夜の祭りに明りが灯り始め、怪しい客寄せの口上に引き寄せられ小屋の中に入ると、そこはまるで迷宮世界。へび女・人間ポンプ・タコ娘・ロクロ首...摩訶不思議な彼らのパフォーマンスに時がたつのも忘れ、夢と現実の狭間をしばし漂い続ける...

このような不思議な情景、実際に見たことは無くても、TVや映画の一場面で記憶に残っている方も多いのでは?これら珍品・奇獣・曲芸をなどの出し物をおこ なう小屋を「見世物小屋」といい、神社のお祭や縁日などで小屋を立てては巡業し、かつては大衆娯楽として幅広く受け入れられていた。しかし、テレビの普及 にともない一気に衰退し、2010年以降は大寅興行社1軒のみとなっている。



いずれ消えるかもしれない苛酷な運命に翻弄されながらも、日本各地を巡業する大寅興行社。本作は、お化け屋敷のアルバイトがきっかけで大寅興行社と出会った監督が、「記録に残さなければ、消えてしまう」という思いから、彼らと旅をしながら「見世物小屋」の表も裏も映しだした密着ドキュメンタリー作品だ。

では、なぜ大寅興行社が見世物小屋の興行を続けてこられたのだろうか?監督は語る。「大寅興行社では親方の家族と大寅興行社太夫の家族、犬や猿や大蛇などの動物が一緒になって暮らしています。商売の時だけではなく日常生活も一緒です。大寅興行社の一座のような「みせものやさん」という生業が作り出す家族形 態は、いまは失われつつあるものだと感じています。」

かつて見世物小屋一座の人たちは、小屋を飾り立てる絵看板・動物・舞台に上がる太夫のことも等しく「荷物」と呼び、一座の長である親方が「荷物」の全責任 を負っていたという。大寅興行社は、現在でもそういう生き方や商売のしかたを頑なに守っている昔堅気の一座だ。そして、それは信頼できる親方がいるからこそ成り立つコミュニティなのだ。親方を中心に結ばれる固い絆、それこそが今でもなお「見世物小屋」を現存できる理由なのではないだろうか。





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「ニッポンの、みせものやさん」
ストーリー:珍品・奇獣・曲芸を中心とした出し物を行う小屋「見世物小屋」の密着ドキュメンタリー。公演のため日本を縦断する大寅興行社と共に旅する中で、一座の暮らしと人情、そして10年にわたる交 流から一瞬の人生の輝きをみつめる。
監督: 奥谷洋一郎
キャスト: 大寅興行社のみなさん
上映時間: 90分
2012年/日本

12月8日〜新宿・K's cinemaにてモーニングショー!!