今度デートに誘ってもいい?」

答えはYESに決まっている。こうしてとんとん拍子に話は進み、すぐに翔とのデートがやってきた。




デート当日、翔は、急な仕事が入り10分ほど遅れてきた。

「ごめん!待たせちゃって。本当にごめんね」

仕事ならば仕方ない。私だって社会人だし、急なクライアント対応に追われることに対する理解はある。

「ううん、全然大丈夫だよ」

だからここは笑顔で対応した。しかし、このデートで、私は「この人、やっぱり違うかも…」と思うことになる。


A2:デートの不正解が続き過ぎた。


ちなみに今日のデートで翔が予約してくれていたのは、恵比寿にあるカウンター席のみの、雰囲気の良い和食のお店だった。

「愛莉ちゃんは、この店来たことあった?」
「ううん。初めてだよ。よく来るの?」

デートにぴったりな雰囲気のお店。料理もムードも良い。だからこそ、翔の次の回答に「え?」となる。

「2〜3回目かな。使い勝手もいいし、料理も美味しいから気に入っていて」

― それは…誰と来たんですか?

友達と来る可能性もあるけれど、どう考えてもデート向けのお店だ。ということは、毎回このお店を使いまわしている、ということだろうか。




「素敵なお店だね」
「でしょ?良かった、気に入ってもらえて」

こういう時は、さりげなく一言「友達と来て」とか「友達に教えてもらって」などフォローすべきだと思う。

少し悶々としたが、こんなことを気にする私も小さい女だと、気を取り直し会話を続ける。

「じゃあ翔くんは、ずっとバスケをしていたの?」
「そうそう。だから身長が伸びたのかも」
「身長何センチ?」
「187くらいかな…」
「すごい大きいね!私、身長が低いから羨ましいな〜」
「そうなの?小柄な女の子って可愛いじゃん」

とりあえず楽しくデートは進み、会計を終えて外に出ると、22時半という微妙な時間だった。

― この後、どうするんだろう…。

解散でも良いけれど、もう1軒行くのもアリだった。すると翔は、2軒目に誘ってきてくれた。

「愛莉ちゃん、この後まだ時間ある?もう1軒行かない?」
「いいね、せっかくだしもう1軒行こう!」

けれども、ここからがさらにデートの不正解が続いていくことになる…。

「少し歩くけど大丈夫だよね?」
「うん、いいよ」

“少し”と言われたので、すぐ近くなのかと思ったが、まだ夏の蒸し暑さが残る恵比寿の街を10分くらい歩かされた。この時点で私は言いたいことが山ほどあった。

翔が2軒目に選んだのは、恵比寿の雑居ビルに入っているバーだった。微妙な距離を歩かされ、汗もかいているし、化粧が落ちていないかも心配だ。

そんなタイミングで、煌々と光る蛍光灯のライトがキツいエレベーターに乗ることになり、私は思わず顔を隠す。




「この時間のエレベーター、嫌だな…」

せっかく、頑張って可愛く見えるように化粧もしてきたけれど、この白々しいライトのせいで一気に現実に引き戻される。

「え?なんで?」
「蛍光灯のライト、キツくない?」
「……」

この女心を、翔はまったくわかっていないようだった。でも、もうこれも仕方ないと諦めた。

さらなる衝撃は、2軒目のバーの扉を開けた途端にやってきた。

翔が選んだのは、カラオケ付きバーで、カウンター席では大して上手くもない他のお客さんが大音量でカラオケを歌っている。

「ごめんね、うるさい?この店で大丈夫?」

そう聞かれても、お店にはもう入っているし、ここで急に退出したらお店の人にも失礼になるだろう。だからこう言うしかなかった。

「ううん、大丈夫だよ」
「本当に?じゃあいっか。愛莉ちゃん歌う人?ここ、お客さんだったら誰でも歌っていいから」
「私は大丈夫。翔くんは?何か歌う?」

もちろん、一応の社交辞令で聞いたつもりだった。しかしまさかの翔は、楽しく歌い始めた。

「そうだな…歌おうかな」

― え?このタイミングで歌う?

ガヤガヤしており話も聞こえないうえ、翔はひとりで楽しく歌っており、私は完全に置いてきぼり。

― なんだこのデート。

楽しみながら合いの手を入れていると思っていそうな翔は、1曲に留まらず歌い続けている。

そして気がつけば、終電の時間も過ぎている。

「愛莉ちゃん、時間は大丈夫?」
「本当だ…。どちらにせよ、もう電車もないし、タクシーで帰るしかないから大丈夫だよ」

わざと終電が終わったタイミングで聞いたのだろうか。そう思うくらいのタイミングで、結局24時半に解散となった。

しかも再び恵比寿駅のタクシー乗り場まで歩かされ、私の翔への気持ちはもうほぼゼロになった。

もちろんタクシー代もないし、ひとりでタクシーに乗り込む。

― なんだろう、このモヤっとした気持ちは。

そう思いながら、私は帰路についた。

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