男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:ある日突然、半同棲中の彼氏に「家から出ていってほしい」と告げられた女。その理由は…




あれは友達の有希と、丸の内の『カフェ ガーブ』でお茶をしていた時のことだった。

平日15時。不思議なことに、丸の内のカフェ内はサラリーマンの姿よりも、ベビーカーを引いた若いママたちのほうが多い気がする。

通り過ぎる人の流れを見ていると、有希が気まずそうな顔をしてこんなことを言い始めた。

「ねぇ葵。間違ってたらごめんなんだけど、これって聡志君じゃない?」
「え…?」

そう言って差し出された有希のスマホを見ると、マッチングアプリが開かれていた。

「ん?このアプリがどうしたって?」
「だから。これ、聡志くんだよね?」

そう言われてマジマジと画面を見てみると、たしかにそこには聡志が写っている。

― 32歳、外資系コンサル会社勤務。年収2,000万以上。

「うん。これは聡志だね…」

聡志とデートを繰り返して、もうすぐ3ヶ月になる。どうして彼は、まだマッチングアプリを使っているのだろうか…。


Q1:女がそもそもそミスっていたことは?


聡志と出会ったのは、友人の紹介だった。学生時代からサッカーをやっていたという彼は、爽やかで気さくで、何より話しやすかった。

「聡志が、今彼女募集中らしくて。葵ちゃんとかいいんじゃないかなと思って」

そう言って紹介してくれた友人の見立ては正しく、私たちはすぐに仲良くなった。

最初に出会った食事会で他のみんなは帰ったけれど、私たちは2人で二次会へ行ったほどだ。

その時パレスホテル東京の『ロイヤル バー』で飲んでいると、不意に聡志が真面目な顔になった。




「葵ちゃんは、なんで今彼氏がいないの?」
「なんでだろう…理由がわかるなら私も知りたい」
「デートしている人は?いないの?」

ここで仮に誰かいたとしても、「あなた以外にデートしている人がいます」なんて言う馬鹿はいない。

「それが誰もいなくて。聡志さんは?なんで?」
「僕は半年前に結構長く付き合っていた彼女と別れて…。次にいく気力が湧かなかったんだよね」
「なるほど…。それはちょっとわかる気がするな」

そうは言いながらも、私は今年で30歳になる。だからいわゆる“ASAP”で良い人を探している。恋愛を休憩している暇など、今の私にはない。

「でも聡志くん、結婚願望とかはないの?」
「僕?めっちゃあるよ。いい人がいたら今すぐにでも結婚したいし」
「本当に?」

静かなバーだったのに、つい大きな声が出てしまった。

「うん。なんで?」
「いや、男性って結婚願望がない人のほうが多いから…」
「そんなことはないでしょ(笑)」
「そうかなぁ」

これまで何人ともデートをしてきたけれど、みんな口々に「結婚願望はない」と言っていた。だから聡志のようにハイスペックな人で「結婚願望がある」と言う人は珍しいと思う。

抑えられた照明とシックなカウンターのせいだろうか。聡志がより一層カッコよく見えてきた。




そして彼の結婚願望を確認すると、私は俄然やる気になってきた。

「聡志くん、今彼女いないんだよね?」
「うん。いないよ」
「どういう子がタイプなの?」
「うーん。明るくて前向きな子かな。あと自立している子がいいな」
「なるほど…」

一応、すべて私に当てはまっている。暗くはないし、男性に尽くす。仕事もちゃんとしている。

「葵ちゃんは?どういう人がタイプなの?」
「私は優しくて、スマートな人が好きかも。頭がいい人。あとはいいパパになりそうな人かな」
「葵ちゃんの周りに、そんな人たくさんいそうだけど」
「それが意外にいないんだよね」

この日は、こんな会話をしていた気がする。それ以来、私たちは週末になると連絡を取り合い、2週間に一度くらいの間隔で会うようになっていった。


Q2:男がマッチングアプリを使っていた理由は?


そして毎週末会う関係になって、2ヶ月くらい経った頃。私はあることに気がついた。

会っても軽くご飯を食べるだけで、必ず解散してしまう。そろそろ次のステップに進めても良いはずなのに、聡志は家にあげてくれない男だった。

「ねぇ、聡志。そろそろ、お家に行ってもいい?」
「え?僕の家?」

驚いている聡志に、若干腹が立ってきた。

2ヶ月間何度も2人で夜に会っているのに、アッサリ解散。お互い、もうイイ大人だし、何を躊躇うことがあるのだろう。

― もしかして、他に女がいる??

そう思わずにはいられなかった。だからちゃんと彼の家に行って、確かめたかった。他の女がいるか、いないかを。

「うん。聡志の家に行きたいな」
「うーん…。じゃあ次会った時、家に来る?」
「いいの?」
「うん」

こうして私はドキドキしながら、次のデートを待った。そしてやってきた2週間後のデート。食事をしながらも、私は浮き足立っていた。




当日、聡志はとても素敵な高級フレンチを予約してくれていて、彼の本気度がうかがえる。

「やっぱりいいよね、こういう雰囲気。最高」

何よりも、こういう日に良い店を予約してくれている時点で、私のことを大切に思ってくれている証だろう。ワインを飲みながら、思わず笑みが溢れてくる。

「葵は好きだね、こういうのが」
「うん。結婚しても、旦那さんとこうやってデートできる関係がいいな。子どもがいても、たまには親とかシッターさんに預けて、ちゃんと夫婦の時間を取るの」
「そういうの、いいよね」
「うん。ずっとラブラブでいられたらいいな」

そう言いながら、私はそっと聡志の顔色を盗み見る。聡志は結婚願望があるし、少なからず将来のことも考えているだろう。

今の聡志に、私との未来は見えているのだろうか?




「聡志、ご馳走様でした♡」
「いえいえ。やっぱり美味しかったね。最高だわ」
「だね。素晴らしい料理だった」

食事の感想を言い合いながら、私たちは手を取り合って夜道を少し歩く。

「今日おうちに行ってもいい?」
「うん、いいよ」
「聡志、今週は忙しいの?」
「そうだね。今週はちょっと忙しいかも」
「そっか。じゃあ再来週末は会えるかな?予定空けておいてね」
「うん。でも仕事が入ったらごめんね」

こうして、私は遂に聡志の家に行けることになった。

想像していたような他の女の影などは一切なく、この日以降連絡をしても、聡志は変わらず優しい。

だからこそ、そんな彼がマッチングアプリを使っているのを知って、私は相当ショックを受けた。

― なんで?なんで私がいるのに…。

本人を問い詰めたいけれど、彼の逆鱗に触れて嫌われるのも怖い。だから私は何も言えず、ただただ悶々としている。

▶前回:ある日突然、半同棲中の彼氏に「家から出ていってほしい」と告げられた女。その理由は…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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男がマッチングアプリを使っていた理由は?