結婚や離婚、男女の問題に詳しい弁護士・柳原桑子先生が、堅実女子の質問に答える本連載。今回の相談者は商社勤務の井上裕子さん(仮名・28歳)。

「思い切って相談します。私には先月プロポーズされた男性がいて、交際期間も2年になります。それまで、週1くらいのデートだったのですが、プロポーズを機に同棲するようになりました。

先日、彼の高校時代の友だち3人が遊びに来て、鍋パーティーをしたのですが、彼が私に対して、“コイツ、バカでさ〜”とか“もういい年だから結婚してやるんだよ”的なことを言うんです。さらにそれだけでなく、私はちょっとぽっちゃり体型なんですが“こいつはデブでよく食べるから、食費がこれから大変だよな〜”なども言われました。

それは悪意がある感じではなく、フツーの冗談っぽい感じで、みんなで笑っており、私もついへらへらしてやり過ごしてしまったのですが、後から心と体に効いてきました。彼には悪意が無いようなのですが、これって言葉の暴力ですよね。

同棲を開始するにあたって、彼の実家にあいさつに言ったときも、私に対して貶めるような発言をしました。

先日の友だちとの鍋パーティーでの発言が心に引っかかり、別れることも考えています。彼は私のことを結婚相手として好印象を抱いていることがわかっているのですが、こういう暴言が増えるにつれて、ちょっと自信がなくなっているのも事実です。

これら、彼の発言の録音があれば、慰謝料などをもらえるのでしょうか。

あと、こういう男性と別れたほうがいいかどうか、私が決めなくてはいけないと分かっているのですが、私は彼と幸せになれるのでしょうか。たくさんの夫婦を見てきた桑子先生の意見が聞きたいです」

柳原桑子先生の回答は……!?

婚約により、あなたがより身近な存在になったことを境に、婚約者の彼が、あなたが嫌に思うような発言を第三者に話し始めた。それに対し、あなたは不愉快であるということが、このたび認識できたのですから、まずは婚約者の彼に、嫌な気持ちになったことを告げてみたらいかがでしょうか。

その気持ちを伝えずに婚姻しても、特に彼が直そうとしなければ、毎日の生活で、第三者に対し、またはあなたに対しても精神的に嫌になる発言を繰り返すようになるかもしれません。

そうなったら、それこそ言葉の暴力で、慰謝料は最終的なものとしても、離婚だ慰謝料だというその前に本当にあなたの精神が辛くなるはず。

言葉の暴力は、立証が難しかったり、受け止める側の問題等としてなかなか理解されにくかったりしますが、実際の影響力は大きくて、精神的DVに発展する場合もあります。後で、慰謝料が取れたとしても、傷ついた心の回復は容易ではありません。

今、あなたは慎重に検討し、行動すべきときと思います。

彼の実家にあいさつに行き、ケーキを出されて食べた後、「太る人は太るものが好きだよね。おデブにならないように気を付けて」と彼から言われたことが、心にひっかかっているとか……。



■賢人のまとめ
言葉のDVは立証が難しく、回復に時間がかかるケースも多いので、結婚は自分の幸せを考えて慎重に決断をしたほうがいいかもしれません。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/