【ラーメン】二郎インスパイア系の注目店!『豚星。』人気メニュー4種食べくらべレポ

写真拡大

ユーザーから投稿された「キニナル」情報を検証すべく「はまれぽ」が体を張って調査!

この記事の完全版を見る【動画・画像付き】

今回のテーマは…

<横浜のココがキニナル!>豚星。の辛麺の辛さがどのくらいか、なぜ看板を設置しないのか気になります(みーこさん)
二郎インスパイア系のお店で変わり・限定メニューのあるお店を調べて。六角橋豚星。の限定冷やし中華がキニナル(ときさん)

■そこには闘いが待っている

2013(平成25)年にはついに北海道に上陸したラーメン二郎、そして日々増え続ける「二郎インスパイア系」と呼ばれるラーメン店が生み出すこの巨大なムーブメントの正体は、いったい何なのだろうか。

どの店舗にも野生の目をした男たち、そしてそこらへんの男ではかないっこない卑弥呼たちが開店前から長い行列をつくり、スターティンググリッドにならぶF1マシンのようにアクセルを噴かしている。そして開店とともに食券と黒烏龍茶を握りしめ、店内になだれ込むのだ。

おそらく行列をつくる猛者たちは、常により高い山を目指す冒険者たちと同じなのだろう。いつかはチョモランマの頂上にアイゼンを刻みつけ、自分の旗を打ち立てたいと願う冒険者たちのように、自分は今日もこの闘いに勝つことができるのか? より高い場所に立つことができるのか? と自問しながら、どんぶりと対峙する場所であり、額を流れる汗はアスリートのそれと同じなのだ。

■「豚星。」の瞬きを嗅ぎわける

さて、人間の本能を呼び起こす二郎とインスパイア系にはついては、はまれぽでこれまでも幾度も取り上げてきたが、今回は2012(平成24)年7月2日に、綺羅星のごとく現れたインスパイア系の雄、「豚星。」である。

激烈人気店のためなかなか取材するチャンスはめぐってこなかったが、編集部・山岸のコシの強い交渉の結果、6月某日の開店前に取材許可が出た。そこで特別チームが緊急召集され、いまにも降り出しそうな空模様の朝、六角橋商店街を抜け歩いていくと、突然「あ、すぐ近くにあるよ」と教えてくれたのは、ほかでもない自分の鼻だった。

東急東横線・白楽駅から徒歩約10分。それらしい看板がないので視覚より先に嗅覚で発見。

そしてドア横に置かれた自販機の黒烏龍茶レーンももはや看板代わりである。

なるほどここが豚星。か、とドアに近づくと、ガラスに3枚の紙が貼られていた。

「食券を買ってからお並び下さい」、行列の並び方、そして「豚星。」の3枚。

紛れもなくここが「豚星。」であることを確認したわれわれは、胃袋を武者震いさせ、高鳴る胸を抑えながら、仕込み中の店内にお邪魔した。もちろんメンバー各自、黒烏龍茶を握りしめてである。

■いざ、出陣。大迫力の仕込みに驚き!

どうも、はまれぽです。おはようございま…

おおおおおおおお。目の前に広がるスープ、キャベツ、焼き豚などの仕込みの光景に圧倒され、挨拶の途中で喚声と歓声の混声に変わってしまった。さすが仕込みからすでに大迫力である。

■「豚星。」について

改めて挨拶をして、店内で繰り広げられる仕込みに慣れてきたところで、店長の大塚さんに話をうかがった。

「豚星。」は、2012(平成24)年7月2日に開店した。まもなく開店2周年である。もともとラーメンオタクだったという大塚さんは19歳からラーメン修業を開始。その後、現在への布石となる某ラーメン店を経て独立し、物件の条件がよかった現在地に「豚星。」を開店した。

現在26歳、趣味は「モンスターハンター」とラーメンツアーという大塚さんは、ツアー中は1日8杯食べることもあるという。作り手もまた猛者であった。

瞬く間に二郎ファン納得の人気店になった「豚星。」では、1日に豚肉100kg、キャベツ3ケース、モヤシは4kg×28袋が使われる。毎朝、11時の開店に向けて午前3時から仕込みが始まり、豚肉とネギなど野菜を煮込んだスープは、一度火を落としたあとで鶏挽肉を入れ、非乳化に仕上げている。

ちなみに「豚星」という名前は、同じ六角橋にある「くり山」の店長につけてもらったという。ただ、「豚星」のあとについている「。」は、総画21画にしたかった大塚さんが足したとのこと。21画にしたかった理由は企業秘密である。

「豚星。」に看板がない理由について大塚さんに聞いてみると「看板は見せるものじゃなくて、やりながら作ってくものだと思っている。ラーメンが看板になればそれでいい」という、とても痺れる言葉を聞くことができた。

■いざ、実食!まずは小ラーメンから

さて、そうこうしている間に麺は茹であがり、シャキッとした野菜が盛りつけられ、まずは小ラーメン(650円)が完成。

神々しいどんぶりを前に大学時代、テストが終わった、仮免に合格した、など、生活の句読点がわりに三田本店や目黒店にならんでいた日々を思い出しながら箸をのばした。

編集部・山岸に、この小ラーメンはあくまでもデフォルト紹介であって、メインは冷やし中華であることを思い出させられハッとしたが、一度動きだした箸は慣性の法則のように止まらず、つい食べ続けてしまうのだった。

■今回のメインメニュー、冷やし中華のお味は?

一方そのころ厨房では、茹であがった麺が氷水で冷やされ、メインメニューは最終段階に差し掛かっていた。そこからの完成に向かうダイナミックなシーンは目を見張るものがあったが、撮影不可なのでいきなり濃厚かつ抜群のボリュームながら涼しげな冷やし中華(750円)が完成である。

どんぶりの上を彩るのは、定番の豚、キャベツ、モヤシのほかに海苔、ウズラの卵(2個)、プチトマト、鰹節、その上からレンゲ1杯の特製のマヨネーズダレかかけられている。添えられたニンニクは大塚さんの粋な計らいである。

すべてを混ぜ合わせて、思いきりすすってみた。するとどうだろう、口のなかで、ひんやりもちもちした麺とシャキシャキした野菜、パリッとした海苔、鰹節の食感と香りと、それらすべてを包み込む酸味の効いたタレが、夏の浜辺の青春群像劇を映し出したのである。

そしてそのドラマの主題歌として頭のなかで流れたのは、『いとしのエリー』でも『真夏の果実』でもなく、『いなせなロコモーション』であった。

プチトマトとウズラの卵は食感に変化を与えてくれるので、ボリュームたっぷりのドラマが進みゆくなかでいいアクセントにもなる、とても美味しい夏メニューだ。ちなみに6月末に登場するこの冷やし中華が食べられるのは、9月中、夏の終わりまでである。

■真っ赤なだけはある、辛麺のお味は?

そのころ厨房では、もうひとつのメインメニューが着々と完成に近づいていた。

店に入って最初に目に飛び込んできた真っ赤な鍋からタレの中へ大さじ4杯。それをササッと掻き混ぜ、三たび茹であがった麺と野菜が職人の手つきで見事に盛りつけられると、辛麺(しんめん/750円)の完成である。

「できたようだね」。それまで目を閉じ、黒烏龍茶で喉を潤しながら静かに出番を待っていた編集長・吉田の鼻が、辛麺の完成を嗅ぎ逃すわけはなかった。

では、いただこう、と鳳凰の構えでどんぶりと対峙するとスープをひと口。

「だ、大丈夫だよ」編集長・吉田は少し潤んだ目で感想を述べた。

あらゆる具材に絡みつく赤い彗星たち。本当に大丈夫だろうか。無理してないといいけど、と思いながら冷やし中華は終盤に入る。

終盤に入ったせいで遠い目をしている横で、編集長・吉田の唇は赤く光る。食べ進むほどにスープも麺も赤みが増していく感がある。

どんどん赤くなっていく辛麺としだいに汗ばみはじめる編集長・吉田の顔を見ていると、やっぱり大丈夫じゃないんじゃないだろうか、と思いかけていたが、スープと麺を少し分けてもらってみると、それは杞憂であった。

一味、ラー油、胡麻、山椒ほか数種類の材料でできた真っ赤なスープは、口に入れた瞬間、凄まじい辛さが旧正月の爆竹のように駈けまわるが、辛さの滞在時間は長くない。一瞬ではかなく消えていき、むしろ次をまた見たくなる打ち上げ花火のような辛さというべきか。

辛さが引いていったあとにはじんわりと旨味がひろがる辛麺は、ボリューム以外の闘いも求める勇者にはぴったりのメニューと言えるだろう。

■限定メニュー「禁断の果実」、その禁断のお味は?

編集長・吉田と手分けしながら、怒濤の3杯との長い闘いもようやく終わりが見えてきたかに見えたそのときだった。

「はい、あとこれもね」という声とともにカウンターに置かれた新たなるどんぶり。

何ということだ、1日約50食の大人気限定メニュー「禁断の果実(750円)」の登場である。ボスの後にラスボス現るというのは、こういった流れにおいては充分考えられることではあったが、ここにきてもう1杯という展開があるとは思いもよらなかった。

仕込みの最中、カネシ醤油に柚子など5種類の柑橘類ほかいろいろな材料を入れポン酢風に仕上げたタレでつくる、その名の通り「禁断の果実」の話を聞いて、何て美味しそうなんだろうと話し合ってはいたものの、さすがに2人で4杯じゃ胃袋が爆発しちゃいそうですね、と断念したはずの「禁断の果実」がまさに禁断のタイミングで現れたのだった。

限定なのは、風味と酸味が飛ばないよう2台の炊飯器で仕込んでいるためである。

すでに胃袋は容量ギリギリだったが、禁断の果実の甘い誘惑に、気づくとレンゲはスープをすくっていた。

デフォルトのスープと比べると透明感があり、さらっとした感じだが果たして。

ああ、ここにきてこのスープは最高だ、と思わず歎息(たんそく)が洩れるほどのやさしい味わいが口に広がり、そして甘酸っぱい匂いが鼻を抜けていく。もちろんやさしいながらも濃厚さは健在で、麺、豚、野菜が空腹をあり余るほど満たしてくれること請け合いである。

ただしやはり編集長・吉田と力を合わせてとはいえ、すでに小ラーメンと冷やし中華、辛麺を食べている胃袋は、目の前の美味しそうな「禁断の果実」を前に、あきらかに箸の動きを遅くしはじめていた。

そのときである。「禁断の果実」のどんぶりが自動的に移動しはじめたのだ。ゆっくりと動くどんぶりを目で追っていくと、鼻歌まじりに伸びてきた箸の持ち主は秘密兵器、編集部・山岸であった。

ひょいと麺をつまむと、軽やかに口へ運んだ。「ああ、これ美味しい」そう声をあげると、次から次へと麺が口のなかで吸い込まれていく。ついにわれわれは『スパルタンX』よろしく、3人で闘う仲間となった。主人公はもちろんラスボスと闘うジャッキー山岸である。

「ほう、ならばサモ・ハンの意地を見よ」と出演兼編集長の闘いも終盤に入る。ジャッキーの登場で「禁断の果実」は順調に減りはじめた。編集長・吉田はついに最後の豚を頬張った。頬張るとウイニングランとして、「禁断の果実」の味見を要求した。

しかし、大量のカプサイシンでも燃焼しきれないほどの小麦粉を抱えた男は、ひと口食べるとおもむろに箸を止め、張りのある球面を誇らしげに見せつけた。

「僕はドッジボールが1個入ってる感じです」「ふむ、まあまあだな」

その横で「この豚、リンゴみたい」とはしゃぐジャッキー山岸。

ちなみにスープを口に含んだとき、天使のような微笑みを浮かべた少女が脳裡をよぎったような気がしたが、実はそれはあながち間違いではなかった。

「禁断の果実」の別名は「さのちゃんラーメン」という。大塚さんによると「さのちゃん」はかつて「豚星。」に来店した神奈川大学の学生で、「超かわいいからまた会いたい」というさのちゃんへのオマージュとして生み出されたのが、果物をふんだんに使った「禁断の果実」だったのだ。

「豚星。」にやってくるのはノーガーリックノーライフな猛者たちだが、さのちゃんオマージュである「禁断の果実」はニンニクを入れないメニューとして考案したので、ノーガーリックでも食べてみてほしいそうだ。

そして童顔でショートカットのさのちゃん、至急「豚星。」へ向かってください。

■「だって美味しいもの作れるんだったら作ったほうがいいでしょ」

最後に少し気になっていたことをきいてみた。というのも、ラーメン二郎やインスパイア系は、トッピングの種類や汁なし、つけ麺の有無など店によって多少違いはあるものの、ラーメンの大小、豚の量3段階というシンプルなラインアップが基本である。

もちろん豚星。も基本的にはそうである。しかし「豚星。」は、上記メニューに加え辛麺、禁断の果実またの名を「さのちゃんラーメン」、さらに6月までの「塩」「味噌」、夏期限定の「冷やし中華」、あまりの人気に作り続けることができず、もはやTwitterをフォローしてないとなかなか巡り会えない突発的限定メニューとなった「台湾混蕎麦」などさまざまな限定ラーメンが提供され、それぞれ進化し続け、日々新しいラーメンが生まれてもいる。

なぜこんなにたくさんの種類を出しているのか。

「だって美味しいもの作れるんだったら作ったほうがいいでしょ」大塚さんは即答した。愚問であった。

食事を終えて

数奇な星の巡り合わせで緊急召集され、思いがけず「豚星。」に来店することになり、さらに思いがけずユン・ピョウのポジションを任され、「小ラーメン」「冷やし中華」「辛麺」「禁断の果実」と4種類の山の頂きを目指すこととなった。
 
非常に厳しい闘いを終えたいまは「麺類はもう一生、フォーでいい」という気分である。ただし、これが一過性のものであることもまた知っている。

しばらくたったある日、街を歩いていてふと鼻をくすぐるスープと小麦粉の匂いが、また山登りの時期が来たことを知らせてくれるからである。ただ、どうあがいても擂り鉢で完食できる勇者になる日が来ることはないだろう。

―終わり―
 
豚星。
住所/横浜市神奈川区六角橋2-10-1
電話/非公開
営業時間/11:00〜24:00
定休日/日曜