離婚しても戸籍に傷がつかないから?入籍せず、事実婚を選ぶ女の複雑な心境
ー結婚の正解が知りたいー
未婚・既婚に限らず、「幸せな結婚とは?」と、頭を悩ませている者が多い現代。
妥協婚、事実婚、国際結婚、授かり婚、年の差婚など、多様性があるからこそ迷ってしまうのも事実。
未婚者は、自分にはどのスタイルが合っているのか。既婚者は、他の選択肢があったのではないか、と一度は考えるのではないだろうか。
結婚に「正解」があるとすれば、自分にとってのそれは何なのか?
結婚してしまった人も、これからの人も、色んな結婚のカタチをご覧いただこう。
File02:事実婚を選んだ女
名前:葵
年齢:36歳
職業:美容食品輸入関連会社経営
パートナーの職業と年収:トレージングジムなどの経営、2,400万
結婚歴:1年
結婚のタイプ:事実婚
背が高く、スラッとした体型が印象的な葵。
指にはダイヤの指輪が光っているが、それはパートナーである恒之助からのプレゼントではなく、自分で買った物だという。
「結婚式を挙げるかどうか迷ったのですが、結局まだ挙げていません。だから指輪も、未だ貰っていないんですよね」
そう言いながら笑う彼女が選んだのは、今話題になっている“事実婚”だった。
「最初、親には猛反対されました。どうして籍を入れないのか、なぜそんなよくわからない形式を取るのか、と。周囲からの理解を得るのには、かなり時間がかかりましたね」
最近増えてきてはいるものの、実際に詳しく知らない場合が多い、事実婚というスタイル。葵は、赤裸々に語ってくれた。
愛する男女が、“事実婚”という形式を選ぶに至った過程とは
恒之助との出会いは、5年前に遡る。
出会ってすぐ恋に落ちた二人だが、当時会社を立ち上げたばかりの葵は日々忙しく、会う時間も中々取れないことから半同棲生活がスタートする。
葵はしばらくの間、賃貸で借りていた事務所兼自宅はそのままにして、恒之助の家で寝泊まりする日が続いていたそうだ。
そんな半同棲生活も、気がつけば3年目を迎えた時だった。
恒之助から“今後どうするか”、と聞かれた時に葵は気がついたという。
「あれ?私、本当に結婚したいのかな・・・と改めて思ったんです」
多くの人は、大好きな人と永遠に一緒にいたいと願うものなのかもしれない。
法に守られながら、“妻”という安定の座に居座れる契約でもある結婚を、したくてたまらない人や、結婚に夢を持っている人も多いだろう。
しかし、葵の場合は少し違っていた。
「普通は、“結婚”という、安定した契約に胸が高鳴りますよね。それなのに、私の場合そんな幻想よりも現実を見ていたのかもしれません」
幼い頃に、両親が離婚していた葵。
そもそも“結婚”に甘い期待など一切抱いていなかった。
「事実婚も結婚のカタチの一つかもしれませんが、そこには大きな差があります。従来の日本の“結婚”という制度に縛られたくなかった。そんなペーパー上の契約よりも、誰といるのか、どう過ごすのか。そっちの方が大事だと思ったんです」
そんな結婚という制度自体に疑問を持っていた葵だが、どうやって事実婚を選ぶまでに至ったのだろうか。
「結婚願望も、人より低かったんです」
そう話す葵だが、30歳を過ぎた頃から周囲のプレッシャーがかかってくる。
いつ結婚するのかと言われ、結婚していない女はまるで負け組かのように見られたこともあった。
「体感的に、結婚しないといけないのかなぁとは思っていました。でも忙しいこともあり、自分が実際に結婚することが想像できなくて。そんな時に、日本でも最近事実婚が増えていることを知りました」
元々、大学時代をアメリカで過ごしていた葵。
旧友の中には事実婚をしているカップルもおり、人より事実婚に対するハードルが低かったことも影響した。
「あらためて、私は本当に結婚したいのかなって考えたら、やっぱり入籍することに、煩わしさや違和感があったんです。従来の形式に囚われないのが、私たち二人にはピッタリだなって、前向きに考えるようにしました」
正式に手続きを踏み、婚姻届を役所に提出して結婚しても、離婚したり長年別居している夫婦もいる。
形式よりも、実際に暮らしていくこと、そして何より二人の気持ちが大切で、そこにお互いの合意と尊重する意思さえあれば良い、と思ったのだ。
そしてバツイチでもあった恒之助の理解もあり、二人は法的に婚姻届を提出する結婚ではなく、事実婚を選ぶ。
(事実婚でも貞操義務があり、束縛はしないというものの、不貞行為は許されないことは言うまでもない。)
「法律婚は様々なしがらみがあるけれど、事実婚だとそこまで肩の荷が重くない。気楽だった、という点も大きかったですね。
ある意味ライトな関係だからこそ、お互いに敬意を持って接する。とても心地の良い関係性なんです」
さらに葵は、“結婚しても自分が、今までの自分らしくいられる気がした”と、付け加えた。
事実婚のメリット・デメリットとは?
事実婚のメリット・デメリット
「ただ、懸念材料もないわけではありません。この先子供が産まれた時は、基本的に私の戸籍に子供を入れるため、戸籍上は父親不在になるわけですし」
法律上、パートナーと親権共有はできない。また男性側は、認知届けを役所に提出する必要があるそうだ。
その他、財産分与に関しても相手の遺言が必要だったりと、通常の結婚とは異なるという。
メリットの反面、デメリットも多そうだが、葵が考える最大のメリットとはなんなのだろうか。
「離婚しても戸籍に傷がつかないというメリットがありますよ」
そう冗談交じりに明るく笑顔で答える葵だが、事実婚ならではの良さは他にもたくさんあるという。
「実際に籍を入れるとなると、色々な手続きが発生しますよね?その変更が煩わしい、ということも大きかったのかも。自分で会社をやっているので、パスポートや銀行、クレジットカートの名義変更だけでなく、様々な所での変更が必要になってきますので」
結婚の面倒な手続きを請け負うのは、基本的に女性側だ。
自分の仕事がある葵は、事実婚の方がメリットが大きかったという。
「苗字が変わることに、手続きの面だけでなく気持ちの面でもすごく抵抗があったんです。」
また、向こうの“家に入る”というのも想像できなかったそうだ。
「事実婚だと、ある意味イーブンな関係になれる気がします。どちらかに依存するのではなく、海外の人たちが言うとおり、まさに“パートナー”という言葉がピッタリ。そんな関係が、私にとっては最適だったんです」
夫ではなく、パートナー。
そう話す葵は、とても清々しかった。
◆
-事実婚。
未だに実態がよく分からない人も多いだろう。
しかし自由に、自分らしい人生を謳歌している葵を見ると、事実婚も悪くないな、と思ってしまった。
また、従来の“きちんと籍を入れ、法律に守られながら、夫婦として一生一緒に暮らす”というスタイルは、もしかしたらもう古くなっていくのかもしれない。
時代と共に、変わる価値観。
女性が自立し、夫婦それぞれの意志を尊重した結果、たどり着いたのが事実婚のようだ。
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