私たちはこれまでに散々、LINEやデートのHow toを学んできた。

しかし、LINEやデートに漕ぎ着けるまでに、まずは“出会い”という最初の関門が待ち受けていることを忘れてはいないだろうか。

初対面であんなに盛り上がったはずなのに、LINEは既読スルー。仮に返事が来たとしても、いつまでたっても前に進まない。そんな経験、無いだろうか?

“出会い”を次のステップに繋げる方法を学ぶため、あなたに宿題を出していこう。

さて、今週の宿題は?




颯太との出会いは、職場だった。

最初は、職場恋愛なんて絶対にしないと思っていた。でも気がつけば颯太に惹かれている自分がおり、段々と無視できない存在になっていたのだ。

私は、明治大学を卒業後、丸の内にある損保会社に新卒から勤め、現在27歳になる。

我ながら顔も悪くないし、そこそこ可愛い部類には入るだろう。

埼玉の実家で高校まで大事に育てられ、大学時代はバイトに明け暮れながらも学生らしい、楽しい毎日を謳歌した。

そんな学生時代から長年付き合っていた彼氏とは去年別れたが、その時に相談に乗ってくれていたのが颯太だった。

「優子は可愛いから、すぐに新しい彼氏ができるよ。大丈夫だって!俺がその彼氏だったら、こんないい子離さないけどなぁ」

落ち込む私を飲みに連れて行ってくれ、笑顔で励ましてくれた。

人は、弱っている時に優しくされるとそれだけでコロッといきそうになる。ずっと私を褒めながら慰め、支えてくれた颯太を、好きにならないはずがなかった。

4歳年上の颯太は仕事がデキると評判で、社内にも彼のファンは多い。

そんな人気者の彼を好きになってはいけないと思っていたが、気がつけば、私は彼を目で追うようになっていたのだ。


社内恋愛の進め方。ジワジワ行くのか、攻めていくのか?


宿題1:社内の憧れの先輩とのご飯。でも彼がもう一人連れてきた理由は?


そんな淡い恋心を抱き続けていたものの、私は“彼の迷惑になるかも”と思い、何も行動できずにいた。

しかし、同僚の香奈に相談したのがキッカケで後押しをされ、思い切って自分から誘ってみることにした。

-颯太さん。相談があるんですが、今度の金曜の夜空いてますか?

緊張しながら送ったLINEに、彼はすぐに返事をくれた。

-もちろん!大丈夫?何か食べたい物&都合の良いエリアがあれば言ってね。

-何でもどこでも嬉しいです!

結局お店も颯太が手配してくれ、金曜に彼と食事へ行くことになったのだった。

しかし私は、颯太が予約してくれた『Resonance』のテーブル席へ案内され、ショックを受ける。

颯太に加え、もう一人他の男性がいたからだ。




「ほら、会社の先輩後輩なのに、二人きりでご飯もあれかなと思って…」

そう言いながら、私と颯太、そして彼の同僚である(違う部署の先輩である)陽介の三人で食事が始まる。

-せっかくのデートだと思っていたのに...

少しふてくされながら、私は前菜と綺麗な景色、そして颯太を交互に見つめる。勝手に盛り上がっていたのは、私だけだったということか。

「優子ちゃん、何飲みたい?」
「颯太さんが飲む物に合わせます」
「そっか。じゃあ適当に決めちゃうね。ところで、今日の相談って何?どうした?」

優しく微笑む颯太に小さな苛立ちを感じてはいたが、笑顔で答えた。

「別に大したことじゃないんです。久しぶりに、ゆっくりお食事したいなぁと思っただけなので♡」

三人で仕事の話をしている間も、颯太は私のことをずっと褒めてくれる。

「優子は可愛い後輩でさ。後輩ということを抜きにして、女の子として見ても、性格も良いし気立ても良いし、本当にいい子なんだよなぁ」

「そんなそんな。私なんて、全然。私より可愛い子なんてたくさんいますし、至って普通ですよ」

「たしかに、優子ちゃんって可愛いし優しいし、モテそうだよね」

陽介まで特に何の取り柄もない私を褒めてくれて、恐縮だ。

しかしこの次に颯太が発した一言に、私はハッと気がつかされることになる。

「陽介も未だ独身だよな?俺らも、優子みたいな子を奥さんにしたら幸せになると思うんだけど」

-奥さんにしたら幸せ…?

颯太の言葉の意図がわからないけれど、胸が高鳴る。しかしその一方で、颯太は陽介に私を紹介しようとしているのだろうか、と不安になった。

一人で悶々としていると、颯太は更に私を混乱に陥れた。

陽介がお手洗いに立ち、二人っきりになった時だった。颯太が、そっと私に囁いたのだ。

「ごめんね。本当は二人でご飯に行きたかったんだけど、ご時世的に二人きりで食事は、色々とうるさいからさ」


颯太のこの発言の意図は何!?彼の本心とは?


宿題2:颯太は優子のことをどう思っているか答えよ


「大丈夫です。むしろ忙しい中、お時間作って下さりありがとうございます」

そう答えながらも、胸中穏やかではいられない。

-コンプラ問題を考えて、彼は二人きりでご飯に行かなかった...ということは、本当は二人で食事に行きたかったってこと!?

一人で勝手に舞い上がる。これは、脈アリということなのだろうか。

颯太の発言の意図を組もうとしていたところで、陽介がお手洗いから戻ってきてしまった。

あれこれ考えているうちに、気づけば私たちの会話もざっくばらんな内容になっていた。

「颯太はどういう子がいいんだよ」

陽介が颯太に投げかけた質問に対し、私は冷静なフリをしながら、耳をダンボにして聞き耳をたてる。

「そうだなぁ。優しくて可愛くて気がきく子かな」

「それって、優子ちゃんじゃん」

陽介の答えに、私は一人で大きく頷く。それってまさに、私のことではないだろうか。そして颯太の次の発言に、私の心臓の鼓動のスピードは一気に上がった。

「たしかに、そうかも」

私は食べる手を止め、隣に座る颯太を思わず見つめてしまった。

-これって、良い感じと捉えて良いのでしょうか…?

この食事で私たちはもう決まりだ。そう思っていた。




しかし、そこから事態は何も進まなかった。

「この後どうしようか?」

颯太に聞かれ、もちろんこの後は二人で2軒目へ行けるものと思っていた。

「颯太さんに任せますよ♡」

「そっか...そしたら、今日は解散にする?じゃあ優子、また月曜に会社で!」

呆気ない答えと共に、颯太は笑顔で駅まで送ってくれ、私は拍子抜けしてしまった。



その日からLINEは続いているものの、何も事態は変わっていない。

そして今日も、私たちは普通に会社で顔を合わせている。

遠回しに好きと言ってもらったはずだし、向こうも気があったはずだ。それはただの勘違いだったのか?それとも、私に何か原因があったのか?

そもそも、どうして私は選ばれないのだろうか。性格だって良いし気がきく方だと思う。特S級ではないけれど、全ては平均値以上なはず。

20代後半に突入してからは婚活も始めたが、選ばれないのは実は今回が初めてではなかった。

女から見ても性格に難有りな子が早々に結婚を決める一方で、私は取り残されていく。

どうすれば良いのか分からず、私は一人携帯を見つめながら悶々としている。

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読めぬ男心。颯太の気持ちは一体?