【恋する歌舞伎】第9回:捨てる命をつないだ2人。待ち受けていた数奇な運命
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今回の「恋する歌舞伎」は、河竹黙阿弥作の因果応報の物語 『花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)十六夜清心(いざよいせいしん)』をご紹介! 團菊祭五月大歌舞伎で上演予定。◆【1】道を違えた若い男女。選択肢はただひとつ
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出家の身でありながら遊女・十六夜(いざよい)と愛し合っていた鎌倉極楽寺の所化・清心(せいしん)は、女犯の罪(※)に問われ、さらには三千両の大金を盗んだという身に覚えのない疑いまでかけられ、寺を追放されてしまう。恋人の十六夜は後を追いかけてくるが、清心は彼女の未来のためを思い、帰るよう諭す。しかし十六夜もまた、勤めの身の上ながら、清心の子を身ごもったことが発覚し、ここにはいられないと廓を抜け出してきたのだった。もはや、心中しかないと決意した2人は、稲瀬川へ身を投げる。
※仏教の出家者が戒律を破り女性と関係を持つ事
◆【2】誰も見ていない。自分とお月様をのぞいては
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運が良いのか悪いのか、十六夜は白魚船に引き上げられ、清心は泳ぎが得意だったため、それぞれ別々の場所で助かってしまう。自分だけ生きながらえてしまったと苦悩する清心だが、川岸で一人の美少年と出会う。腹痛を訴えるのでさすってやると、そこにはなにやら金の感触。もみあった末に、清心はついにこの求女(もとめ)という少年を殺めてしまう! それが愛した人の弟だとは知らずに…
はじめは死んで詫びようとしたが、いざ刀を突き立ててみると痛みに耐えられず、死ぬ勇気もないことを自覚する。「しかしまてよ。今日、十六夜が身を投げたことも、この少年を殺したことも、目撃者はお月様と俺だけ。人間わずか50年、楽しまなくては損だ」と、この殺人をきっかけに、正義感も倫理観も音を立てて崩壊していく。「一人殺すも千人殺すも取られる首はたった一つ」と悪に目覚める清心なのだった。
◆【3】恋人を想いながら山あり谷ありの生活。再会したとき互いの姿は…
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一方、十六夜は白蓮(はくれん)という、以前よりなじみのあった俳諧師に助けられ、やがて妾として暮らすようになる。十六夜もまた、自分だけ助かったと思い込み、毎日こっそりと清心の回向をしているが、その貞節さに感じ入った白蓮に暇を出される。十六夜は清心を弔うため尼になる決意をし、旅立つのだった。
しかし不運な十六夜は、道中で不幸が続き、今ではおさよと名を変え荒んだ生活を送っていた。そんなある日、箱根の山中で、今は鬼薊清吉(おにあざみのせいきち)として生きる清心とバッタリ再会する!
◆【4】ふりだしか、はたまたゴールなのか。2人が迎える因果な最期
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落ちぶれ者同士の2人は、やがて結託をして強請りを働くようになっていた。今宵のターゲットとなったのは世話になったあの白蓮。おしかけると彼は抵抗もなしに金を差し出してきたが、その金包みをみてびっくり。なんとそこに押されていたのは鎌倉極楽寺の封印。つまり善人だと思っていたこの白蓮こそ、かつて三千両の盗みを働いた大泥棒の大寺庄兵衛なのだった!
それだけでは終わらない。この大泥棒、実は清心の兄だと判明。更に、清心が殺した美少年・求女は十六夜の弟だと知ることになる。因果の恐ろしさに耐えかねて、2人はとうとう自害をするのだった。
死を決意し、生きながらえたことで生への執着が芽生えたものの、果ては2人で命を落とす十六夜と清心。
稲瀬川のほとりで心中未遂をしてから、たった一年の出来事であった。
(監修・文/関亜弓 イラスト/カマタミワ)