ちょっとしたすれ違いやケンカで「心が不安でいっぱい」切羽詰まる前に考えたいこと
身近な人と衝突やすれ違いが起こると、「すぐに」貸したものを返せと迫ったり連絡先をブロックしたり。
大切な人と「居心地のいい関係」を作るための“境界線”って何?【人間関係】
相手とのつながりを断ち切りたくなる衝動は、そのネガティブな状態に心が耐えられないからといえます。
そんな一方的な拒絶が相手との仲直りも不可能にしますが、他人との縁が続かない人の特徴が「すぐ切羽詰まる」こと。
焦って起こす行動にはどんな危険があるのか、お伝えします。
切羽詰まって、相手との関係を壊してしまうのはなぜ?
極端な行動に走る人に相手が感じる戸惑い
ある女性は、仲がよく交際を考えていた男性と些細なことで喧嘩になり、LINEでお互いの気持ちについて話し合っていましたが理解しあえずに気まずい会話のまま終わりました。
「しばらく頭を冷やしてまた連絡しよう」と女性は考えていたそうですが、次の日に男性から送られてきたのは「貸している本を返してほしい」というメッセージで、つながりを切ろうとしている雰囲気を感じ取ります。
「その本は、つい先日『ゆっくり読んでね』と彼が言ってくれたもので、それをちょっと気まずくなったからすぐ返せって、拒否されているなと思いました」
女性は「わかった」とだけ返し、次の日には彼が帰宅する時間に合わせて玄関に本を置きます。
その連絡を最後に、男性とは音信不通になりました。
「LINEを送っても既読がつかなくて、電話をしたらブロックされていました。私は終わったとは思っていなかったのに、彼のほうはあれでもう無理となったのでしょうね。
何も解決できないまま終わるなんて、悲しいです」
と女性はうなだれますが、ショックなのは拒絶される自分を目の当たりにするのと同時に「すぐに終わる決断を下す」男性の姿。
自分は改めて話し合いたいと思っていたのに相手はそうではなく、しかも先日の自分の発言をあっけなくひるがえして貸したものを返せと迫る姿に、「心の余裕がないのだな」と感じたそうです。
「心を守りたい」から相手を拒絶する
衝突の内容がちょっとしたことでも、すぐに切羽詰まって関係を切ろうとする人は実際にいます。
その場で問題を解決できなかった不満や不安が、相手との今後の関係について悪い想像しか招かず、その状態に身を置くことが耐えられないのかも、とすぐに相手を拒絶する行動を起こす様子を見ていると感じます。
切羽詰まると、冷静に事態を判断できず極端なことを相手に伝えてショックを与えますが、そうすることでしか心を守れないのかもしれません。
相手が自分についてどう思っているのか、また自分は相手とこれからどうしたいのか、きちんと気持ちを見つめて答えを出す余裕がないのですね。
「これ以上傷つきたくない」と思うから自分の言葉を一方的に変えてでも貸したものを返せと迫り、つながりを断ち切って一刻も早く楽になる道を選びます。
そのとき置き去りになるのが相手の気持ちで、このケースでも男性は女性に「どうしたいのか」を確認することはありませんでした。
本当に関係を続けたいのであれば、まず自分が冷静になり気持ちを整理する時間を作りますが、すぐ切羽詰まって相手を拒絶する振る舞いしか出せないのは、それだけ自分に自信がないから。
「頭を冷やしてもう一度話し合う」という選択を思いつかない、またできないのは、相手といい状態に戻れる自分を想像できないからともいえます。
そのときの男性にとっては「関係を切る」ことしか心を守るすべはなく、切羽詰まった心では相手を拒絶する自分がどんな印象を与えるかなど考えることはできません。
「仲直り」ができない人の特徴
恋愛だけでなく友情やほかの人間関係でもこんなことは起こりがちで、仲が険悪になった、相手にとって自分はネガティブな存在になったと感じると「すぐに」拒絶のポーズを見せてくる人はいます。
喧嘩をした次の日には約束を取りやめる決定を一方的に伝えてきたり、関わりのあった場所から去ったり、その決断が早いのが特徴です。
拒絶されたらそれ以上関わることに相手はためらいを覚え、仲直りはかなわずそのまま縁は切れます。
時間を置いて再度話し合いたいと相手は思っていても、かたくなな様子を見れば声をかけられないのは当然です。
「関係を続ける」のではなく「終わる」一択になるのは、当人にとってみれば「そのときはそうするしかないと思ったから」になるのかもしれませんが、そこに相手の意思はありません。
何も伝えられないままの相手のことはどう思っているのか、すぐに切羽詰まる人は自分のそのときの感情に意識が支配されているため隙間がなく、衝動のままに極端な行動に出てほかの選択肢を潰していきます。
相手に関わる隙を与えない、関係の在り方をすべて自分のその場の気持ちで決めてしまうのが、仲直りできない人の特徴といえます。
行動を起こす側のリスク
やっている当人にとっては必死であることは理解できますが、切羽詰まって起こす行動の果ては、「いざ冷静になったときに身動きがとれない」危険があることを、忘れてはいけません。
時間が経って頭が冷えてみれば、自分にも非はあったし相手は自分との関係を諦めていなかった、と客観視が戻ることも。
しかし、同時に極端な振る舞いで相手を拒絶した自分の姿も思い出せば、仲が復活する道は限りなく狭くなっていると気が付きます。
そのときの自分が相手にどんな痛みを与えたか、嫌悪感を持たれた可能性の高い自分を考えると、改めて接触するのは本当に勇気がいることです。
すぐに切羽詰まって行動を起こした結果、みずから切った縁を戻すエネルギーを持てない人は多く、ほとんどがそのまま諦めてしまいます。
せっかくつながっていた糸をその場の感情で断ち切ることは、後になって自分を苦しめるのですね。
一方で、自分の言動を「そうするしかなかったのだ」と正面から受け入れ、関係を手放した現実をまっすぐに受け止める人もいます。
冷静になってみても「あの人との関係にあれ以上力は尽くせなかった」と思えるのであれば、後悔はありません。
それでも、相手の気持ちを確認せず一方的な振る舞いで縁を断ち切った自分は消えません。その在り方はどうなのか、考える必要があります。
衝動に負けないために
筆者も経験がありますが、そのときのネガティブな感情に耐えきれず相手にきつい言葉を吐いたり、強い拒否感を見せて傷つけたり、そんな自分を後で思い出すと胸が苦しくなります。
すぐ切羽詰まる、冷静になれないのは相手にとって「悪い存在」になる自分が嫌だからで、仲直りには相手のほうが近づいてくれる道しかありませんでした。
そんな相手任せの関係がうまくいくはずはなく、終わってしまったことにはちゃんと相応の理由がある、と今はわかります。
一刻も早く「自分が」楽になる選択をしたい、その衝動は抗いがたく相手の気持ちを考えないまま動くことも容易ですが、その結果「歩み寄って理解することなく終わった」現実だけが残り、自信を失います。
心が混乱するのは苦しく相手を責める気持ちも同時に強くなりますが、そんなときこそ相手と自分は違う人間なのだ、という事実を忘れてはいけません。
自分と等しく相手にも感情があり考えがある、今からやろうとすることが自分にとっては正しくても相手にとっては違うかもしれない。
その客観視が、切羽詰まった心にブレーキをかけます。
不安や混乱が強くなると、「その後」を想像できずに相手の気持ちを置き去りにした行動に走りますが、後悔を避けるためには「しない」選択を掴み続けるのが重要です。
深呼吸をして動悸を落ち着かせる、その場を離れて気分転換をしてみる、衝動に任せて動くのではなく別の行動を考えます。
冷静になって考えた末に、「やっぱりそうしたい」と思えて動くとき、一方的に相手を拒絶する言葉は出ません。
自分の気持ちをまっすぐに伝えるのが誠意であって、本当に相手のことを大切に思うのであれば、傷つけるより「自分を知ってもらい、相手の気持ちも知る」意識が生まれます。
これが心の境界線であり、仲直りの最初の一歩だと心得たいですね。
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すぐ切羽詰まって拒絶のポーズを取ってしまうのは、それだけ相手への関心や愛情が強く、うまくいかないことへの不安が強いからともいえます。
だからこそ、衝動で動くのではなく自分も相手も尊重する気持ちを取り戻すのが大切で、自信を失わないためには欠かせません。
焦って行動を起こすと自分が身動きが取れなくなるリスクを、肝に銘じていたいですね。